こうした事態に識者は「政治や選挙に対する信頼感を引き下げてしまう可能性がある」と指摘し、政界からも公職選挙法が想定していない問題だとしてルールの見直しを求める声が出ています。
掲示板の枠不足 異例の対応
今回の東京都知事選挙は過去最多の56人が立候補し、都の選挙管理委員会は都内1万4000か所余りに設けた選挙ポスターの掲示板の枠が足りなくなり、クリアファイルで外側に固定してもらうといった異例の対応をとっています。
ポスターが破られる事案や警告も
こうした中、一部の掲示場では候補者とは別の人物の写真やSNSなどのアカウントに誘導する内容の同一の選挙ポスターが複数、貼られてます。
複数の同一のポスターが掲示されている背景には、寄付金に応じて、ポスター掲載を許可するという趣旨の案内が事前に出され、それに応じた人が貼ったと見られます。
東京・歌舞伎町にある掲示場も25日時点でおよそ20枚のポスターが破られていました。被害に遭ったポスターはいずれも同じもので、一部が地面に落ちているものもあり、警視庁は器物損壊などの疑いで調べています。
一方、都内の掲示板には貼られているポスターが数枚にとどまっている所も見られます。
また、今回の選挙ポスターをめぐっては警視庁が警告を行ったケースも相次いでいます。これまでに確認された全裸に近い女性の画像や風俗店の店名などを載せたポスターについて、警視庁は都の迷惑防止条例違反や風営法違反にあたる疑いがあるとして候補者や政治団体の代表に警告を行っています。
こうした状況を受け、都の選挙管理委員会にはこれまでに1000件以上の苦情や疑問の声が寄せられました。
政界からも公職選挙法が想定していない問題だとしてルールの見直しを求める声が出ています。
有権者「節度守って」
ポスター掲示板をめぐる問題について有権者は…
(60代女性)
「投票には行くつもりですが、選挙が軽く扱われているような気がします。掲示枠が足りない状況をクリアファイルで対応するというのも疑問です」
(30代男性)
「良いのか悪いのかわかりませんが、選挙が変わってきたと感じます。選挙ポスターの掲示には税金が使われてもいるので、節度を守ってほしい」
総務省「記載内容 制限する規定はない」
選挙制度を所管する総務省は、記載内容を直接、制限する規定はないとしています。
(総務省)
「ポスター掲示場は候補者が自身の政見を広め、選挙運動のために使用するポスターを掲示するために設置されるものだが、記載内容を直接、制限する規定はない。
他の候補者の選挙運動や虚偽事項の公表を行うなどした場合は公職選挙法の処罰の対象になり得る。その他の法令に触れる場合はそれぞれで処罰の対象になるか判断される」
識者「信頼感を引き下げてしまう可能性も」
選挙と有権者の投票行動に詳しい識者は、こうした事態は政治や選挙に対する信頼感を引き下げてしまう可能性があり、法改正などの対応も必要だと指摘します。
(武蔵野大学 山崎新 講師)
「いまの法律の規定は性善説に立っているがこうした前例が出てきてしまうと、政治や選挙に対する信頼感を引き下げてしまう可能性がある。政治に関心が薄い有権者がさらに政治から離れることも危惧される。今後はポスターの内容は候補者本人の主張に限るとか、同一のものを貼ることを許可しないといった、法改正などの対応が必要だ。一方では選挙や民主主義の重要性を説く主権者教育も重要になる」
東京都知事選挙は17日間の選挙戦を経て、7月7日に投票が行われ、即日開票されます。