逮捕されたのは、三菱UFJ銀行の元支店長代理で、東京 練馬区に住む今村由香理容疑者(46)です。
警視庁によりますと、練馬支店に勤務していた去年9月、スペアキーを使って貸金庫を開け顧客の男性2人が預けていた金塊合わせておよそ20キロ、2億6000万円相当を盗んだとして窃盗の疑いが持たれています。
調べに対し、「去年9月ごろ、盗んだことはまちがいない」と容疑を認めているということです。
元行員はこのとき盗んだ金塊を去年9月下旬から10月上旬にかけて都内や千葉県内の7つの質店に持ち込み、およそ1億7000万円で換金していました。
これまでの調べによりますと、FX取引や競馬で多額の損失を出して消費者金融からの借金があり、返済に困って貸金庫の金品を盗むようになったということです。
その後は盗みの発覚を免れるため、別の顧客の金庫から盗んだ現金を入れて「補てん」したり、質店に持ち込んだ金塊を現金を払って手元に戻し、もとの金庫に入れたりするなどの行為を繰り返すようになったということです。
貸金庫の客が来店する前に「補てん」が行えるよう、盗む前の金庫の中の状態をスマートフォンで撮影し、画像に残していたということです。
警視庁は元行員が4年半にわたって盗みを繰り返し、被害は少なくとも顧客60人から現金10億円以上、金塊などは時価総額7億円以上になるとみて詳しいいきさつを調べています。
【動画】記者解説「今後の捜査は」
※午後9時のニュースで放送した動画です。
データ放送ではご覧になれません。
警視庁クラブの小山志央理記者の解説です。
Q。現在の捜査の状況について。
A。逮捕された元行員は、警視庁の要請を受けて出頭したあと、練馬警察署で取り調べを受けていましたが、現在は留置される前の診療を医療機関で受けているとみられます。
Q。今後の捜査の焦点は?
A。銀行の説明によりますと、被害を受けた貸金庫の利用者は60人。被害額は時価にして10数億円にのぼるということです。これらについて、どこまで裏付けて立件できるかが、1つのポイントです。
警視庁は、事案が公表されてから2か月弱という、短期間での逮捕に踏み切りました。事件への社会の関心が高まる中で、容疑者への影響を懸念し、立件を急いだ可能性もあります。
今回は貸金庫の利用者2人の金塊を盗んだ容疑ですが、ほかの利用者からも被害の状況などを聞き取って、立証していく必要があります。
捜査関係者によりますと、元行員は現金のほか、金塊などを盗んで複数の質店に持ち込み、現金に換えていました。盗んだ物品について、「記録」も残していたということで、これらの「記録」も捜査の裏付けになったとみられます。
換金したカネは投資に回していたということで、警視庁は元行員が盗みを繰り返すようになった動機やいきさつについても詳しく調べる方針です。
事件の経緯
三菱UFJ銀行によりますと、貸金庫の利用客から「貸金庫に入れていたものが減っている」といった相談が寄せられたことがきっかけとなり、去年10月、元行員による盗みの疑いが発覚したということです。
銀行が元行員に確認したところ、盗んだことを認め去年懲戒解雇にした上で事案を公表していました。
銀行によりますと、被害にあったのは練馬支店と玉川支店の貸金庫を利用していた少なくともおよそ60人、被害額は時価にして10数億円にのぼるということです。
先月、警視庁が銀行からの刑事告発を受理して捜査を進めていました。
【動画】手口は
銀行の関係者によりますと、貸金庫を利用するためには、
▽銀行が管理する貸金庫が置かれている部屋の鍵と
▽顧客が持っている貸金庫そのものを開ける鍵の2つの鍵が必要ですが、顧客がなくした場合に備えて「予備鍵」と呼ばれるスペアキーを銀行が保管していました。
この「予備鍵」は顧客と銀行側の管理者の2つの印鑑で割り印を押した封筒に入れて、支店内で保管されていましたが、元行員はこの「予備鍵」の管理責任者で、無断で鍵を取り出していたとみられています。
また、捜査関係者によりますと、元行員は貸金庫から盗んだ金塊や現金などを複数の質店などに持ち込んでいましたが、それらについて「記録」を付けていたということです。
これらの「記録」も捜査の裏付けになったとみられます。
三菱UFJ銀行 「全行あげて再発防止策の策定と実行」
三菱UFJ銀行は元行員が逮捕されたことについて「お客様にご迷惑とご心配をおかけしており、改めて心よりおわび申し上げます。これまでと同様、警察の捜査に全面的に協力してまいります。今回の事案は信頼・信用という銀行ビジネスの根幹を揺るがすものであると重く受け止め、全行をあげて再発防止策の策定と実行に取り組み、お客様や関係する皆様からの信頼の回復に努めてまいります」とコメントしています。