化石燃料を燃やすことによる温室効果ガスの排出量は今年、世界で374億トンに達し、過去最大の記録を更新するとの見通しが明らかになった。
国際研究ネットワーク、グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)が12日、英エクセター大学の気候学者、ピエール・フリードリンクスタイン教授らによる研究の報告書を公開した。この報告書は、アゼルバイジャンの首都バクーで開催されている国連気候変動会議(COP29)に合わせて発表された。
報告書によると、今年の排出量は昨年を0.8%上回る。石炭、石油、天然ガスの使用でそれぞれ排出された量は、すべて増加する見通しだ。
化石燃料の使用以外に森林破壊などの原因を含めた総排出量も、深刻な干ばつや火災の影響でさらに増加し、昨年の406億トンから416億トンに増えるとみられる。
国連が先月発表した報告書は、世界の排出量が次第に頭打ちとなり、今年は減少に転じる可能性もあるとの期待を示していた。
だがフリードリンクスタイン教授は、「化石燃料の燃焼がピークを越えた兆候はみられない」と指摘する。
気候変動対策の国際ルール「パリ協定」の目標に沿って世界の平均気温の上昇幅を1.5度までに抑えるためには、2030年までに温室効果ガス排出量をほぼ半減させる必要がある。だがGCPの報告書によると、排出がこのまま続いた場合、6年後に上昇幅が常時1.5度を超える事態になる確率は50%と考えられる。
大気中の二酸化炭素(CO2)を除去する技術に期待する声もあるが、現時点で除去されている量は、化石燃料による排出量全体の百万分の一程度にすぎないという。
同教授は「時間切れが迫っている」と警告し、「COP29に集まった世界の首脳らは、化石燃料による排出の迅速、大幅な削減を実現する必要がある」と訴えた。