旧ユーゴスラビアの
ボスニア・ヘルツェゴビナで、
1990年代に
起きた
民族紛争で、
大量虐殺などの
罪に
問われた
当時の
セルビア人武装勢力の
司令官のムラディッチ
被告に対し、
国連の
戦争犯罪法廷は
22日、
最も
重い
刑にあたる
終身刑を
言い渡しました。
終身刑を
言い渡されたのは、
旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナで1990年代、セルビア
人武装勢力の
司令官を
務めていた
ラトコ・ムラディッチ被告(
75)です。
ムラディッチ被告は1995年、ボスニア東部の町、スレブレニツァで、イスラム系の住民など7000人以上が殺害された虐殺を引き起こしたなどとして、大量虐殺や、人道に対する罪などに問われていて、22日、オランダのハーグにある国連の戦争犯罪法廷で判決が言い渡されました。
この中で、オランダのオリエ裁判長は「被告には、イスラム系の住民を根絶やしにするという意図があった。人類が知る中でも、最も凶悪な犯罪を犯した」として、起訴内容をほぼ認め、最も重い刑にあたる終身刑を言い渡しました。
ムラディッチ被告は、一貫して無罪を主張し、裁判長が判決理由を読み上げる際に「すべてうそだ」などと叫び出したため、退廷を命じられ、被告不在のまま判決が言い渡されました。ムラディッチ被告は判決を不服として控訴する方針です。
スレブレニツァの虐殺は、第2次世界大戦後のヨーロッパで最悪の大量虐殺とされ、国連のゼイド・フセイン人権高等弁務官は「ムラディッチは悪の典型だ。世界でいま、凶悪な国際犯罪を犯している人間は、この判決を恐れるべきだ」と述べて、判決を評価しました。
旧ユーゴスラビアの民族紛争で起きた虐殺などを専門に裁くため、国連が1993年に設けた戦争犯罪法廷は、今回の判決と、今月29日に予定されている6人の被告に対する控訴審の判決を最後に、その役目を終えることになります。
国連の戦争犯罪裁判所がセルビア人武装勢力の司令官だったムラディッチ被告に終身刑を言い渡したことを受けて当時、空爆などを行ったNATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は22日、声明を出し、「ムラディッチ被告は数千人を殺害するなど、市民に対する恐るべき犯罪の責任を負っている」として改めて非難しました。
そのうえで、「判決を機にこの地域がさらに平和と和解への道を歩むことを望んでいる」としてボスニア・ヘルツェゴビナやセルビアなどを含む西バルカン地域が安定化することに期待を示しました。また、EU=ヨーロッパ連合は、判決の内容に対する評価を避けながらも「ボスニア・ヘルツェゴビナで起きたことは西バルカンとヨーロッパにとって悲劇で、恐ろしい犯罪を公正に裁くことは人類の義務だ」とする声明を出しました。
EUは西バルカン諸国と加盟交渉を続けるとともに、地域の安定に向けた支援を行っていて、声明の中で「各国が和解や良好な隣国関係に向けて協力していくものと確信している」として今回の判決を1つの節目に将来のEU加盟を見据えた地域間協力を進めるよう各国に促しました。