ヨーロッパではここ数すう年ねん、農薬のうやくの使用しようや家畜かちくの飼育しいくなどをめぐるEUの規制きせいへの対応たいおうや、ロシアの軍事ぐんじ侵攻しんこうによる燃料ねんりょう費ひの高騰こうとうなどで農家のうかの負担ふたんが増ふえているほか、EUがおととしからウクライナ産さんの農産物のうさんぶつについて関税かんぜいを停止ていしする措置そちに踏み切ふみきったことで、比較的ひかくてき安価あんかな農産物のうさんぶつがヨーロッパの市場しじょうに流入りゅうにゅうしていると指摘してきされています。

こうした中なか、フランスでは政府せいふが環境かんきょう対策たいさくとして農業のうぎょう用ようディーゼル燃料ねんりょうに対にたいする減税げんぜい措置そちの打ち切うちきりを発表はっぴょうしたのをきっかけに、ことし1月つきから抗議こうぎの動うごきが広ひろがり、首都しゅとパリに向むかう高速こうそく道路どうろなどが一時いちじ、封鎖ふうさされました。

抗議こうぎ活動かつどうはドイツやスペインなどヨーロッパ各地かくちで相次あいつぎ、ベルギーの首都しゅとブリュッセルでも先月せんげつ、EU本部ほんぶ周辺しゅうへんで大だい規模きぼなデモが行おこなわれたほか、今月こんげつ21日にちと22日にちに開ひらかれたEUの首脳しゅのう会議かいぎにあわせてポーランドやチェコの農家のうかが各地かくちの高速こうそく道路どうろなどを封鎖ふうさする抗議こうぎ活動かつどうに踏み切ふみきりました。

対応たいおうに追おわれるEUは、ウクライナからの輸入ゆにゅうが特とくに増ふえている砂糖さとうや卵たまご、鶏肉けいにくについて、輸入ゆにゅうが一定いっていの量りょうを超こえれば関税かんぜいを再ふたたび課かすなど農家のうかの懸念けねんに配慮はいりょした措置そちを導入どうにゅうする方針ほうしんです。

ただ、ヨーロッパの農家のうかなどで作つくる主要しゅような農業のうぎょう団体だんたいは20日にち、「小麦こむぎなどが含ふくまれておらず、農家のうかの懸念けねんに応こたえていない」とする共同きょうどう声明せいめいを出だし、あくまで抗議こうぎを継続けいぞくする構かまえを示しめしています。

専門せんもん家かからは、EUにとって重要じゅうような産業さんぎょうである農業のうぎょうでの反発はんぱつは今後こんごのウクライナ支援しえんにも影響えいきょうしかねないという指摘してきが上あがっていて、ことし6月つきに行おこなわれるEUの議会ぎかい、ヨーロッパ議会ぎかいの選挙せんきょでも焦点しょうてんの1つになるとみられます。

フランスの養鶏ようけい農家のうか “私わたしたちは非常ひじょうに高たかい代償だいしょう 払はらっている”

フランス北部ほくぶで養鶏ようけいを営いとなむオリビエ・セネシャルさんは、1万まん2000羽わの鶏にわとりを育そだて、毎日まいにちおよそ1万まん個この卵たまごをパリなどに出荷しゅっかしていますが、この2年ねんほど苦くるしい経営けいえいが続つづいています。

養鶏ようけい場じょうでは、EUの規制きせいの強化きょうかに伴ともない、3年ねん前まえ、およそ5万まんユーロ、日本にっぽん円えんで800万まん円えん余あまりかけ、自動じどうで温度おんどなどを調整ちょうせいできる空調くうちょう設備せつびを導入どうにゅうしました。

養鶏ようけい場じょうの使用しよう電力でんりょくが増ふえる一方いっぽうで、ロシアによるウクライナへの軍事ぐんじ侵攻しんこうが始はじまり、電気でんき代だいは、5割わりほど上昇じょうしょうしたということです。

さらに軍事ぐんじ侵攻しんこうが招まねいた世界せかい的てきな穀物こくもつ価格かかくの高騰こうとうを受うけ、鶏にわとりの餌えさ代だいも3割わりほど値上ねあがりしたことや、卵たまごの輸送ゆそう費ひも高たかくなった結果けっか、セネシャルさんの収入しゅうにゅうは半減はんげんしたとしています。

収入しゅうにゅうが減へり、人ひとを雇やとう余裕よゆうもないため、1年ねん中休なかやすみなく働はたらいていて、今後こんごの生活せいかつに大おおきな不安ふあんを抱かかえています。

セネシャルさんはEUがウクライナの卵たまごの関税かんぜいを停止ていしして輸入ゆにゅうしていることについてみずからの商品しょうひんが不利ふりになり、不公平ふこうへいな措置そちだと感かんじています。

セネシャルさんは「ウクライナへの支援しえん自体じたいに反対はんたいしているわけではありませんが、私わたしたちは非常ひじょうに高たかい代償だいしょうを払はらっており、私わたしたちの農場のうじょうや農業のうぎょうの構造こうぞうが危険きけんにさらされています」と話はなし、EU内ないの農家のうかを守まもるよう求もとめていました。

また「私わたしには息子むすこがおり、家業かぎょうを継つぎたいといえばうれしいことですが、いまは自分じぶんの子こどもに継つぐことを勧すすめない農家のうかも増ふえています」と話はなし、農業のうぎょうの先行さきゆきを懸念けねんしていました。

専門せんもん家か “ウクライナ農産物のうさんぶつ EU農業のうぎょう市場しじょうへの影響えいきょう 少すくなくない”

農業のうぎょうをめぐる国際こくさい政治せいじに詳くわしいフランス国際こくさい関係かんけい戦略せんりゃく研究所けんきゅうじょのセバスティアン・アビス研究けんきゅう員いんは「ヨーロッパの市場しじょうに輸入ゆにゅうされるウクライナの農産物のうさんぶつの量りょうは決けっして多おおくはないが、増加ぞうか傾向けいこうにある。さらにはるかに低てい価格かかくで輸入ゆにゅうされるため、より高価こうかなヨーロッパの農産物のうさんぶつと競合きょうごうすることになる」と述のべ、ウクライナの農産物のうさんぶつがヨーロッパの農業のうぎょう市場しじょうに与あたえる影響えいきょうは少すくなくないと分析ぶんせきします。

そして「ヨーロッパの農家のうかはウクライナの農産物のうさんぶつに対にたいし経済けいざい効果こうかや不ふ公正こうせいな競争きょうそうの影響えいきょうを考かんがえずにヨーロッパの市場しじょうを無む期限きげんに開放かいほうしておくのかと疑問ぎもんに持もっている。この疑問ぎもんに答こたえなければならない」と指摘してきし、比較的ひかくてき安価あんかなウクライナの農産物のうさんぶつが流入りゅうにゅうし続つづける状況じょうきょうに域内いきないの農家のうかが危機きき感かんを抱だいているという見方みかたを示しめしました。

そのうえでウクライナ支援しえんがもたらす影響えいきょうはことし6月つきに行おこなわれるヨーロッパ議会ぎかい選挙せんきょでも焦点しょうてんになるとして「いまヨーロッパでは、ウクライナへの支援しえんを無む条件じょうけんに続つづけるべきか、それとも自国じこくの利益りえきを守まもるように行おこなうべきか、多おおくの議論ぎろんが交かわされている。ヨーロッパの団結だんけつを望のぞまない議員ぎいんが議会ぎかいの多数たすうを占しめれば、ウクライナにとっても良よくない結果けっかを招まねく危険きけんがある」と述のべ、EUの重要じゅうような産業さんぎょうである農業のうぎょうなどでの不満ふまんを受け皿うけざらにウクライナ支援しえんに懐疑かいぎ的てきな政党せいとうが躍進やくしんすれば、ウクライナへの支援しえんが滞とどこおりかねないとしています。