気象庁は進路によっては28日昼ごろ、鹿児島県に暴風、高波、高潮の特別警報を発表する可能性があり、鹿児島県と宮崎県では今後、大雨の特別警報の可能性もあるとして、最大級の警戒を呼びかけています。
台風本体から離れた西日本や東日本でも大雨になっていて、雨や風が強まる前に安全を確保するようにして下さい
台風10号はこの時間、鹿児島県の奄美市の北の海上にあって奄美大島などが暴風域に入っています。
鹿児島県の屋久島町尾之間では午前7時前に30.5メートルの最大瞬間風速を観測しました。
また、東海や四国など台風から離れた地域でも暖かく湿った空気が流れ込み雨が強まっています。
また愛知県新城市では昨夜10時40分までの48時間に降った雨の量が304.5ミリに達し、8月としては統計を取り始めた2003年以降最も多い記録的な大雨となっています。
これまでに降った雨で静岡県では土砂災害の危険性が非常に高くなり、土砂災害警戒情報が発表されている地域があります。
台風情報 データマップ
【風の見通し】鹿児島県で特別警報を発表する可能性
今後の見通しです。
台風はさらに発達し、29日にかけて、非常に強い勢力のまま九州へと近づき、その後、上陸するおそれがあります。
気象庁と国土交通省はけさ会見を開き、鹿児島県では進路によっては昼ごろにも暴風、高波、高潮の特別警報を発表する可能性があるとして、最大級の警戒を呼びかけています。
28日の最大風速は、
▽奄美地方と九州南部で50メートルと猛烈な風が吹くほか、
▽九州北部で20メートル、
▽四国で18メートル、
最大瞬間風速は、
▽奄美地方と九州南部で70メートルと一部の住宅が倒壊するような猛烈な風が吹くと予想されているほか、
▽九州北部で30メートル、
▽四国で25メートルと予想されています。
西日本ではその後も猛烈な風が吹くおそれがあります。
【大雨の見通し】鹿児島 宮崎で大雨の特別警報の可能性
また、九州南部と奄美地方を中心に記録的な大雨となるおそれがあり、気象庁は鹿児島県と宮崎県では今後、大雨の特別警報の可能性もあるとして、厳重な警戒を呼びかけています。
台風から離れた東日本や西日本でも29日にかけて大雨となる見込みです。
▽奄美地方を含む鹿児島県や宮崎県ではあすにかけて線状降水帯が発生し、災害発生の危険度が急激に高まるおそれがあります。
29日朝までの24時間に降る雨の量は、いずれも多いところで
▽九州南部で500ミリ、
▽奄美地方と九州北部で300ミリ、
▽四国で250ミリ、
▽東海で200ミリ、
▽近畿で120ミリ、
その後、30日朝までの24時間には
▽九州南部で600ミリ、
▽九州北部で500ミリ、
▽四国で400ミリ、
▽東海で300ミリ、
▽近畿で200ミリ、
▽奄美地方と中国地方で150ミリと予想されています。
さらに、31日朝までの24時間には
▽四国で400ミリ、
▽九州北部と近畿、東海で300ミリ、
▽中国地方で200ミリ、
▽九州南部で150ミリの雨が降る見込みです。
【海上の見通し】猛烈なしけに
海上は、奄美地方と西日本を中心に29日にかけてうねりを伴って猛烈なしけとなるおそれがあります。
気象庁は、暴風や高波、高潮のほか大雨による土砂災害、低い土地の浸水、川の氾濫に厳重に警戒するよう呼びかけています。
今回の台風は非常に強い勢力で接近するため、風や雨が急激に強まって災害の危険度が高まるほか、台風から離れた場所でも暖かく湿った空気の影響で大雨のおそれがあります。
不要不急の外出を控え、気象の情報や自治体から発表される避難に関する情報など最新の情報に注意し、早めに安全な場所へ避難するようにしてください。
台風の特別警報とは
台風の特別警報は数十年に1度しかないような勢力で日本に接近すると予想される際に発表されます。発表の基準は中心の気圧が930ヘクトパスカル以下、または、最大風速が50メートル以上に達する台風などの接近が予想される場合で、暴風、高潮、波浪を対象に発表されます。
沖縄や奄美、それに小笠原諸島は、中心の気圧が910ヘクトパスカル以下、または最大風速が60メートル以上となっています。
【大雨特別警報との違い】
台風の特別警報は状況が悪化する「前」に出されます。台風の中心が対象とする地域に達するおよそ12時間前に発表されます。
一方、「大雨特別警報」はすでに大雨が降り状況が極めて悪化した状態に発表されます。大雨特別警報の見通しが出されていない地域が安全だということでは決してありません。
【特別警報待たず早めの避難を】
台風が接近すると暴風によって建物が倒壊するおそれもあるほか、大雨や高潮で建物が浸水する被害が出るおそれもあります。
崖や川、海岸の近くから離れ、頑丈な建物に避難することも重要です。暴風雨の中で移動することは困難です。
雨や風が強くなる前に危険な場所から離れ、避難してください。そして特別警報が発表されていない地域でも、特別警報を待たず、海岸や川の近く、周囲より低い土地、それに崖の近くに住む人は早めの避難を心がけてください。
政府 「特定災害対策本部」を設置
台風10号の接近に伴い、気象庁が鹿児島県と宮崎県に大雨の特別警報を出す可能性があるなどと発表したことを受けて、政府は、災害対策基本法に基づき、松村防災担当大臣を本部長とする「特定災害対策本部」を設置しました。
午前9時から会合を開き、今後の対応を協議することにしています。
気象庁「鹿児島県に暴風 波浪 高潮の特別警報を発表する可能性」
台風10号の今後の見通しについて気象庁と国土交通省が合同で開いた会見で、気象庁の杉本悟史予報課長は「鹿児島県にきょう昼ごろ暴風、波浪、高潮の特別警報を発表する可能性がある。これまでに経験したことがないような暴風、高波、高潮が予想され、最大級の警戒が必要だ。また、九州南部では記録的な大雨となり、大雨の特別警報を発表する可能性がある。河川の増水や氾濫、土砂災害、低い土地の浸水にも最大級の警戒が必要だ」と呼びかけました。
「暴風が吹き始める前に避難することが重要」
また、気象庁は、「非常に強い台風10号は、29日にかけて九州南部に非常に強い勢力で接近する見込みで、その後、台風は九州に上陸するおそれがある。一部の住宅が倒壊するような猛烈な風が吹く見込みで、暴風が吹き始める前に頑丈な建物の中に移動するとともに屋内では窓から離れてほしい。高潮や洪水の浸水想定区域や土砂災害警戒区域などでは、暴風が吹き始める前に避難することが重要だ。特別警報が発表されない場合でも記録的な大雨や暴風、高波、高潮となるおそれがあり、自分の命や大切な人の命を守るため、地元の市町村が発令する避難情報に従って早めに身の安全を確保してほしい」と呼びかけました。
「警報 実況の経過を見つつ適切なタイミングで発表」
そして気象庁は、「警報や注意報の発表の状況で注目してもらいたいのは、九州南部から奄美の付近になる。すでに暴風や高潮、波浪警報が発表されている。雨に関しても、宮崎県などですでに12時間で100ミリ弱くらい雨が降っている」と述べました。
また、「衛星画像を見ると台風の目がはっきりとしていて、きのうに比べて発達してきた。現在は、九州の南、奄美大島の北東付近をゆっくりとしたスピードで北上している。雨は台風の周辺や九州の東岸で強まっていて、九州南部ではあす午前6時までの24時間に多いところで500ミリ、その後の24時間に600ミリの雨が降ると考えていて、鹿児島県と宮崎県では大雨の特別警報の可能性が出てきた。実況の経過を見つつ適切なタイミングで発表していきたい」と述べました。
「同じ場所で長時間 大雨となることが考えられる」
気象庁は、「台風はきょう午前3時の時点で、非常に強い勢力で中心気圧が935ヘクトパスカル、最大風速50メートルとなっている。今後、北上していく段階で若干強くなり、中心気圧が925ヘクトパスカルになると予想している。その状態で九州南部に接近し、途中で東に向きを変えて九州に上陸すると予想している」と述べました。
また、気象庁は、「台風の特徴として動きがゆっくりであることが挙げられる。そのため、九州南部や奄美地方は暴風の吹く期間が長く、九州南部ではあさっても一部、暴風になる見込みだ。徐々に台風が北上すると九州南部だけでなく九州北部や四国、中国地方、近畿も影響を受けるようになる。九州北部に接近しても台風の速度は遅い状況で暴風や高波の警報を発表する期間が長引くおそれがある。また、ずっと同じ風向きで暖かく湿った空気が流れ込むため地形の影響などで上昇流が発生し、同じ場所で長い時間、大雨となることが考えられ最大級の警戒が必要になる」と述べました。
国土交通省「早め早めの避難行動を」
台風10号の今後の見通しについて気象庁と国土交通省が合同で開いた会見で、国土交通省は、「河川では現在、ダムの事前放流や水門の閉鎖など、氾濫を防止するための事前対策を進めているが、台風の接近に伴って長期的な大雨や集中的な豪雨が重なると、氾濫の危険性が高まる。早め早めの避難行動をしてほしい。雨や風が強くなったり、暗くなったりしてからの移動は危険を伴うため、早めの避難行動をお願いする。今後、台風の接近が予想される地域の人は、事前の準備が大事だ。今のうちにハザードマップなどの確認をして、停電や断水なども視野に準備を進めてほしい。運休や欠航、道路の通行止めの可能性があり各事業者のウェブサイトなどで最新の情報を確認してほしい。特に、外出の予定がある人は十分な時間的余裕を持った行動をお願いしたい」と呼びかけました。
専門家「土砂災害に最高レベルの警戒を」
台風10号の影響で、九州では暴風に加えて大雨が予想されていることについて、土砂災害の専門家は、今月8日の日向灘を震源とする地震で斜面が崩れやすくなっているとして、「土砂災害に最高レベルの警戒をしてほしい」と呼びかけています。
土砂災害に詳しい鹿児島大学の地頭薗隆名誉教授は、台風10号に伴う大雨で地盤が緩むだけでなく、暴風で木が揺さぶられ斜面に亀裂が入ることもあるため、通常の大雨よりも土砂災害が起きやすくなると指摘しています。
また、九州では今月8日に起きた日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震で斜面に亀裂が入り、以前より崩れやすくなっている場所も多いとみられるとして、これまで以上に注意が必要だとしています。
地頭薗名誉教授は「避難の判断の際には過去の経験にとらわれないでほしい。これまで土砂災害が起きていないところは、斜面の土の層が蓄積していてかえって危険だ。土砂災害に対して最高レベルの警戒をしてほしい」と話しています。
さらに、今回はかなりの雨量が予想されているため、斜面の表面が崩れる「表層崩壊」だけでなく、岩盤深くから崩れる「深層崩壊」が起きるリスクも高いとしています。
九州では過去に▽火山性の地質の場所で400ミリ程度、▽九州山地のような山あいの地域で800ミリ程度の雨量で「深層崩壊」が起きたということです。
時間がたってから斜面が崩れたケースもあるということで、地頭薗名誉教授は、「雨の降り方によっては大規模な崩壊にも警戒が必要だ。雨がやんだあとも、しばらく警戒を続けることも念頭においてほしい」と話しています。
【気象予報士 解説】
動画は、檜山靖洋 気象予報士の解説です。
※8月27日「おはよう日本」で放送。
※動画は2分24秒 データ放送ではご覧になれません。