日本新聞: ヘルパンギーナやRSウイルス子どもの感染急増対策どうすれば

熱ねつやせきなどかぜのような症状しょうじょうが出でる「RSウイルス感染かんせん症しょう」や、発熱はつねつや口くちの中なかに水みずぶくれができる「ヘルパンギーナ」など、主おもに子こどもで広ひろがる感染かんせん症しょうの患者かんじゃが例年れいねんより早はやく増ふえています。

専門せんもん家かは「ウイルスが一気いっきに広ひろがりやすい状況じょうきょうなので、基本きほん的てきな感染かんせん対策たいさくを徹底てっていしてほしい」と話はなしています。

●症状しょうじょうや対策たいさくは？感染かんせんしたら？どうすればよいのか、後段こうだんには、専門せんもん家かに聞きいてQ＆A形式けいしきで詳くわしく掲載けいさいしています。

RSウイルス感染かんせん症しょうやヘルパンギーナ前週ぜんしゅうより増加ぞうか

「RSウイルス感染かんせん症しょう」は主おもに子こどもが感染かんせんし、発熱はつねつやせきなどかぜに似にた症状しょうじょうの出でる病気びょうきで、生後せいご6か月かげつ未満みまんの赤あかちゃんや先天せんてん性せいの心臓しんぞうの病気びょうきがある子こどもなどは肺炎はいえんを起おこして重症じゅうしょう化かすることがあります。

国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょによりますと、全国ぜんこくおよそ3000の小児しょうに科かの医療いりょう機関きかんで、6月つき18日にちまでの1週間しゅうかんにRSウイルス感染かんせん症しょうと診断しんだんされた患者かんじゃは9093人にんで、1医療いりょう機関きかんあたりでは2.9人にんと前まえの週しゅうの2.64人にんから増加ぞうかしました。

去年きょねんの同おなじ時期じきには0.43人にんでしたが、ことしは早はやくから増ふえていて患者かんじゃ数すうが多おおかった2021年ねんとほぼ同おなじレベルになっています。

また、いわゆる夏なつかぜとして知しられ、発熱はつねつや口くちの中なかに水みずぶくれができる「ヘルパンギーナ」に感染かんせんする患者かんじゃも急増きゅうぞうしていて、6月つき18日にちまでの1週間しゅうかんで1万まん4112人にんで、1医療いりょう機関きかんあたりでは4.5人にんで前まえの週しゅうの3.00人にんから増加ぞうかしました。

「ヘルパンギーナ」はことしは5月つきに入はいってから感染かんせん者しゃが急増きゅうぞうし、この時期じきとしてはこの10年間ねんかんで最もっとも多おおくなっていて、和歌山わかやま県けんや宮崎みやざき県けん、鹿児島かごしま県けん、それに大阪おおさか府ふや東京とうきょう都となど、11の都府県とふけんでは、1医療いりょう機関きかんあたりの患者かんじゃ数すうが警報けいほうレベルの「6」を上回うわまわっています。

クリニックでは検査けんさキットや薬くすりの在庫ざいこ不足ふそく

東京とうきょう・杉並すぎなみ区くのクリニックでは6月つきに入はいってから、いずれも幼おさない子こどもがかかりやすく、発熱はつねつや鼻水はなみず、せきなどの症状しょうじょうが特徴とくちょうの「RSウイルス感染かんせん症しょう」や、夏なつかぜの一種いっしゅの「ヘルパンギーナ」と診断しんだんされる子こどもが急増きゅうぞうしていて、近隣きんりんの薬局やっきょくで一部いちぶの薬くすりの在庫ざいこが不足ふそくしている中なかで対応たいおうに苦慮くりょしています。

医院いいんの発熱はつねつ外来がいらいでは5月つきに「RSウイルス感染かんせん症しょう」と診断しんだんされた子こどもは16人にん、「ヘルパンギーナ」と診断しんだんされた子こどもは1人にんでしたが、6月つきは26日にちまでで「RSウイルス感染かんせん症しょう」が53人にん、「ヘルパンギーナ」が49人にんに増加ぞうかしています。

27日にちも、午前ごぜん中ちゅうだけでおよそ40人にんの子こどもが診察しんさつに訪おとずれ、発熱はつねつとせきの症状しょうじょうがあった1歳さいの女の子おんなのこが検査けんさの結果けっか、「RSウイルス感染かんせん症しょう」と診断しんだんされていました。

医院いいんではこのところの患者かんじゃの増加ぞうかに伴ともない、「RSウイルス感染かんせん症しょう」の検査けんさキットの在庫ざいこが不足ふそくすることが多おおくなり、先週せんしゅうは1日にちあたり100人にん程度ていどの患者かんじゃが来くるのに対にたいして8人にん分ぶんしか残のこされていなかったため、より重症じゅうしょう化かしやすいとされる新生児しんせいじや乳児にゅうじに対象たいしょうを絞しぼって検査けんさを行おこなったということです。

また近隣きんりんの薬局やっきょくで、抗生こうせい物質ぶっしつやせき止とめの薬くすりの一部いちぶが出荷しゅっか停止ていしや出荷しゅっか制限せいげんで品薄しなうすの状態じょうたいとなっているといい、本来ほんらい、処方しょほうしたい薬くすりではないものの似にたような作用さようがある薬くすりに変かえて対応たいおうしているということです。

たむら医院いいんの田村たむら剛つよし院長いんちょうは、「コロナ禍かでの感染かんせん対策たいさくの結果けっか、子こどもたちにほかの感染かんせん症しょうが広ひろがらず、ここにきて免疫めんえきのない子こどもたちの感染かんせんが相次あいついでいるとみられる。ただ、薬くすりの不足ふそくがこのまま続つづくと、薬くすりの処方しょほう日数にっすうを減へらさないと対応たいおうしきれない状態じょうたいになるので、手洗てあらいなど基本きほん的てきな感染かんせん対策たいさくを徹底てっていするとともに、症状しょうじょうが出でて小児しょうに科かの予約よやくが取とれない場合ばあいはかかりつけ医い以外いがいのクリニックを受診じゅしんすることも検討けんとうしてほしい」と話はなしていました。

RSウイルス入院にゅういん患者かんじゃも増加ぞうか

「RSウイルス感染かんせん症しょう」の患者かんじゃの増加ぞうかに伴ともなって、小児しょうに医療いりょうの中核ちゅうかくを担になう東京とうきょう都内とないの病院びょういんでは重症じゅうしょう化かして入院にゅういんする患者かんじゃも増ふえています。

東京とうきょう・世田谷せたがや区くにある国立こくりつ成育せいいく医療いりょう研究けんきゅうセンターでは、「RSウイルス感染かんせん症しょう」で入院にゅういんする子こどもが相次あいついでいて、5月つきまでは入院にゅういん患者かんじゃが10人にん未満みまんでしたが、5月つき下旬げじゅんから増ふえ始はじめ、26日にちの時点じてんでは41人にんが入院にゅういんしています。

生後せいご6か月かげつ以下いかの赤あかちゃんも15人にん入院にゅういんしており、ことしは生後せいご2か月かげつ以下いかの赤あかちゃんも9人にんと多おおくなっていて、中なかには生後せいご2週間しゅうかん余あまりの赤あかちゃんが入院にゅういんしたケースもあったということです。

病院びょういんでは水分すいぶんを取とることができず、脱水だっすいの症状しょうじょうが出でる子こどももいますが、特効薬とっこうやくがないため、酸素さんその投与とうよや点滴てんてきでの対症たいしょう療法りょうほうを行おこなっているということです。

また、ことしは「ライノウイルス」や「ヒトメタニューモウイルス」などの呼吸こきゅう器きの感染かんせん症しょうで肺炎はいえんなどを起おこして入院にゅういんする子こも例年れいねんより多おおく、「ライノウイルス」に感染かんせんし入院にゅういんしている生後せいご10か月かげつの赤あかちゃんはせきや気管支きかんし炎えんの症状しょうじょうが出でて、食事しょくじや水分すいぶんが取とれず、点滴てんてきを受うけていました。

【Q＆A】症状しょうじょうや対策たいさくは？感染かんせんしたら？専門せんもん家かに聞きく

子こどもの感染かんせん症しょうの診療しんりょうを行おこなっている国立こくりつ成育せいいく医療いりょう研究けんきゅうセンター感染かんせん症しょう科かの大だい宜むべ見み力りょく診療しんりょう部長ぶちょうに、いま感染かんせんが広ひろがっている子こどもの感染かんせん症しょうについて聞ききました。

Q．いま増ふえている「RSウイルス感染かんせん症しょう」はどのような病気びょうきですか。

A．RSウイルスはいわゆる呼吸こきゅう器きウイルスといわれるもので、かぜのような症状しょうじょうを起おこします。

一般いっぱん的てきには2歳さいぐらいまでにはほぼ全員ぜんいんが1回かいかかるといわれています。

特とくに小ちいさいお子おこさんが生うまれて初はじめてかかったときには症状しょうじょうが重おもくなり、肺炎はいえんや気管支きかんし炎えんになったり呼吸こきゅう障害しょうがいが出でて酸素さんその値ねが低ひくくなったりして、息苦いきぐるしさで水分すいぶんや食事しょくじを取とれなくなることもあります。

1歳さい未満みまん、特とくに生後せいご6か月かげつ未満みまんのお子おこさんがRSウイルスに感染かんせんすると、基礎きそ疾患しっかんがなくても、かなりの確率かくりつで具合ぐあいが悪わるくなります。

Q．どのような治療ちりょうが行おこなわれますか。

A．インフルエンザなどと違ちがって、RSウイルスに対にたいする特効薬とっこうやくは残念ざんねんながらありません。

基本きほん的てきには対症たいしょう療法りょうほう、例たとえば酸素さんその値ねが保たもてないお子おこさんには酸素さんそ投与とうよや呼吸こきゅうを助たすける治療ちりょうをします。

小ちいさいお子おこさんだと分泌ぶんぴつ物ぶつで鼻はなが詰つまって、呼吸こきゅうが苦くるしくなることもあるので、吸引きゅういんして取とってあげるなどの対応たいおうをします。

あとは呼吸こきゅうするのがつらくて水分すいぶんがとれない時ときには点滴てんてきをしたりします。

Q．最近さいきん、患者かんじゃ数すうが増ふえていると聞ききますが。

A．国立こくりつ成育せいいく医療いりょう研究けんきゅうセンターでは5月つき下旬げじゅんくらいから入院にゅういんする患者かんじゃが徐々じょじょに増ふえて、最近さいきんでは40人にん以上いじょうの日ひがあります。

RSウイルスに感染かんせんして入院にゅういんする患者かんじゃさんが40人にん以上いじょうというのは、当とう院いんでは今いままでなかったことだと思おもいます。

かなり急激きゅうげきな増加ぞうかで、病院びょういんとしては必要ひつような医療いりょうを行おこなうことが難むずかしくなるくらい切迫せっぱくしている状況じょうきょうです。

Q．なぜ感染かんせん者しゃが増ふえているのでしょうか。

A．1つは、新型しんがたコロナに伴ともなう感染かんせん対策たいさくによってコロナ以外いがいのいろいろな感染かんせん症しょうの流行りゅうこうが抑おさえられたことがあります。

その結果けっか、RSウイルスだけでなく感染かんせん症しょうに対にたいする免疫めんえきを持もたない方ほうが増ふえ、地域ちいきの中なかで割合わりあいが多おおくなったということだと思おもいます。

こうした中なかで、5月つきにコロナの感染かんせん対策たいさくが緩和かんわされたため、感染かんせん症しょうが流行りゅうこうしやすい状況じょうきょうになっています。

感染かんせん対策たいさくが緩和かんわされているので、いろいろなウイルスに感染かんせんしやすく一気いっきに地域ちいきで広ひろまりやすいことが背景はいけいとしてあると思おもいます。

Q．どんな感染かんせん対策たいさくが必要ひつようですか。

A．基本きほん的てきな感染かんせん対策たいさくをしっかりということが大切たいせつです。

小ちいさいお子おこさん、特とくに2歳さい未満みまんのお子おこさんの場合ばあいにはマスクはおすすめできないですし難むずかしいですが、マスクができる年齢ねんれいとか成人せいじんの方ほうにはしっかりマスクをしていただくことが大事だいじです。

またRSウイルスは主おもな感染かんせん経路けいろは接触せっしょく感染かんせんといわれているので、RSウイルスを含ふくんだ分泌ぶんぴつ物ぶつがドアノブやおもちゃ、テーブルなどに付ついて、それを触さわった手てで目めや鼻はなや口くちを触さわるとウイルスに感染かんせんします。手洗てあらいをしっかりしていただくことが大切たいせつです。

また、小ちいさいお子おこさんはRSウイルスに感染かんせんすると非常ひじょうに具合ぐあいが悪わるくなることが多おおいので、そうした家庭かていでは特とくに感染かんせん対策たいさくをしっかりして、家庭かてい内ないにウイルスを持ち込もちこまないことが重要じゅうようかと思おもいます。

Q．感染かんせんした場合ばあいはどう対応たいおうすればいいでしょうか。

A．呼吸こきゅうが苦くるしそうとか飲のんだり食たべたりできないなどといった状況じょうきょうになると、入院にゅういんが必要ひつようになることもありますので、病院びょういんを受診じゅしんすることを勧すすめます。

Q．「ヘルパンギーナ」も流行りゅうこうしていますが、どういう症状しょうじょうが出でるのでしょうか。

A．ヘルパンギーナは熱ねつは出でるときと出でないときがありますが、主おもな症状しょうじょうとしては口くちの中なかに水みずぶくれや粘膜ねんまくがえぐれたような潰瘍かいようができます。

非常ひじょうに痛いたく、飲のんだり食たべたりできないことが問題もんだいになります。

かぜのウイルスの一いち種しゅですが、RSウイルスと同おなじく特効薬とっこうやくはなく、自然しぜんに治なおるのを待まつことになります。

その間そのかん、水分すいぶんが取とれず脱水だっすいになったりしますので、注意ちゅういが必要ひつようかと思おもいます。

Q．治療ちりょうはどのように行おこなうのでしょうか。

A．基本きほん的てきには自然しぜんに治なおりますが、治なおるまでの間まをいかに乗り切のりきるかが大事だいじです。

口くちの中なかが痛いたいので、水分すいぶんも痛いたくて取とれないことが問題もんだいになります。

そういう場合ばあいは、例たとえばアセトアミノフェンなどの痛いたみ止とめがそれなりに効果こうかを発揮はっきします。

ある程度あるていど、症状しょうじょうが抑おさえられて水分すいぶんを取とれるようであれば、体からだがウイルスをコントロールできるまで待まって乗り切のりきることになります。

症状しょうじょうが続つづくのは数すう日にちですが、もう少もうすこし長引ながびくお子おこさんもいると思おもいます。

数すう日にちから1週間しゅうかん、そんなところだと思おもいます。

Q．自宅じたくで看病かんびょうする場合ばあい、どうすればいいですか。

A．ある程度あるていど食事しょくじがとれて意識いしきもしっかりしていて、しょっちゅう吐はくということがなければ、自宅じたくで熱冷ねつさましや痛いたみ止とめを適宜てきぎ使つかいながら様子ようすをみるということでよいと思おもいます。

お子おこさんは痛いたいと思おもうので、せめて水分すいぶんだけでも取とっていくというのが大事だいじだと思おもいます。

Q．RSウイルス感染かんせん症しょうとヘルパンギーナ以外いがいの感染かんせん症しょうについてはどうでしょうか。

A．「ヒトメタニューモウイルス」や「パラインフルエンザウイルス」それに「ライノウイルス」といった呼吸こきゅう器きのウイルスによる感染かんせん症しょうが多おおくなっています。入院にゅういんまで至いたるようなお子おこさんも多おおいです。

特とくに基礎きそ疾患しっかんがあるお子おこさんは、かぜのウイルスに感染かんせんすると、かぜのレベルで終おわらないことが多おおくあります。何なんらかの基礎きそ疾患しっかんがあるお子おこさんや生うまれて間まもない、生後せいご6か月かげつ未満みまんのお子おこさんは特とくに注意ちゅういが必要ひつようです。

Q．こうした感染かんせん症しょうはこれからも拡大かくだいが続つづくのでしょうか。

A．いつまで続つづくかは分わからないですが、たとえばRSウイルス感染かんせん症しょうは今いままでの経験けいけんから考かんがえると、まだピークを迎むかえていない可能かのう性せいが十分じゅうぶんあると思おもいます。例年れいねんだとピークを迎むかえたあとにゆるやかに入院にゅういん患者かんじゃさんが減へっていって、落ち着おちつくまでに2か月かげつぐらいかかります。

基本きほん的てきに皆みなさんでできる感染かんせん対策たいさくをしっかりやっていただくことが大事だいじです。コロナの感染かんせん対策たいさくと通つうじるところがありますが、手洗てあらい、それにマスクをできる方ほうはしっかりしてほしいです。

いまお話おはなしした感染かんせん症しょうには現状げんじょうではいま使つかえるワクチンはないですが、予防よぼう接種せっしゅのおかげで流行りゅうこうを抑おさえられている感染かんせん症しょうはたくさんあるので、特とくに定期ていきの予防よぼう接種せっしゅ等とうは接種せっしゅできる機会きかいを逃のがさずに確実かくじつに受うけることも大切たいせつかなと思おもいます。