また、光子みつこさんは「笑顔えがおで無事ぶじにゴールしてほしいと思おもっていた。大勢たいせいの観客かんきゃくの前まえで滑すべらせてもらって私わたしもうれしい」と笑顔えがおで話はなしていました。

列れつの先頭せんとうに並ならんでいた愛知あいち県けんの60代だいの男性だんせいは「午前ごぜん0時じに家いえを出でて、4時じから並ならんでいました。最後さいごのレース、頑張がんばってほしい」と話はなしていました。

小平こだいら選手せんしゅが卒業そつぎょうした茅野ちの市しの小学校しょうがっこうに通かよい、地元じもとのスケートクラブに所属しょぞくする小学しょうがく5年生ねんせいの女の子おんなのこは、小平こだいら選手せんしゅからプレゼントされたジャージを着きて応援おうえんにかけつけ「滑すべっているときはかっこいいが、リンクから上あがったときの笑顔えがおがかわいいです。全部ぜんぶ一生いっしょう懸命けんめいなところが好すきです。ベストタイムとかは気きにせず、最後さいごまで頑張がんばってほしい」と最後さいごのレースを楽たのしみにしていました。

また、長野ながの県けんの60代だいの男性だんせいは「ラストランをこの目めに焼き付やきつけるために来きました。少すこしさみしい気持きもちもある」とさみしげな表情ひょうじょうで話はなしていました。

日本にっぽんスケート連盟れんめいによりますと、22日にちの前売まえうりのチケットは完売かんばいしていて、エムウェーブで行おこなわれたスピードスケートの大会たいかいでは、1998年ねんの長野ながのオリンピック以来いらいの満席まんせきになる見込みこみだということです。

そのうえで、「生活せいかつの全すべてをスケートに費ついやしてきたと思おもう。アスリートという枠わくを超こえて、人間にんげんとしてのすごみ、やると決きめたときの覚悟かくご、決意けついがすばらしい」とこれまでの競技きょうぎ生活せいかつを評価ひょうかしていました。

そして、「大学だいがくに来きてくれてありがとうのひと言ひとことです」と感謝かんしゃの思おもいを語かたりました。

1998年ねんの長野ながのオリンピックが行おこなわれた会場かいじょうで、満員まんいんの観客かんきゃくから声援せいえんを受うけてレースを滑すべることは小平こだいら選手せんしゅにとって夢ゆめに見みた瞬間しゅんかんでした。

小平こだいら選手せんしゅがスピードスケートで世界せかいを目指めざすきっかけになったのが、地元じもと・長野ながの県けんのエムウェーブで開ひらかれた1998年ねんのオリンピックでした。

当時とうじ、小学しょうがく5年生ねんせいだった小平こだいら選手せんしゅは会場かいじょうで見みることはできなかったものの、録画ろくがしたビデオを繰り返くりかえし再生さいせいして男子だんし500メートルで清水しみず宏保ひろやすさんが金メダルきんめだるを手てにする姿すがたなどを目めに焼き付やきつけました。

「いつか自分じぶんもあの景色けしきを見みてみたい」とここからスケートにのめり込のめりこんでいきました。

実じつは、小平こだいら選手せんしゅが夢ゆめに見みていた“景色けしき”は2つありました。

1つは、オリンピックで金メダルきんめだるを獲得かくとくしその時ときに見みる会場かいじょうの景色けしきです。これは2018年ねんのピョンチャン大会たいかいで金メダルきんめだるを獲得かくとくしたことで達成たっせいしました。

そして、もう1つが、満員まんいんのエムウェーブでレースをするという景色けしきです。小平こだいら選手せんしゅのエムウェーブへの思い入おもいいれは人ひと一いち倍ばいで、世界せかいトップレベルの選手せんしゅになっても、長年ながねん練習れんしゅうの拠点きょてんにしていました。

お気に入おきにいりの場所ばしょは、天井てんじょう。長野ながのオリンピックのとき、男子だんし500メートルのレース前まえに清水しみず選手せんしゅが寝転ねころがって天井てんじょうを見みたというエピソードを踏ふまえ、「あのシーンはすごい印象いんしょう的てきでよく目めがいきます。これが宏保ひろやすさんが見みていた天井てんじょうかって思おもう時ときはよくありますね」と興奮こうふん気味ぎみに話はなすこともありました。

そのエムウェーブを現役げんえき最後さいごのレースの場ばとして選えらんだ小平こだいら選手せんしゅ。

関係かんけい者しゃから前売まえうり券けんが完売かんばいし長野ながのオリンピック以来いらいの満員まんいんになると聞きくと「エムウェーブで満員まんいんのお客おきゃくさんをリンクから見みることが、どういう状況じょうきょうなのかを体験たいけんしてみないとわからない。イメージどおりなのか、違ちがった景色けしきを見みられるのか楽たのしみ」と語かたっていました。

ついに22日にち、その時ときを迎むかえ予想よそう通どおりの満員まんいんの観客かんきゃく席せきを見みた小平こだいら選手せんしゅは、レース前まえの練習れんしゅうでは表情ひょうじょうに変化へんかはありませんでしたが、レース後ごには「一瞬いっしゅんでも皆みなさんの顔かおを見みれば涙なみだがこぼれそうだった」と話はなすほど、感情かんじょうは高たかまっていました。

そして、午後ごご0時半じはんすぎ、すべての力ちからを出し切だしきって滑すべり終おえたあと、満員まんいんの観客かんきゃくからの拍手はくしゅと声援せいえんに包つつまれたエムウェーブのリンクを1周しゅうしました。

「長野ながのオリンピックを見みた画面がめん越ごしでは伝つたわってこなかった人ひとのぬくもりを感じ取かんじとれました。人生じんせいで初はじめて鳥肌とりはだが立たったのが、長野ながのオリンピックでしたが、鳥肌とりはだを越こえて心こころが飛び出とびでてきそうな感かんじでした。本当ほんとうに夢見ゆめみていた空間くうかんの中なかで滑すべることができたのはオリンピックでメダルをとったときよりも、世界せかい記録きろくに挑戦ちょうせんしたときよりも価値かちのあるものだと感かんじました。どのシーンにも置き換おきかえることのできない幸しあわせな時間じかんでした」

思い描おもいえがいた景色けしきをしっかりと競技きょうぎ人生じんせいの最後さいごに見届みとどけた小平こだいら選手せんしゅは静しずかにリンクをあとにしました。