国連の安保理では18日、パレスチナ問題についての協議が行われました。
このなかでパレスチナのマンスール国連大使は「パレスチナ人は無差別に殺害されている」と述べイスラエル軍による空爆を非難したうえで、「今後、数日が正念場だ。戦争の継続ではなく停戦が実行され、平和が優先されるよう助けてほしい」と述べ、各国に停戦の継続への支援を訴えました。
また、フランスやイギリス、ロシアなど安保理の各国からも戦闘の停止と停戦の継続を求める意見が相次ぎました。
一方、アメリカのシェイ国連臨時代理大使は、「責任はハマスのみにある」と主張した上で、空爆で多数の死者が出ていることについても「ハマスが民間施設をロケットの発射台にしているのは周知の事実だ」と述べて、イスラエル軍による空爆を支持する姿勢を示しました。
またイスラエルのミラー国連次席大使は「ハマスは人質の解放を拒否しており、戦闘の再開が必要だ」としたうえで、「人質の解放がこの戦争を終わらせる第一歩だ」と述べ、いまもハマス側に拘束されている人質全員の解放が何よりも優先されるべきだと強調しました。
グテーレス事務総長 “停戦の実現あきらめない”
国連のグテーレス事務総長は、イスラエル軍によるガザ地区への大規模空爆について18日、ジュネーブでの記者会見で「残念ながら私たちはパレスチナの人々が、数百人の死者を出した空爆で耐えがたい苦しみを受けているのを目撃している」と述べました。
そして国連の役割は停戦の完全な尊重と、ガザ地区への人道支援の継続、そして人質の無条件解放の3つを行うよう当事者を説得することだとして「こうした目標の実現を決してあきらめない」と強調しました。
ガザ地区南部ハンユニスの様子は
NHKガザ事務所が18日、イスラエル軍の攻撃を受けたガザ地区南部ハンユニスで撮影した映像では、住民たちが避難生活を送っていた屋外のテントが多数、焼けていて、その周辺で住民たちがまだ使える家財道具を探しています。
近くのテントが攻撃を受けたという男性は「息子は破片で腕にけがをし、おいは今も集中治療室で治療を受けています。近くに住んでいた人が犠牲になりました」と話していました。
また別の男性は「イスラエルが停戦合意に違反したことに驚きました。激しい空爆があり、あたりは地獄のようでした」と当時の様子を話していました。
また、イスラエル軍がイスラエルとの境界に近いガザ地区の一部の住民に新たに退避通告を出したことを受けて、車やロバが引く荷車に家財道具を積んで避難する人の姿も見られました。
イスラエル ネタニヤフ首相「攻撃を続けながら協議」
イスラエルのネタニヤフ首相は18日夜、ビデオ声明を公開しガザ地区でイスラム組織ハマスに対する大規模な空爆を行ったことについて「ハマスが提案を拒否し続け人質を解放しないなら、戦闘を再開するとわたしは約束してきた」と述べ、攻撃を再開した責任はアメリカの停戦案を拒んだハマスにあると主張しました。
そのうえで「これよりイスラエルはより強力な手段でハマスに対処していく。攻撃を続けながら協議を行っていくことになるだろう」と述べ軍事的な圧力をかけながら人質解放を迫っていく考えを強調しました。
イスラエル カッツ国防相「人質解放しなければ攻撃強まる」
イスラエル側は空爆の理由について停戦を一定期間延長し、人質の解放を進めるというアメリカの提案を、ハマスが拒否したためだとしていて、カッツ国防相は「人質を解放しなければ攻撃は強まるだけだ」としてさらなる攻撃を警告しています。
一方、ガザ地区の保健当局は今回の空爆でこれまでに404人が死亡し、多くの人ががれきの下に取り残されていると発表しました。
ハマス幹部 自衛のための戦闘辞さない構え
ハマスの政治部門のバセム・ナイム幹部が18日、NHKのオンラインインタビューに応じ、「仲介国などを交えて停戦合意の維持についての協議が続いていたのにもかかわらず、イスラエルは真夜中に残酷な攻撃を行った。停戦合意を守っていない」と強く非難しました。
さらに「アメリカ政府はイスラエル側から事前に攻撃のことを知らされ、それを承認している。アメリカはもはや仲介国ではなく紛争当事者であって、攻撃の責任はアメリカ政府にもある」と述べ、アメリカのトランプ政権も攻撃に加担していると非難しました。
ナイム幹部は「いまボールは仲介国と国際社会のもとにある。戦闘が再開しないようイスラエルによる攻撃をやめさせなければならない。もしイスラエルやアメリカがハマスへの圧力で人質が解放されると考えているのであれば、それは幻想だ。われわれは戦闘を望んでいないが、必要であればすべての手段で自分たちや住民を守る」と述べ、自衛のための戦闘を辞さない構えを示しました。
今後については「イスラエルが本当に戦争を終えたいのであれば、軍の完全撤退や復興の話し合いをすべきだ。その時に人質解放が実現する。焦点が人質解放だけに当てられパレスチナ人が占領のもと、厳しい人道状況で生き続けることを強制されることは受け入れられない」として、イスラエル軍のガザ地区からの完全撤退や恒久的な停戦を目指す第2段階への移行の必要性を改めて訴えました。
カタール「戦争を完全に終結させることが必要」
これまで停戦協議を仲介してきたカタールは声明でイスラエルを強く非難する一方、「停戦合意を履行するための協議を再開するとともに、ガザ地区での戦争を完全に終結させることが必要だ」とし、仲介努力を続ける構えです。アメリカの有力紙、ワシントン・ポストなどは仲介国のカタールとエジプトが緊急会合を計画していると報じていて、ことし1月から続いてきたガザ地区の停戦が崩壊するのを回避できるかが焦点となっています。