現代のサッカー界で心の琴線に触れるのは、選手のフィールドでの活躍ばかりではない。サッカーのワールドカップ(W杯)予選試合を目前に控えてパレスチナのサッカー協会が公開した代表チーム選考の動画は、それを物語っている。映っているのはガザに積み重なるがれきの山。子どもたちは海岸で、がれきと化した都市の中で、露店で、授業が行われているテントの中で、代表選手の写真を見つける。カンバスに入ったDFムサブ・バタットの写真は海岸の岩の上で発見され、FWオデイ・ダッバーグの写真はがれきの中から拾い上げられた。CBミラド・テルマニーニの写真は仮設給水所の缶の間にあった。楽しそうに写真を集める子どもたちの姿と並行して映るのは、イスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦争がもたらした惨状の光景だ。国連によれば、この戦争でパレスチナ人4万8000人以上の命が奪われた。