香港ほんこんの「国家こっか安全あんぜん条例じょうれい」は、2020年ねんに施行しこうされた「香港ほんこん国家こっか安全あんぜん維持いじ法ほう」を補完ほかんするもので、

▽「国家こっか機密きみつ」を盗ぬすむことやスパイ行為こうい

▽反乱はんらんの扇動せんどう

▽外国がいこく勢力せいりょくによる干渉かんしょう

などを犯罪はんざいとして規定きていし、違反いはんすれば最高さいこうで終身しゅうしん刑けいを科かすとしています。

親中しんちゅう派はが議席ぎせきをほぼ独占どくせんする香港ほんこんの議会ぎかい、立法りっぽう会かいは、異例いれいのスピードで審議しんぎを行おこない、3月つき19日にちに条例じょうれい案あんを全会ぜんかい一致いっちで可決かけつしました。

条例じょうれいは、23日にちに施行しこうされます。

この条例じょうれいでは、「国家こっか機密きみつ」を不法ふほうに取得しゅとくしたり開示かいじしたりすると懲役ちょうえき5年ねんから10年ねんを科かし、外国がいこくでの行為こういも取締とりしまりの対象たいしょうとしています。

「国家こっか機密きみつ」には、「中国ちゅうごくや香港ほんこんの経済けいざい・社会しゃかい、科学かがく技術ぎじゅつの発展はってんに関にかんする情報じょうほう」も含ふくまれると規定きていするなど範囲はんいが広ひろいうえ、具体ぐたい的てきに何なにを「国家こっか機密きみつ」とするかは当局とうきょくの判断はんだんに委ゆだねられ、ビジネスで知しり得えた情報じょうほうなども国家こっか機密きみつにあたると判断はんだんされるのではないかと懸念けねんする声こえが出でています。

「反はんスパイ法ほう」が施行しこうされている中国ちゅうごく本土ほんどでは、日本人にっぽんじんがスパイ行為こういに関かかわったなどとして当局とうきょくに拘束こうそくされるケースが相次あいついでいますが、「一いち国こく二に制度せいど」のもと、中国ちゅうごく本土ほんどとは異ことなる法律ほうりつが適用てきようされる香港ほんこんで、どのような運用うんようが行おこなわれるのか注目ちゅうもくされています。

香港ほんこん市民しみんは

「国家こっか安全あんぜん条例じょうれい」が施行しこうされることについて22日にち、香港ほんこんの市民しみんからはさまざまな声こえが聞きかれました。

60代だいの男性だんせいは「この条例じょうれいはもっと早はやく制定せいていされるべきだった。厳きびしい内容ないようと思おもうかもしれないが、あとからみれば国家こっかの安全あんぜんは重要じゅうようだとわかるでしょう」と話はなしていました。

また、この条例じょうれいについて尋たずねたところ、20代だいの男性だんせいは「誰だれも何なにも言いいたくなくなるでしょう」と答こたえていたほか、「話はなせない」などと発言はつげんを控ひかえる人ひとたちの姿すがたも目立めだちました。

専門せんもん家か「香港ほんこんの独自どくじ性せいがますます失うしなわれる」

中国ちゅうごくの社会しゃかい問題もんだいに詳くわしい東京とうきょう大学だいがく大学院だいがくいんの阿古あこ智子さとこ教授きょうじゅは「具体ぐたい的てきに、何なにをすれば国家こっかの安全あんぜんを脅おびやかすことになるのか、非常ひじょうにあいまいだ。条例じょうれいの施行しこうによって、慎重しんちょうに行動こうどうしたり、発言はつげんを控ひかえたりすることが当たり前あたりまえになってしまう」と述のべ、香港ほんこんで言論げんろんや行動こうどうの自由じゆうを制限せいげんする動うごきが広ひろがることへの懸念けねんを示しめしました。

そして、香港ほんこんで条例じょうれいに対にたいする表立おもてだった抗議こうぎがみられないことについて「市民しみんは本音ほんねではもう許ゆるせない、もう我慢がまんできない、大声おおごえで抗議こうぎしたいということだと思おもうが、それをやってしまうと、どこで何なにをされるか分わからない。本当ほんとうに苦くるしい状況じょうきょうだと思おもう」と指摘してきしました。

さらに阿古あこ教授きょうじゅは、条例じょうれいは日本にっぽんのビジネス界かいなどにも大おおきなリスクになると指摘してきしたうえで、「外国がいこく企業きぎょうの投資とうしがどんどん香港ほんこんから逃にげていってしまい、香港ほんこんの独自どくじ性せいがますます失うしなわれ、中国ちゅうごくの一部いちぶになってしまう」と警鐘けいしょうを鳴ならしました。

そして、中国ちゅうごく経済けいざいが低迷ていめいする中なか、条例じょうれいの施行しこうは中国ちゅうごくに対にたいする海外かいがいの見方みかたにも影響えいきょうするとして、「中国ちゅうごくは自国じこくの経済けいざいを回復かいふくさせたいのに、自分じぶんから問題もんだいのある方向ほうこうに突き進つきすすんでいるような感かんじがする」と批判ひはんしました。