米国で展開される民主党系の政治広告に、トランプ米政権で予算削減に大なたを振るう起業家イーロン・マスク氏が、批判の標的として盛んに登場している。民主党の主要な外郭団体のひとつ「ハウス・マジョリティ・フォワード」は最近、二十数カ所での下院選に向けた広告を打ち出した。現職の共和党議員らが子どもや高齢者向け医療の予算を削減し、マスク氏のような富裕層を優遇しようとしていると批判する内容だ。ここに使われたのが、先月開かれた保守派のイベントでチェーンソーを振りかざし、コスト削減をアピールしたマスク氏の姿だった。マスク氏は、東部バージニア州下院の民主党議員団によるデジタル広告にも起用された。同州では民主党が小差ながら下院の多数を占め、共和党をさらに引き離そうと狙っている。中西部ウィスコンシン州では、州最高裁判事の公選でリベラル派の候補者を支援する広告が、マスク氏にスポットを当てた。同州最高裁では公選の結果しだいで、保守派とリベラル派の割合が逆転する可能性もある。選挙戦略家でバイデン前政権の当局者だったリンダ・トラン氏は、マスク氏が民主党にとって格好の悪役だと指摘。「同氏は現在、圧倒的多数の見出しを躍らせている。あまりに大きな注目を集めているため、いやが応でもその名前を口にすることになる」と述べた。最近の世論調査では、特に民主党を支持する有権者らの間で、マスク氏の不人気が目立っている。