道路交通法に違反したとして、こうした行政処分が行われるのは、全国で初めてだということです。
東京 港区新橋にある深夜営業の居酒屋を運営する会社は、去年11月、道路使用の許可を得ずに店舗前の路上にテーブルやいすを並べたとして、道路交通法違反の疑いで書類送検されました。
警視庁が60回以上にわたって路上営業をやめるよう指導や警告を行いましたが、従っていなかったということです。
この運営会社に対し、東京都公安委員会は、風俗営業法に基づき今月21日から21日間、営業停止の処分にすると命じました。
警視庁によりますと、道路交通法に違反したという理由で風俗営業法に基づく行政処分が行われるのは、全国で初めてだということです。
新橋の繁華街では、おととしごろから違法な路上営業を行う飲食店が増加して、地元住民などから苦情が相次いでいて、警察や区の担当者が「火災などの際に緊急車両が通行できないおそれがある」としてやめるよう呼びかけていました。
新橋地区一帯の連合町会長は
新橋地区一帯の連合町会長を務め、新橋駅近くで長年、飲食店を営んでいる丸哲夫さんによりますと、飲食店の路上営業は「コロナ禍」のあと、客が戻ってきたおととしごろから目立つようになったといいます。
最も多かったときは、狭い区道の両側の飲食店がテーブルやいすを出していたため、人が通行するのもやっとの状態だったということです。
丸さんは「繁華街なので、火事や警察沙汰があるが、そのようなときに緊急車両が通れないので危ないと思っていた。ビルの2階より上の店からは『客が自分の店に入ってこられない』といった声もあり、非常に困る状態だった」と当時を振り返ります。
違法な路上営業が増えたことについて、港区の担当者は、新型コロナの影響で飲食店の入れ代わりがあり、ルールを知らなかったり守らなかったりする店が増えたことや、テナント料が高騰する中、コロナ禍で営業が厳しかった時期の売り上げを取り返すために1人でも多くの客を入れようとしたことが要因ではないかと指摘しています。
また、新型コロナ対策の一環で、一定の条件であれば店先の道路上にテラス席を設けることができるようになりましたが、道路が狭く、制度の対象ではない場所でも路上営業できると誤解していたケースもあったということです。
区が継続的に監視したり、警察が悪質な店を摘発したりしたことで、現在、状況は改善されていますが、今後、気候がよくなるとまた増えるのではないかと心配しているといいます。
丸さんは「自分も飲食店を営んでいるので、お客さんが入ってほしいという気持ちはわかるが、路上営業で自分の店だけ客が入ればいいというのは周りの店にも迷惑をかける。区役所や警察、地元が協力した取り組みで効果があったので、みんなで協力していい街にしていきたい」と話していました。
港区の「道路監察巡回指導員」が週4日パトロール
港区は、去年4月から路上営業などに注意を促す「道路監察巡回指導員」を新たに採用し、週に4日、パトロールをする取り組みを始めました。
今月7日にもパトロールが行われ、路上部分にはみだしてテーブルやいすを出している店や、路上に看板が出ている店に対し、指導員が「道路にはみ出さないようにしてください」などと注意していました。
当初は1日40件ほど指導を行っていましたが、取り組みの効果もあって現在は10件以下にまで減っているということです。
区は、暖かくなると再び増加するおそれもあるとして、来月以降も取り組みを続けたいとしています。
「道路監察巡回指導員」の多田義夫さんは「道路の両側が路上営業をして人が通るのがやっとだった場所でも、車が通れる広さになるような成果が明らかに出ている。飲食店側の話を聞きつつ『何かあったときに大変だからお願いします』と協力を呼びかけている。火事などの際に緊急車両が通れないと意味がないので、そのことを念頭に道路の幅を広げるようにしている」と話していました。