「
おたがいさま」
同じ立場や状況にあることを指すこの言葉。
「おたがいさまだから気にしないでね」など、困ったり遠慮したりしている相手を気遣う時によく使われます。
このポジティブな言葉を世界に広めたいと取り組み始めた人たちがいます。
日本の「もったいない」が「MOTTAINAI」として浸透したように。
皆さんは「おたがいさま」使ってますか?
(大阪放送局 ニュースリポーター 小川真由)
魔法のことば「おたがいさま」
《
車いすを
利用する
女性からのエピソード》
私はまだ自分が行き慣れた限られた場所しか行くことができません。
車椅子で迷惑をかけるのがこわいからです。
でもこの度、私に魔法のことばができました。
その言葉は「おたがいさま」
女性は
車いすが
幅を
取ってしまったり、
道を
譲ってもらったりすることを
申し訳ないと
思い、
外出を
控えることもあった
そうです。
しかし、周りの人からの
「困った時はおたがいさま。お互いに困った時は助けあいましょう」
といった声がとても励みになったといいます。
おたがいさまの一言で気持ちが軽くなり、外出への怖さが減ったそうです。
おたがいさまからOTAGAISAMAへ
この「おたがいさま」のエピソードを
募ったのは
京都の
団体です。
「おたがいさま」を世界へと広めようと呼びかけたところ、国内外から70以上のエピソードが集まりました。
イベントを主催した赤坂美保さんも「おたがいさま」の言葉に救われた1人です。
もともとは
会社員として
海外と
関わる事業で
活躍してきた
赤坂さん。
出産後は、子ども中心の生活となり、職場の理解を得ながら働き方を見直さなければならなくなりました。職場仲間への後ろめたい気持ちもありました。
また、
買い物する
時やバスや
電車に
乗る時も、
動き回る子どもを
抱えて、
周囲の
人に
迷惑をかけていると
感じる日が
続きました。
そんなときに、知らない人からかけられたのが「おたがいさま」という言葉でした。
赤坂美保さん
「子どもと一緒にいるとすごい怒られることが多くて、そういう時に『おたがいさまだからいいよ』とか言っていただけると、『ほんとありがとうございます』って。私もそういう気持ちを忘れないで、いろんな人たちのことを想像して、おたがいさまと言えるようになりたいなと」
赤坂さんは「もったいない」が「MOTTAINAI」と世界に広まったように、「おたがいさま」も「OTAGAISAMA」として広めていきたいと考えました。
赤坂美保さん
「謝るのでも「いいよ」でもいいんですけど、「おたがいさまよ」だったら、負担感がすごく少ないんじゃないかなと思います。「おたがいさま」って、きっとほかの国でもなにかあると思うんですけど、みんながある程度許し合って、ある程度助け合ってみたいな言葉で、こんなすてきな言葉は、もっとたくさん使われたらいいよねって。世界に広げたいですね」
「おたがいさま」ボタン
子育て世代の
キャリア形成をサポートする
団体の
代表を
務める赤坂さん。
どうすれば気軽に「おたがいさま」と言えるようになるか。
赤坂さんはある工夫をしています。
それがこの「おたがいさま」ボタンです。
ふだん
メンバー同士で
やり取りしているチャットで、
子育てや
介護、
病気など業務に
関わる事情を
入力すると、
他のメンバーが
ボタンを
押して、
相手への
気遣いを
表します。
「おたがいさま」を可視化することで、遠慮して無理に仕事を抱え込まずに負担を分かち合えるといいます。
赤坂美保さん
「みんなが押してくれるので「おたがいさま」なんだなと。気兼ねなく表明しやすくなる」
イベントでも「おたがいさま」
また赤坂さんたちは、
自分たちが
暮らす京都から「おたがいさま」を
世界に
広めるためのトークイベントも
開催。ディスカッションでは、
その可能性についての
発言が
相次ぎました。
信用金庫の
男性理事「有給休暇が取りにくいような雰囲気があったんだけれども、気持ちよく休めるよう『おたがいさま休暇』を作ろうかなと」
子育て中の女性
「近所のママ友と習い事の送り迎えをシェアしたりとか、そういうおたがいさまはすぐ思い浮かぶ。でも世代の違う人とのおたがいさまは押しつけてるんじゃないか、別の形のお返しのしかたがあるのかも」
公務員の男性
「おたがいさまっていう言葉って、相手のことを気遣う意味で使われることがすごく多いいい言葉やな。いろいろな世代や立場の人と話すことで相手のことを理解していきたい」
「OTAGAISAMA」を世界に
「
おたがいさま」を
使うことで、
事情を
抱えている
人たちの
生きづらさを
少しでも
解消できるのではないか。
赤坂さんは、京都から世界にOTAGAISAMAを広げたいと考えています。
赤坂美保さん
「誰もが小さい時には誰かのおたがいさまで生かされてきたので、そして高齢になったらまた助けてもらうこともあるだろうし、そういった気持ちで余白をもっと広くして「おたがいさま」な形で声かけあえる世界ができたらいいなと思います」
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