高こうリスクお産おさん対応たいおう「MFICU」診療しんりょう報酬ほうしゅう一部いちぶ得えられない病院びょういん2割わり近ちかく

調査ちょうさした団体だんたいは「慢性まんせい的てきな医師いし不足ふそくに加くわえ、病院びょういんの収入しゅうにゅうまで減へると地域ちいきの周しゅう産さん期き医療いりょうの維持いじが難むずかしくなるおそれがある」としています。

MFICU＝「母体ぼたい・胎児たいじ集中しゅうちゅう治療ちりょう室しつ」は、切迫せっぱく早産そうざんなどリスクの高たかいお産おさんに24時間じかん対応たいおうできるよう各地かくちの病院びょういんに設置せっちされていて、専任せんにんの医師いしを確保かくほするなど一定いっていの要件ようけんを満みたした病院びょういんには通常つうじょうの入院にゅういんより高たかい診療しんりょう報酬ほうしゅうが支払しはらわれています。

専門せんもんの医師いしでつくる団体だんたいは、ことし8月つきまでにMFICUのある地域ちいきの拠点きょてんとなる病院びょういんに調査ちょうさを行おこない、およそ9割わりに当にあたる102施設しせつから回答かいとうを得えました。

その結果けっか、要件ようけんを満みたせず、診療しんりょう報酬ほうしゅうの一部いちぶを得えられないと答こたえた病院びょういんが全体ぜんたいの2割わり近ちかくに当にあたる18施設しせつに上のぼることがわかりました。

医師いしの数かずが足たりず、要件ようけんを満みたす診療しんりょう体制たいせいをとれないことが主おもな理由りゆうだということです。

18施設しせつの中なかにはその県けんで唯一ゆいいつのMFICUもあり限かぎられた人員じんいんで患者かんじゃを受け入うけいれているものの、低ひくい診療しんりょう報酬ほうしゅうしか得えられず病院びょういんの経営けいえいに影響えいきょうが出でているおそれがあるということです。

調査ちょうさした全国ぜんこく周しゅう産さん期き医療いりょう連絡れんらく協議きょうぎ会かいの村越むらこし毅あつし 代表だいひょう幹事かんじは「特とくに地方ちほうでは慢性まんせい的てきな医師いし不足ふそくが改善かいぜんせず、そのうえ病院びょういんの収入しゅうにゅうまで減へると地域ちいきの周しゅう産さん期き医療いりょうの維持いじが難むずかしくなるおそれがある。財政ざいせいや人手ひとでの面めんで手厚てあつい支援しえんが必要ひつようだ」と話はなしていました。

要件ようけんを満みたせない現場げんばの実情じつじょうは

高知こうち市しにある高知こうち医療いりょうセンターは、MFICU＝母体ぼたい・胎児たいじ集中しゅうちゅう治療ちりょう室しつの医師いしの配置はいち要件ようけんを満みたせず、診療しんりょう報酬ほうしゅうの一部いちぶを受うけられていない病院びょういんの一ひとつです。

高知こうち県けんでは唯一ゆいいつの総合そうごう周しゅう産さん期き母子ぼし医療いりょうセンターで、MFICUの病床びょうしょうを3床しょう備そなえ、切迫せっぱく早産そうざんや持病じびょうがあるリスクの高たかい妊婦にんぷなどを年間ねんかん50人にんほど受け入うけいれています。

10月つきに取材しゅざいを行おこなった日ひには、通常つうじょうの予定よてい日びより4か月かげつ以上いじょう前まえに出産しゅっさんする可能かのう性せいのあった女性じょせいが入院にゅういんしていました。

医師いしは早産そうざんを避さけるため、赤あかちゃんができるだけ長ながく胎内たいないにいられるように、妊婦にんぷの状態じょうたいをこまめに確認かくにんし、必要ひつような治療ちりょうを行おこなっていました。

このセンターでは夜間やかんや休日きゅうじつの時間じかん帯たいにMFICUに医師いしが専任せんにんで対応たいおうできず、人手ひとでが足たりない場合ばあいは自宅じたくなどで待機たいきする医師いしを呼び出よびだす体制たいせいをとっています。

国くにの要件ようけんに合あわせて医師いしを配置はいちすることも検討けんとうしましたが、働はたらき方かた改革かいかくの影響えいきょうもあり、日にち中ちゅうの外来がいらいや手術しゅじゅつに対応たいおうする医師いしが不足ふそくしてしまうため、配置はいちは難むずかしかったといいます。

高知こうち県けんでは全体ぜんたい的てきにお産おさんに関かかわる医師いしが不足ふそくし、分ぶんべんを休止きゅうししたり制限せいげんしたりする医療いりょう機関きかんもあり、ほかの施設しせつから応援おうえんをもらうことも難むずかしい状況じょうきょうだといいます。

センターによりますと、2020年ねんから診療しんりょう報酬ほうしゅうの一部いちぶが受うけられなくなったことで、年間ねんかんおよそ3000万まん円えんの減収げんしゅうになったということです。

高知こうち医療いりょうセンターの林はやし和俊かずとし副ふく院長いんちょうは「県けん全体ぜんたいで医師いしが不足ふそくし、要件ようけんに合あわせて無理むりに働はたらかせるわけにもいかず、医師いしを配置はいちするのは難むずかしい状況じょうきょうだ。それでも高度こうどな医療いりょうを提供ていきょうする役割やくわりを果はたし続つづけていて、都市とし部ぶと地域ちいきでは医師いしの数かずにも大おおきな差さがあるため、国くにには地域ちいきの事情じじょうを考慮こうりょして診療しんりょう報酬ほうしゅうのあり方ありかたを検討けんとうしていただきたい」と話はなしていました。

診療しんりょう報酬ほうしゅうが支払しはらわれる要件ようけんは

MFICU＝「母体ぼたい・胎児たいじ集中しゅうちゅう治療ちりょう室しつ」は、切迫せっぱく早産そうざんや妊娠にんしん高だか血圧けつあつ症候しょうこう群ぐんといったリスクの高たかい妊婦にんぷの入院にゅういんを受け入うけいれるため医師いしや看護かんご師しの配置はいちなどを手厚てあつくする必要ひつようがあります。

このため、一定いっていの要件ようけんを満みたした病院びょういんには通常つうじょうの入院にゅういんより高たかい診療しんりょう報酬ほうしゅうが支払しはらわれていて

▽MFICUに専任せんにんの医師いしが常つねに1人にん勤務きんむするか

▽産婦人科さんふじんかの医師いしが病院びょういん内ないに常つねに2人にん以上いじょう勤務きんむし、このうち1人にんはMFICUの専任せんにんとして対応たいおうするか、いずれかの要件ようけんを満みたす必要ひつようがあります。

しかし、医師いしの働はたらき方かた改革かいかくの影響えいきょうもあり、特とくに休日きゅうじつや夜間やかんに人員じんいんを確保かくほするのが難むずかしくなっていて、地域ちいきによっては要件ようけんを満みたせない病院びょういんが出でているということです。

こうした状況じょうきょうについて厚生こうせい労働ろうどう省しょうは今後こんご、全国ぜんこく的てきな調査ちょうさを行おこなうことにしていて、「周しゅう産さん期き医療いりょうにかかる診療しんりょう報酬ほうしゅう上じょうの取り扱とりあつかいについては今後こんごの調査ちょうさ結果けっかを踏ふまえつつ中央ちゅうおう社会しゃかい保険ほけん医療いりょう協議きょうぎ会かいで引き続ひきつづき議論ぎろんしていく」とコメントしています。

専門せんもん家か「早急そうきゅうに対策たいさくを考かんがえなければならない」

病院びょういん経営けいえいや医療いりょう政策せいさくに詳くわしい日本にっぽん大学だいがく医学部いがくぶの田倉たくら智之としゆき 主任しゅにん教授きょうじゅは「安全あんぜんな医療いりょうには人件じんけん費ひや設備せつびの維持いじなどのコストがかかり、収入しゅうにゅうが減へることで医療いりょうレベルの低下ていかにつながるおそれがある。その結果けっか、適切てきせつな医療いりょう体制たいせいが維持いじできず、ハイリスクな妊婦にんぷを受け入うけいれる出産しゅっさん施設しせつが無なくなることにもつながりかねない」と指摘してきします。

そのうえで、対策たいさくについては、要件ようけんを満みたせない原因げんいんとなっている医師いし不足ふそくや偏在へんざいの解決かいけつ、それに補助ほじょ金きんを創設そうせつするなどの財政ざいせい的てきな支援しえんを国くにがリードして議論ぎろんしていく必要ひつようがあるとしています。

田倉たくら主任しゅにん教授きょうじゅは「都市とし部ぶと地域ちいきで抱かかえている事情じじょうが異ことなり、地域ちいきの中なかで唯一ゆいいつ、ハイリスク妊婦にんぷの受け入うけいれ先さきとなっているところもある。早急そうきゅうに対策たいさくを考かんがえなければならない」と話はなしていました。