一方、南海トラフ巨大地震が起きる確率は今後30年以内に70%から80%とされ、気象庁はいつ大規模地震が起きてもおかしくないことを意識し、ふだんから地震への備えを進めるよう呼びかけています。
13日午後9時19分ごろ、日向灘を震源とする地震が発生し、気象庁は地震の規模や震源域が南海トラフ地震の評価検討会を開く条件を満たしたとして評価検討会を開きました。
「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表する基準はマグニチュード7.0ですが、評価検討会で議論した結果、精査したマグニチュードは6.7と基準を下回ったということです。
そのため巨大地震の発生可能性がふだんより相対的に高まったと考えられる状況ではないと判断し、特段の防災対応を取る必要はないとして13日午後11時45分、調査を終了したと発表しました。
一方、南海トラフ巨大地震が起きる確率は今後30年以内に70%から80%とされ、気象庁はいつ大規模地震が起きてもおかしくないことを意識し、ふだんから地震への備えを進めるよう呼びかけています。
また臨時情報が出ないまま巨大地震が起こる可能性も十分あります。
気象庁は引き続き南海トラフ沿いの地殻活動を監視するとしています。
【気象庁が会見】
気象庁は、14日午前0時15分から会見を開き、束田進也地震火山技術・調査課長は「評価検討会を開いた結果南海トラフ地震が発生する可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる現象ではなかったと判断した。ただし、いつ地震が発生してもおかしくないことに留意し、日頃からの地震への備えを確実に実施しておくことが重要だ」と呼びかけました。
今回の地震のメカニズムについて「西北西から東南東方向に圧力軸をもつ逆断層型と解析された」と述べました。
ほかの防災機関の解析いずれもM7.0より小さかった
また、束田地震火山技術・調査課長は「気象庁の解析では地震の波形全体から求めたマグニチュードは6.7で、国内のほかの防災機関やアメリカなどでも6.8や6.9などと解析されているが、いずれもわれわれが巨大地震注意を呼びかけるマグニチュード7.0よりは小さかった」と話しました。
去年発生した地震の場所より北西側にずれていた
そして、今回の地震について「去年8月8日に発生した場所より若干、北西側にずれていた。その後の地震と今回の地震はその時とほぼ重なる場所で起きている」と述べました。
「巨大地震の可能性は高い 引き続き備えを」
また会見で、南海トラフ地震の評価検討会の平田直会長は「地震の波形全体から求めたマグニチュードは6.7と、7.0は大して違わないと思われるかもしれないが、地震によって放出されるエネルギーは3倍くらい小さく、平常時と比べて相対的に高まったと考えられる現象ではなかった。南海トラフで巨大地震が起きる可能性は十分に高く、地震はいつ起きてもおかしくないのがふだんの状態だ。引き続き地震の備えを進めてほしい」と話していました。
マグニチュードが基準より小さかったことが重要な観点
平田会長は「調査終了を判断したのは気象庁の複数の地震計などを使って確認した上で基準のマグニチュード7.0より小さいと分かったことが重要な観点だった」と述べました。
また、「今回の地震は去年8月の地震のあとの一連の活動の中で起きたもので、その地震で活発になった活動域の中で発生したものだ」と述べました。
ふだんと違う活動が起きていないと評価
そして「ひずみ計のデータなど地震活動が変化していないか議論したが、想定震源域内ではふだんとは違う活動が起きていないと評価した」と述べました。
その上で「今回の地震では最大震度5弱の揺れが観測され今後数日間は同じような揺れに十分注意が必要だ。ただ強調したいのは、南海トラフのどこかで巨大地震がいつ起きてもおかしくない状態はずっと続いており、引き続き十分注意をしてほしい」と呼びかけました。
会見で、束田進也地震火山技術・調査課長は、南海トラフ巨大地震との関連を評価する際に用いるマグニチュードについて、「波形全体を見て少し長めの時間をとって決める」と説明しました。
一方、津波注意報や警報を出す際のマグニチュードについては、「短い波形を使って計算するため、今回はその数値が6.9となり、津波注意報を出す基準を超えたので発表することになった。なるべく早く注意報や警報を出すために計算方法が異なるのはやむを得ない」と述べました。
ひとつひとつの地震で巨大地震の可能性を判断
南海トラフ地震の評価検討会の平田直会長は、日向灘で去年8月と今回、マグニチュード7前後の地震が起きたことで巨大地震の可能性が相対的に高まっているか問われ「1年に何回、マグニチュード7クラスの地震が起きたら巨大地震のおそれが高まるという研究はなく、検討会ではひとつひとつの地震が一定規模になると巨大地震が起きる可能性が高まると考えて判断している」と述べました。
専門家 「備え進んでいるか確認を」
調査の終了について、災害情報や住民の避難行動に詳しい東京大学大学院の片田敏孝特任教授は「『これで安全だと言われたわけではない』ということは意識しておいてほしい。あくまでも巨大地震と連動する可能性が相対的に高いかどうかを判断したにすぎず、『これで何もないんだ』と住民に受け止められることがいちばんよくない。日向灘で規模の大きな地震が発生し、同程度の規模の地震が発生するおそれがあるので引き続き十分注意してほしい」と話していました。
また「去年8月、『南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)』が発表されたが、巨大津波が想定されている高知県の黒潮町では住民が日頃から巨大地震に備えているため『今回は相対的に地震の発生確率が高まっているものの、これまでの備えで十分なので行動は変えなくてよい』と考えている人が多かった。黒潮町のケースのようにこの機会に、もし巨大地震が起きたら自分は逃げられるのか、備えは進められているのかなどを確認してもらいたい」と話していました。
専門家「発生確率 上がったわけでも下がったわけでもない」
日向灘を震源とする地震について気象庁は評価検討会を開きましたが、巨大地震の発生可能性がふだんより相対的に高まったと考えられる状況ではないと判断し、調査を終了したと発表しました。
これについて、防災情報に詳しい東京大学大学院の関谷直也教授は「想定震源域の中で起きた地震だったが『モーメントマグニチュード』が基準に達さなかった。発表は妥当だと思う」と述べた上で「今回の地震で南海トラフの巨大地震が発生する確率が上がったわけでも、下がったわけでもないということだ。今回の地震の余震も含め、ふだん通り、防災対応をとるのは変わらない」と指摘しました。
また、関谷教授の研究グループは去年8月の臨時情報の発表を受けて、インターネットで発表直後と3か月後の2回、アンケートをとりましたが、3か月後の調査でも、避難場所や家族との連絡方法、家具の転倒防止を確認した人の割合はいずれも10%前後にとどまっていたということです。
こうしたことを受けて「注意を緩めてよい、対応しなくてよいということではない。地域でどういう地震への備えが必要か考え、対策をとって欲しい」と呼びかけています。
宮崎県危機管理課「改めて家庭や地域でできる備えを」
気象庁が開いた南海トラフ地震の評価検討会が今回の地震について特段の防災対策を取る必要はないとして「調査を終了した」と発表したことを受けて、宮崎県の危機管理課は「南海トラフ地震はいつ起きるかわからないので、改めて家具の転倒防止対策や備蓄品の確認、避難場所の確認など家庭や地域でできる備えを進めて欲しい」と呼びかけています。
高知県危機管理部「地震 いつ発生してもおかしくない 備えを」
高知県危機管理部の江渕誠副部長は記者団の取材に応じ「県民の皆さんには引き続き、南海トラフ地震はいつ発生してもおかしくないということを常に意識して地震への備えを行ってもらいたい。家具の転倒防止対策や備蓄品の確認をこれを機会に各家庭で行ってほしい」と話していました。