米紙ワシントン・ポストが先週、今回の大統領選では特定候補を推薦しないと発表したことについて、同紙オーナーのジェフ・ベゾス氏は28日夜、異例の寄稿で釈明した。
推薦見送りは25日、同紙発行人のウィリアム・ルイス氏が発表していた。事情に詳しい人物がCNNに語ったところによると、論説委員らは民主党候補のハリス副大統領を推薦するとの原稿を用意していたが、ベゾス氏が取り下げさせたという。
ベゾス氏は紙上で「特定候補への推薦が形勢を変えることはない」「(激戦州)ペンシルベニアの有権者の中に、A紙の推薦に従おうなどと考える人は一人もいない」と主張。候補者を推薦することは、実は「偏向している、独立性がないという認識を生む」ばかりだと述べ、推薦見送りは「信念に基づく正しい決断」だと強調した。
同氏は「もっと早く変更していればよかった」と認めつつ、「これは計画不足で、意図的な戦略ではない」と主張した。
これに先立ち、同紙がハリス氏を推薦しないことに抗議して、数千人の読者が購読を中止した。
ウォーターゲート事件の調査報道で知られるジャーナリストのカール・バーンスタイン、ボブ・ウッドワード両氏が非難声明を出し、同紙のコラムニスト二十数人は「大変な間違い」とする公開書簡に署名した。
マーティー・バロン元編集局長は、共和党候補のトランプ前大統領が再選された場合に備えようとする「臆病」で「卑劣」な決定だと断じた。
28日には論説委員3人が辞任。今年のピュリツァー賞の社説部門で受賞した論説委員の1人、デービッド・ホフマン氏は辞任にあたりCNNとのインタビューで、米国に「専制政治が迫っている」と警告し、トランプ氏が国家に与える脅威について沈黙を続けるわけにはいかないと述べた。
見送り発表の直後に、トランプ氏はベゾス氏が率いる宇宙企業ブルーオリジンの幹部らと面会していた。ベゾス氏は寄稿の中で、この会合のことは事前に知らなかったと述べ、「何の交換条件もない。どちらの陣営や候補者にも全く相談、通知することなく、完全に内部で決めたことだ」と強調した。