フランス国民こくみん議会ぎかい選挙せんきょ1回かい目め投票とうひょう 極右きょくう政党せいとうが最大さいだい勢力せいりょくになる勢いきおい

フランスのマクロン大統領だいとうりょうは6月つき上旬じょうじゅんに行おこなわれたヨーロッパ議会ぎかい選挙せんきょで、みずからが率ひきいる与党よとう連合れんごうが自国じこく第だい1主義しゅぎや移民いみん規制きせいを掲かかげる極右きょくう政党せいとうの国民こくみん連合れんごうに大敗たいはいしたことを受うけて、議会ぎかい下院かいんにあたる国民こくみん議会ぎかいを電撃でんげき的てきに解散かいさんしました。

議会ぎかい下院かいんの選挙せんきょは30日にちに1回かい目めの投票とうひょうが、7月つき7日にちに決選けっせん投票とうひょうが行おこなわれる予定よていで、与党よとう連合れんごうと国民こくみん連合れんごう、それに議会ぎかい解散かいさんを受うけて急きゅうきょ結成けっせいされた左派さは連合れんごう、「新しん人民じんみん戦線せんせん」の三みつどもえの争あらそいとなっています。

マクロン大統領だいとうりょうは国民こくみん連合れんごうが政権せいけんを握にぎれば、国くにの危機ききを招まねくとして結集けっしゅうして対抗たいこうするよう訴うったえてきたのに対にたいし、国民こくみん連合れんごうは政権せいけんを担になう準備じゅんびは出来できていると主張しゅちょうしてきました。

28日にちに発表はっぴょうされた世論せろん調査ちょうさに基もとづく議席ぎせき予想よそうでは、国民こくみん連合れんごうと、連携れんけいする候補こうほが合あわせて最大さいだい265議席ぎせきと、いまより3倍ばい近ちかく増ふやして最大さいだい勢力せいりょくになり、新しん人民じんみん戦線せんせんが最大さいだい200議席ぎせきで第だい2勢力せいりょくとなる一方いっぽう、与党よとう連合れんごうは最大さいだいで100議席ぎせきで、議席ぎせきを半数はんすう以上いじょう減へらす可能かのう性せいがあるという、マクロン大統領だいとうりょうにとって厳きびしい見通みとおしが示しめされています。

1回かい目めの投票とうひょうの結果けっかは日本にっぽん時間じかんの1日にち午前ごぜんには大勢たいせいが判明はんめいする見通みとおしです。

『国民こくみん議会ぎかい選挙せんきょ』とは

フランスの議会ぎかい下院かいんにあたる国民こくみん議会ぎかいは定数ていすうが577議席ぎせきですべてが小しょう選挙せんきょ区くとなっていて、選挙せんきょは、場合ばあいによって2回かいにわたって投票とうひょうが行おこなわれる仕組しくみになっています。

1回かい目めの投票とうひょうでは、過半数かはんすうを得票とくひょうし、かつ有権者ゆうけんしゃの4分ぶんの1以上いじょうの票ひょうを獲得かくとくした候補こうほ者しゃが当選とうせんします。

1回かい目めの投票とうひょうで、当選とうせんした候補こうほ者しゃがいない場合ばあいは1週間しゅうかん後ごに決選けっせん投票とうひょうが行おこなわれます。

決選けっせん投票とうひょうでは、1回かい目めの投票とうひょうの上位じょうい2人にんと、1回かい目めの投票とうひょうで有権者ゆうけんしゃの12.5％以上いじょうの票ひょうを獲得かくとくした候補こうほ者しゃが進すすみ、最もっとも多おおくの票ひょうを得えた候補こうほ者しゃが当選とうせんすることになります。

前回ぜんかい・2022年ねんの選挙せんきょでは1回かい目めの投票とうひょうで当選とうせんした候補こうほ者しゃは5人にんだけで99％は決選けっせん投票とうひょうで決きまっています。

通常つうじょう、フランスの国民こくみん議会ぎかい選挙せんきょは、大統領だいとうりょう選挙せんきょのすぐあとに行おこなわれることになっています。

大統領だいとうりょうの出身しゅっしん政党せいとうが、大統領だいとうりょう選挙せんきょの勢いきおいを保たもったまま新あたらしい議会ぎかいの多数たすう派はとなり、首相しゅしょうを選出せんしゅつすることで、大統領だいとうりょうの出身しゅっしん政党せいとうと議会ぎかいの多数たすう派はを握にぎる政党せいとうが別べつとなる「ねじれ現象げんしょう」を避さけ、安定あんていした政権せいけん運営うんえいが期待きたいできるためです。

しかし今回こんかい、地元じもとメディアなどは、躍進やくしんが予想よそうされる極右きょくう政党せいとうから首相しゅしょうが生うまれ、議会ぎかいに「ねじれ現象げんしょう」が生しょうじる可能かのう性せいもあるという見方みかたを伝つたえています。

与党よとう連合れんごうとは

マクロン大統領だいとうりょうの与党よとうである中道ちゅうどう政党せいとう「再生さいせい」は、他たの2つの中道ちゅうどうの政党せいとうとともに与党よとう連合れんごうとして今回こんかいの選挙せんきょ戦せんを戦たたかいます。

「再生さいせい」は、左派さはでも右派うはでもない新あたらしい政治せいじ運動うんどうとして、2016年ねんにマクロン大統領だいとうりょう自身じしんが立たち上あげた政党せいとうです。

マクロン大統領だいとうりょうが初はじめて大統領だいとうりょうに当選とうせんした2017年ねんに行おこなわれた国民こくみん議会ぎかい選挙せんきょでは、右派うはの共和党きょうわとうと左派さはの社会党しゃかいとうの伝統でんとう的てきな2大だい政党せいとうに対にたいし圧勝あっしょうし、フランス政治せいじの伝統でんとう的てきな構図こうずに大おおきな変革へんかくをもたらしました。

ただ、現在げんざいの国民こくみん議会ぎかいでは、与党よとう連合れんごうとして第だい1勢力せいりょくの座ざを維持いじしているものの、過半数かはんすうはなく、法案ほうあんの採決さいけつには共和党きょうわとうなどの協力きょうりょくが必要ひつようとなっていて、厳きびしい政権せいけん運営うんえいが続つづいています。

今回こんかいの選挙せんきょ戦せんでは電気でんき料金りょうきんの15％の値下ねさげや、環境かんきょう対策たいさくとして電気でんき自動車じどうしゃの推進すいしんなどを公約こうやくとして掲かかげています。

また、ロシアによる侵攻しんこうを受うけるウクライナへの支援しえんの継続けいぞくと、国防こくぼう費ひの増額ぞうがくを訴うったえています。

さらに、野党やとうが掲かかげている燃料ねんりょうの付加ふか価値かち税ぜいの引き下ひきさげや、最低さいてい賃金ちんぎんの引き上ひきあげなどは財政ざいせい悪化あっかを招まねくとして批判ひはんしています。

マクロン大統領だいとうりょうは国民こくみん連合れんごうと左派さは連合れんごうの公約こうやくについて「彼かれらの政策せいさくは政治せいじ的てきな誠実せいじつさがなく、フランスの経済けいざいや金利きんりだけでなく、国民こくみんや納税のうぜい者しゃ、年金ねんきん生活せいかつ者しゃなどにとっても非常ひじょうに大おおきな危険きけんをもたらす」と述のべ、与党よとう連合れんごうへの結集けっしゅうを呼よびかけています。

国民こくみん連合れんごうとは

「国民こくみん連合れんごう」は、前まえの党首とうしゅで、いまも党とうの顔かおであるマリーヌ・ルペン氏しの父親ちちおやのジャンマリー・ルペン氏しが1972年ねんに設立せつりつした「国民こくみん戦線せんせん」が前身ぜんしんです。

「国民こくみん戦線せんせん」は、反はんユダヤ主義しゅぎや移民いみん排斥はいせきなどの主張しゅちょうを堂々どうどうと掲かかげ、人種じんしゅ差別さべつ主義しゅぎ的てきだと批判ひはんされてきました。

娘むすめのルペン氏しは、2011年ねんに党首とうしゅに就任しゅうにんして以降いこう次第しだいに過激かげきな主張しゅちょうを控ひかえ、2018年ねんには党名とうめいを「国民こくみん連合れんごう」に変更へんこうし、「脱だつ悪魔あくま化か」ともいわれる穏健おんけん化か路線ろせんを進すすめてきました。

ルペン氏しは2017年ねんと2022年ねんの大統領だいとうりょう選挙せんきょで、いずれも決選けっせん投票とうひょうに進すすみ、マクロン大統領だいとうりょうに敗やぶれましたが、支持しじを拡大かくだいさせてきました。

さらに、現在げんざい28歳さいのジョルダン・バルデラ氏しが2年ねん前まえに党首とうしゅに就任しゅうにんして以降いこうは、SNSでの発信はっしんにも力ちからを入いれ、若わかい有権者ゆうけんしゃの獲得かくとくにも力ちからを入いれてきました。

今回こんかいの選挙せんきょでは、購買こうばい力りょくの向上こうじょうを訴うったえ、燃料ねんりょうとエネルギーの付加ふか価値かち税ぜいを現在げんざいの20％から、5.5％に引き下ひきさげるほか、マクロン政権せいけんが行おこなった、年金ねんきんの支給しきゅう開始かいし年齢ねんれいの引き上ひきあげの見直みなおしなども公約こうやくに掲かかげています。

また、移民いみん政策せいさくに関にかんして、親おやの国籍こくせきに関係かんけいなくフランスに生うまれた場合ばあいにフランス国籍こくせきを与あたえる「出生しゅっしょう地ち主義しゅぎ」を撤廃てっぱいすることや移民いみんの規制きせい強化きょうかを訴うったえています。

一方いっぽう、ロシアによる侵攻しんこうを受うけるウクライナ支援しえんでは、緊張きんちょうの激化げきかを避さけるためとしてフランス軍ぐんの兵士へいしのウクライナへの派遣はけんや、射程しゃていの長ながいミサイルの供与きょうよには反対はんたいするとしています。

今回こんかいの選挙せんきょでは、伝統でんとう的てきな右派うは政党せいとうの共和党きょうわとうからも一部いちぶの議員ぎいんが協力きょうりょくする姿勢しせいを見みせていて、議会ぎかいの過か半数はんすうの議席ぎせき獲得かくとくを目指めざしています。

バルデラ党首とうしゅは、24日にちに開ひらいた記者きしゃ会見かいけんで、「国民こくみん連合れんごうは、国民こくみんの願ねがいを実現じつげんできる唯一ゆいいつの政党せいとうだ。我々われわれには準備じゅんびができている」と述のべ、政権せいけんを握にぎる自信じしんをのぞかせました。

左派さは連合れんごう「新しん人民じんみん戦線せんせん」とは

左派さは連合れんごうの「新しん人民じんみん戦線せんせん」は、今回こんかいの議会ぎかい解散かいさんを受うけて極右きょくう政党せいとうの勢力せいりょく拡大かくだいを阻止そしすることを共通きょうつうの目的もくてきに、急きゅうきょ結成けっせいされた勢力せいりょくです。

名前なまえは、1930年代ねんだい後半こうはんにフランスで反はんファシズムの旗印はたじるしのもと社会党しゃかいとうと共産党きょうさんとうなどが結集けっしゅうして作つくられた、「人民じんみん戦線せんせん」に由来ゆらいしています。

「新しん人民じんみん戦線せんせん」を構成こうせいするのは、急進きゅうしん左派さはの政党せいとう「不ふ服従ふくじゅうのフランス」、それに社会党しゃかいとうと共産党きょうさんとう、そして環境かんきょう保護ほごを重視じゅうしする政党せいとうの会派かいはです。

各かく政党せいとうは互たがいの候補こうほ者しゃが競合きょうごうしないよう、調整ちょうせいを行おこなうとしています。

選挙せんきょ戦せんでは高騰こうとうする物価ぶっかへの対策たいさくや福祉ふくし政策せいさくの充実じゅうじつを訴うったえていて、月額げつがくの最低さいてい賃金ちんぎんを現在げんざいのおよそ1400ユーロから、1600ユーロに大幅おおはばに引き上ひきあげるほか、マクロン大統領だいとうりょうが進すすめてきた年金ねんきん制度せいど改革かいかくを全面ぜんめん的てきに見直みなおし、退職たいしょく年齢ねんれいを64歳さいから60歳さいに引き下ひきさげるなどとしています。

これに対にたいし与党よとう側がわは財政ざいせい悪化あっかを招まねき、経済けいざいの危機ききにつながるといった批判ひはんをしています。

また、「新しん人民じんみん戦線せんせん」の中なかでは選挙せんきょで勝利しょうりした場合ばあいに首相しゅしょうの候補こうほをどう選えらぶのかという問題もんだいで各かく政党せいとうの意見いけんに隔へだたりがあるとも伝つたえられていて、選挙せんきょ後ごに足並あしなみをそろえられるのかが焦点しょうてんとなっています。