マイコプラズマ肺炎はいえん 8年ねんぶり大だい流行りゅうこう 感染かんせん気付きづかず広ひろがるリスク

いったいどんな症状しょうじょうなのか？受診じゅしんで見逃みのがさないためには？

記事きじでは、医師いしの解説かいせつも紹介しょうかいしています。

40度ど近ちかい熱ねつ 最初さいしょの検査けんさは「陰性いんせい」も…

「夜中よなかでも吐はいてしまったり、熱ねつが長ながく続つづいたりしているのでつらそうで」

こう話はなすのは、東京とうきょう・港みなと区くにある小児しょうに科かのクリニックを訪おとずれた4歳さいの男の子おとこのこの母親ははおやです。

39度どの熱ねつが出でたため、4日にち前まえに診察しんさつを受うけましたが、検査けんさの結果けっかは陰性いんせいでした。

しかし、せきが続つづいたため22日にちに再度さいど、診察しんさつや検査けんさを受うけた結果けっか、マイコプラズマ肺炎はいえんと診断しんだんされました。

男の子おとこのこの母親ははおや

「発症はっしょうから数すう日にちたっても39度ど5分ぶんの発熱はつねつがあり解熱剤げねつざいを使つかってもまた上あがってしまいます。中学ちゅうがく1年生ねんせいの長男ちょうなんがいて、まもなく学校がっこうが始はじまるのでうつらないか心配しんぱいです」

クリニックを取材しゅざいしていると、別べつの方ほうからも話はなしを聞きくことができました。

小学しょうがく6年生ねんせいの娘むすめがかかった30代だいの母親ははおや

「熱ねつが40度ど近ちかく出でて、せきも心配しんぱいです。小学しょうがく4年生ねんせいの息子むすこも症状しょうじょうが出で始はじめたのでクリニックに連つれてきました。私わたし自身じしんも数すう日にち仕事しごとを休やすむことになりました。もう少もうすこしで夏休なつやすみも終おわるので早はやくよくなってほしい」

子こどもだけでなく大人おとなも…

さらに、家族かぞくの中なかで感染かんせんが広ひろがっているケースもありました。

自営じえい業ぎょうの40代だいの女性じょせいは先月せんげつ、小学しょうがく3年生ねんせいと中学ちゅうがく1年生ねんせいの息子むすこ2人にん、そして本人ほんにんがマイコプラズマ肺炎はいえんとなりました。

この日ひは、子こどもの新しん学期がっきが始はじまる前まえに登校とうこう許可きょか証しょうを医師いしに書かいてもらうために来院らいいんしていました。

家族かぞく3人にんが感染かんせんした女性じょせい

「最初さいしょに次男じなんが感染かんせんし、その後そのご、長男ちょうなんと私わたしも感染かんせんし、家庭かていみんながつらい思おもいをした。次男じなんの症状しょうじょうが最もっともひどく、嘔吐おうとと、せきや熱ねつが続つづき、夜よるも寝ねられずごはんも全まったく食たべられないほどだった。私わたしは感染かんせんから1か月かげつ以上いじょうたつが、胸むねのあたりが苦くるしいせきがずっと続つづいていて、普通ふつうの風邪かぜとは違ちがうと感かんじている」

風邪かぜと勘違かんちがい？「歩あるく肺炎はいえん」のゆえんは

このクリニックでは、7月つきは1週間しゅうかんあたりの患者かんじゃ数すうが3人にんから6人にんでしたが、今月こんげつは15人にんから18人にんと、3倍ばい以上いじょうに増加ぞうかしています。

院長いんちょうによりますと、マイコプラズマ肺炎はいえんは発熱はつねつと、乾かわいたせきが長ながく続つづくことが特徴とくちょうで、感染かんせんから発症はっしょうまでの潜伏せんぷく期間きかんが2週間しゅうかんから3週間しゅうかんと比較的ひかくてき長ながく、いつ感染かんせんしたかわかりづらいほか、症状しょうじょうが出でても風邪かぜだと思おもって出歩であるく患者かんじゃも多おおいため、「歩あるく肺炎はいえん」とも呼よばれています。

マイコプラズマ肺炎はいえんって？

マイコプラズマ肺炎はいえんとは？

「肺炎はいえんマイコプラズマ」という細菌さいきんに感染かんせんして起おこる呼吸こきゅう器きの感染かんせん症しょうです。

どんな人ひとがかかりやすい？

患者かんじゃは子こどもが多おおく、厚生こうせい労働ろうどう省しょうによりますと、例年れいねん、報告ほうこくされる患者かんじゃのおよそ80％は14歳さい以下いかだということです。

症状しょうじょうは？

症状しょうじょうは発熱はつねつや全身ぜんしんのけん怠けんたい感かん、頭痛ずつう、せき、皮膚ひふの発疹はっしんなどで中なかでもせきは熱ねつが下さがったあとも数すう週間しゅうかん続つづくのが特徴とくちょうです。

感染かんせん経路けいろは？

感染かんせん経路けいろは飛ひまつ感染かんせんと接触せっしょく感染かんせんが中心ちゅうしんで、学校がっこうや保育園ほいくえん、幼稚園ようちえんなど集団しゅうだんで過すごす場面ばめんで流行りゅうこうしやすいとされています。

治療ちりょうは？

専門せんもん家かによりますと、感染かんせんしても軽症けいしょうの場合ばあいは自然しぜんに回復かいふくするのを待まちますが、抗菌こうきん薬やくによる治療ちりょうを行おこなうこともあります。

悪化あっかするケースもある？

およそ10％のケースで肺炎はいえんを起おこし、重症じゅうしょう化かすると入院にゅういんが必要ひつようなことがあるほか、心筋しんきん炎えんや脳炎のうえんなどの合併症がっぺいしょうが起おきることもあるということです。

8年ねんぶりの感染かんせん拡大かくだい なぜ？

国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょのまとめによりますと、ことしはマイコプラズマ肺炎はいえんの患者かんじゃの報告ほうこくが急増きゅうぞうしていて、8月つき11日にちまでの1週間しゅうかんに全国ぜんこく500か所かしょの医療いりょう機関きかんから報告ほうこくされた患者かんじゃの数かずは1医療いりょう機関きかんあたり1.14人にんとなり、大だい流行りゅうこうとなった2016年ねん以来いらい、初はじめて「1人にん」を超こえました。

都道とどう府県ふけん別べつでみますと、多おおい順じゅんに

▼大阪おおさか府ふで3.72人にん

▼福井ふくい県けんで3.5人にん

▼岐阜ぎふ県けんが3.2人にん

▼東京とうきょう都とでは2.12人にん

▼愛知あいち県けんでは2.07人にん

などとなっています。

このことについて、日本にっぽんマイコプラズマ学会がっかいの理事りじで杏林きょうりん大学だいがくの皿谷さらや健けん教授きょうじゅに話はなしを聞ききました。

ーなぜ感染かんせんが急きゅう拡大かくだいしている？

「新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん対策たいさくが緩和かんわされたことで人々ひとびとの行動こうどうが変かわり、人ひとと人ひととの接触せっしょくが増ふえたことが要因よういんではないか。新型しんがたコロナの流行りゅうこうが始はじまってから、日本にっぽんでも世界せかいでもマイコプラズマ肺炎はいえんは激減げきげんしていて、当とう院いんでもここ3年ねんほどは一いち例れいも見みられなかったが、ことし6月つきくらいから一気いっきに増ふえた印象いんしょうだ」

ー治療ちりょうの注意ちゅうい点てんは？

「従来じゅうらいの抗菌こうきん薬やくを投与とうよして2日にちから3日にち以内いないに解熱げねつしない場合ばあいは、薬くすりが効ききにくい耐性たいせい菌きんを疑うたがってほかの薬くすりを投与とうよするが、子こどもの場合ばあいは副作用ふくさようの懸念けねんからほかの薬くすりを使つかいにくい。薬くすりの選択肢せんたくしが狭せばまってしまうので、耐性たいせい菌きんの割合わりあいが増ふえないか注視ちゅうしする必要ひつようがある」

―感染かんせん対策たいさくは？

「マスクの着用ちゃくようや手洗てあらいといった基本きほん的てきな感染かんせん対策たいさくが重要じゅうようだ。感染かんせんした当初とうしょは一般いっぱんのかぜと区別くべつしにくく、重症じゅうしょう化かする原因げんいんもはっきり分わかっていない。熱ねつの症状しょうじょうやせきが続つづくときは学校がっこうや仕事しごとを休やすんで、医療いりょう機関きかんを受診じゅしんして必要ひつような処置しょちを受うけてほしい。特とくに、ぐったりしていたり、呼吸こきゅうが荒あらかったりしたときには注意ちゅういが必要ひつようだ」

ー今後こんごの見通みとおしは？

「マイコプラズマ肺炎はいえんは学校がっこうなどの集団しゅうだん生活せいかつの中なかで広ひろがりやすいので、夏休なつやすみが終おわって集団しゅうだん生活せいかつが始はじまったら症状しょうじょうのある子こどもがいないか、特とくに注意ちゅういしてほしい。いまは子こどもの感染かんせんが目立めだつが、家庭かてい内ない感染かんせんなどで今後こんごは大人おとなの感染かんせん者しゃも増ふえてくると考かんがえられる」

診察しんさつ前まえに“せきの様子ようす、動画どうがに撮とって”

家族かぞくの中なかで感染かんせんが広ひろがるケースも相次あいついでいる「マイコプラズマ肺炎はいえん」。

冒頭ぼうとうで紹介しょうかいしたクリニックでは、患者かんじゃに対にたいし抗菌こうきん薬やくや解熱剤げねつざいなどを処方しょほうしていますが、通常つうじょうの抗菌こうきん薬やくが効ききづらい「耐性たいせい菌きん」が検出けんしゅつされるケースも増ふえているといいます。

耐性たいせい菌きんが広ひろがると、症状しょうじょうが長引ながびいたり、適切てきせつな抗菌こうきん薬やくが投与とうよされなければ感染かんせんが拡大かくだいしたりすることが懸念けねんされるということです。

感染かんせん対策たいさくとしては手洗てあらいや換気かんきなどが基本きほんとなりますが、熱ねつやせきの症状しょうじょうが出で始はじめた場合ばあいはマスクを着用ちゃくようするほか、かかりつけ医いなどに相談そうだんしてほしいとしています。

「クリニックばんびぃに」時田ときだ章あきら史し院長いんちょう

「夏休なつやすみが明あけて集団しゅうだん生活せいかつが始はじまると感染かんせんの拡大かくだいが懸念けねんされる。運動会うんどうかいや文化ぶんか祭さい、受験じゅけんのシーズンを迎むかえ、せきが長引ながびいたり重症じゅうしょう化かしたりすると、子こどももつらい思おもいをすることになってしまうので、早はやめの診断しんだんと治療ちりょうが重要じゅうようだ。心配しんぱいなせきが出でているときには、その様子ようすの動画どうがを撮影さつえいし、診察しんさつの時ときに医師いしに見みせると診断しんだんがスムーズになる」