女子100
メートルバタフライの
決勝、
池江選手は「ただいま」とつぶやいて、
スタート台へ
向かいました。
復帰直後から課題としてきたスタートでやや出遅れ、序盤は5レーンの相馬あい選手に先行を許し、頭1つ分の差を追いかける展開となりました。それでも50メートルのターンでは0秒03差に迫り、横並びでの接戦で迎えた最後の25メートル、池江選手が一気に抜け出してリードを奪い、トップでフィニッシュしました。
タイムは57秒77。電光掲示板を振り返り、3年ぶりの優勝、そして東京オリンピックのメドレーリレーの派遣標準記録を突破したタイムを確認した池江選手は、スタート台につかまったまま涙を流し、しばらくプールから上がることができませんでした。
プールサイドで行われた優勝インタビューでは「本当にこの種目は優勝をねらっていなかったので、何番でもここにいることに幸せを感じようと思った。57秒が出るとは思っていなかった。つらくてもしんどくても、努力は必ず報われると感じた」と泣きながら答えた20歳。自身も驚く会心のレースで、3年ぶりの日本一の座をつかみました。
また「自分が勝てるのはずっと先のことだと思っていました。リレーでも入れると思っていなかったのでうれしいです」、「残りの種目もあるので気を抜かずに頑張りたい」と、次を見据えていました。
おととし白血病と診断 去年8月にレース復帰
池江選手は
東京都出身の20
歳。バタフライと
自由形が
専門で、
水の
抵抗が
少ない美しい水中姿勢と、
肩周りの
関節の
柔らかさを
生かした
大きく
伸びやかな
泳ぎが
持ち味です。
16歳で出場した2016年のリオデジャネイロオリンピックでは女子100メートルバタフライで5位に入りました。25メートルプールの短水路の記録と合わせて個人種目で「11」の日本記録を持っています。
おととし2月に白血病と診断されて闘病のため競技を離れましたが、およそ10か月の入院生活などをへて、去年8月にレースに復帰しました。
復帰後は
日本選手権までの
間に5つの
大会に
出場し、ことし2
月の
大会では50
メートルバタフライで
おととしの
世界選手権の
決勝進出に
相当する
好タイムを
マークする
など、
着実に
力を
取り戻していることを
印象づけました。
今大会に向けては、闘病の影響で一時15キロ以上落ちた体重や筋力が戻りきっていないことで、レース序盤で出遅れてしまう課題に向き合い、体を大きくするための“食トレ”や、スタート練習に力を入れてきました。
自身の力の戻り具合を踏まえて、2024年のパリオリンピック出場を目標に掲げ、今大会は「すべての種目での決勝進出」を目指して、バタフライと自由形の4種目にエントリーしていました。
池江と100mバタフライ
女子100
メートルバタフライは
池江選手が
最も得意としてきた
種目で、
白血病と
診断される
前の2018
年にマークし、
現在でも日本記録の56
秒08は、
その年の
世界1
位の
タイムでした。
去年8月にレース復帰直後は体への負担などを考慮して出場種目を自由形に絞っていましたが、5大会目となったことし2月の大会で初めて100メートルバタフライのレースに出場し、59秒44のタイムで日本選手権の出場に必要な参加標準記録をクリアしていました。
先月、新潟県長岡市で行った最後の強化合宿では、1回の練習の中でそれまではほとんど入れていなかったというバタフライの割合を増やして準備を進め「バタフライの練習を徐々に入れているし『2月の大会よりは早いでしょう』という気持ち」と話して、自信をのぞかせていました。
3年ぶりの出場となった日本選手権で、最初のレースとなった3日の100メートルバタフライ予選で、58秒68のタイムで組トップとなり、全体2位で準決勝に進みました。
準決勝では、課題としてきたレース序盤でも出遅れることなく、前半から力強い泳ぎをみせて予選からタイムを0秒20縮めて58秒48をマークし、全体3位で決勝進出を決めていました。
かつての指導者 “自慢の教え子”
池江選手を
小学2
年生から6
年生まで5
年間指導を
行い、
今も
親交が
ある東京 江戸川区のスイミング
スクールの
清水桂さんは、「
テレビで
優勝を
見届けた
瞬間、
頭が
真っ白になって
体が
震えた。2
月の
大会を
現地で
見たとき、100
メートルは
まだ厳しいのかなと
感じたが、
おととい試合会場で
池江選手に
会って
調子を
尋ねたら“バキバキですよ”と
笑顔で
答えたので、もしかしたらやって
くれるのかもしれないと
思っていた。
これが
僕の
自慢の
教え子、
池江璃花子の
泳ぎ。
日本の
多くの
皆さんにすばらしい
泳ぎを
見てもらえてうれしい」と
話していました。
東京オリンピックについては、「これでようやくスタート台に立てたと思っている。池江選手の第2の競技人生はまさにこれから始まる。オリンピック出場というよりも王座奪還が一つの目標だったと思うので、この1種目だけでなく、一つ一つ地道に積み重ねて一つ一つの種目の王座を取り戻していってほしい。その結果、その道の先に東京オリンピックを含めた何かがあるのではないかと思う。池江選手らしく、このまま笑顔で突き進んでほしい」と、エールを送っていました。
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Source: NHK
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