【全国調査】“知らぬ間に火葬” 死後事務トラブル 5年で14件 - Easy News

1人にん暮くらしの人ひとの増加ぞうかや家族かぞくのつながりの希薄きはく化かを背景はいけいに、亡なくなったあと、遺体いたいを引き取ひきとって火葬かそうする親族しんぞくがいない人ひとが増ふえています。

「引き取り手ひきとりてがない遺体いたい」は自治体じちたいが火葬かそうなどを行おこないますが、全国ぜんこく109の自治体じちたいを対象たいしょうにNHKが調査ちょうさしたところ、火葬かそう後ごに親族しんぞくが現あらわれ苦情くじょうを受うけるなどのトラブルが過去かこ5年ねんあまりで少すくなくとも14件けん起おきていたことがわかりました。

アンケート調査ちょうさから見みえてきた現状げんじょうと、取材しゅざいした各地かくちの実情じつじょうを詳くわしくお伝おつたえします。

亡なくなったあと遺体いたいを引き取ひきとって火葬かそうする親族しんぞくなどがいない人ひとについては、死亡しぼうした場所ばしょの自治体じちたいが火葬かそうすると、法律ほうりつで定さだめられています。

NHKは先月せんげつ、こうした「引き取り手ひきとりてのない遺体いたい」への対応たいおうをめぐり、全国ぜんこくの県庁けんちょう所在地しょざいちの市しや政令市せいれいし、中核ちゅうかく市し、それに東京とうきょう23区くの109自治体じちたいを対象たいしょうにアンケート調査ちょうさを行おこない、すべての自治体じちたいから回答かいとうを得えました。

調査ちょうさでは、主おもに4つの項目こうもくについて尋たずねました。

順じゅんに詳くわしくみていきます。

（冒頭ぼうとうの目次もくじから読よみたい項目こうもくに直接ちょくせつ飛とべます）

1.「引き取り手ひきとりてのない死亡しぼう人じん」火葬かそう人数にんずう

調査ちょうさでは、亡なくなったあと「遺体いたいを引き取ひきとる家族かぞくや親族しんぞくがいない」として、墓地ぼち埋葬まいそう法ほうや生活せいかつ保護ほご法ほうなどに基もとづき、自治体じちたいが火葬かそうした人数にんずうを年度ねんどごとに聞ききました。

その結果けっか、2023年度ねんどは99の自治体じちたいで少すくなくとも1万まん2122人にんが「引き取り手ひきとりてがない」として火葬かそう※されていました。

※大阪おおさか市しはいずれもその年度ねんどに合祀ごうしされた数かずを集計しゅうけいしています。

生活せいかつ保護ほごを取り扱とりあつかう部署ぶしょで引き取り手ひきとりてのない遺体いたいの火葬かそうの数かずを集計しゅうけいしていない自治体じちたいもあり、実際じっさいの人数にんずうはこれより多おおいと考かんがえられます。

自治体じちたい別べつにみますと、

▼名古屋なごや市し 1343人にん

▼神戸こうべ市し 634人にん

▼千葉ちば市し 539人にん

▼福岡ふくおか市し 293人にん

▼広島ひろしま市し 291人にん

▼東京とうきょう・足立あだち区く 158人にん

▼札幌さっぽろ市し 141人にん

▼高松たかまつ市し 133人にん

▼新潟にいがた市し 102人にん

▼福島ふくしま県けんいわき市し 87人にん

などとなっています（速報そくほう値ちを含ふくむ）。

また、比較ひかく可能かのうな10年間ねんかん分ぶんの記録きろくが残のこっている62自治体じちたいでみると、

▼2014年度ねんど 4422人にん

▼2015年度ねんど 4695人にん

▼2016年度ねんど 5034人にん

▼2017年度ねんど 5380人にん

▼2018年度ねんど 5945人にん

▼2019年度ねんど 6523人にん

▼2020年度ねんど 7180人にん

▼2021年度ねんど 7447人にん

▼2022年度ねんど 8479人にん

▼2023年度ねんど 9365人にん

となっていて、この10年ねんで倍ばい以上いじょうに増加ぞうかしていました。

これに伴ともない、現場げんばの“事務じむ負担ふたん”が増ふえている実態じったいについて、多おおくの回答かいとうが寄よせられました。

「身寄みよりのない遺体いたい案件あんけんが年々ねんねん増加ぞうかしており、職員しょくいんが対応たいおうする事務じむ量りょうも増ふえる一方いっぽうである」（四国しこくの自治体じちたい）

「相続そうぞく人じん調査ちょうさを行おこなう場合ばあい、戸籍こせき等とうの請求せいきゅうに時間じかんがかかるため事務じむ遂行すいこうに多大ただいな時間じかんを要ようしている。身寄みよりのない遺体いたいの発生はっせい件数けんすうも年々ねんねん増加ぞうかしているため、職員しょくいんの負担ふたん増加ぞうかが予想よそうされる」（岡山おかやま市し）

「相続そうぞく人じんを特定とくていしても、連絡れんらくがとれないことが多おおく、連絡れんらくがとれても、『疎遠そえんであるため』『高齢こうれいであるため』といった理由りゆうで遺骨いこつや遺留いりゅう品ひんの引取とりをされないケースが増ふえてきている」（関西かんさいの自治体じちたい）

2.公費こうひ負担ふたんの推移すいい

引き取り手ひきとりてのない死亡しぼう人じんに関にかんする死後しご事務じむの“公費こうひ負担ふたん”についても聞ききました。

上のぼっていました。

税金ぜいきんによる“公費こうひ負担ふたん”は年々ねんねん増加ぞうかしていて、自治体じちたいからは国くにによる支援しえんや負担ふたん軽減けいげん策さくの必要ひつよう性せいを求もとめる回答かいとうが寄よせられました。

「『引き取り手ひきとりてのいない死亡しぼう人じん』に係かかる費用ひようは年々ねんねん増加ぞうかしており、財政ざいせいを圧迫あっぱくしている状況じょうきょうです。国庫こっこ負担ふたんを検討けんとうしていただきたい」（さいたま市し）

「親族しんぞく調査ちょうさの間まは遺体いたいを葬儀そうぎ会社かいしゃ等とうで保管ほかんすることになるので今後こんご費用ひよう面めんで心配しんぱいがある」（愛知あいち県けん一宮いちのみや市し）

「自治体じちたいにおける費用ひよう負担ふたんや事務じむにかかる人的じんてき体制たいせいなどについて、具体ぐたい的てき方策ほうさくを検討けんとうすべき時期じきに来きているのではないか」（千葉ちば市し）

3.死後しご事務じむめぐる“トラブル”

死後しご事務じむをめぐり火葬かそう後ご、親族しんぞくなどの対応たいおうに苦慮くりょしたケースも調査ちょうさしました。

具体ぐたい的てきには「引き取り手ひきとりてがない」として火葬かそうしたあとに親族しんぞくが現あらわれたり、親族しんぞくなどに遺骨いこつを返還へんかんできず、苦情くじょうを受うけたり、対応たいおうに苦慮くりょしたケースの有無うむと、その件数けんすうを聞ききました。

その結果けっか、火葬かそう後ごに親族しんぞくなど、引き取り手ひきとりてが現あらわれ、苦情くじょうを受うけたり対応たいおうに苦慮くりょしたケースが、「ある」と回答かいとうしたのは11の自治体じちたいで14件けんでした（2019年ねん以降いこう）。

また、返還へんかんを求もとめる親族しんぞくなどに遺骨いこつを返かえせなかったケースで「ある」と回答かいとうしたのは3自治体じちたいで4件けんでした（2017年ねん以降いこう）。

このほかには、連絡れんらくの行いき違ちがいで、知しらないうちに父親ちちおやが火葬かそうされたり、▽火葬かそう後ごよく調しらべると妹いもうとがいたことが分わかったケースや、火葬かそう後ごに現あらわれた親族しんぞくと葬儀そうぎ費用ひようや遺留いりゅう金品きんぴんをめぐってトラブルになったケースも複数ふくすうありました。

火葬かそうをめぐっては、統一とういつ的てきなルールがなく、時間じかんや予算よさんに限かぎりがある中なか、対応たいおうに悩なやむ声こえが寄よせられました。

「本来ほんらいであれば親族しんぞくの調査ちょうさ後ごに行おこなうのが望のぞましいが、調査ちょうさを完全かんぜんに行おこなう時間じかん的てき猶予ゆうよが現実げんじつ的てきにはないことから、火葬かそうは先さきに行いってしまうことがほとんどである」（いわき市し）

「保管ほかん等とうの問題もんだいから、十分じゅうぶんな親族しんぞく調査ちょうさ期間きかんを確保かくほできないうちに火葬かそうしなければならず、火葬かそう及および調査ちょうさの結果けっか、親族しんぞくが判明はんめいするケースがあるため、親族しんぞくがいない、または、引き取り手ひきとりてがいないと判断はんだんする明確めいかくな基準きじゅんを示しめしてほしい」（福島ふくしま市し）

こうしたケースについて、件数けんすうや発生はっせい年ねんは不明ふめいなものの、「過去かこにあった」とした自治体じちたいも複数ふくすうあったほか、その有無うむについて「把握はあくしていない」とした自治体じちたいも3割わりあり、実際じっさいにはさらに多おおい可能かのう性せいがあります。

4.“統一とういつルール”の必要ひつよう性せい

死後しご事務じむについては火葬かそうだけでなく遺骨いこつの保管ほかんや親族しんぞく調査ちょうさの範囲はんいなどについても統一とういつ的てきなルールがなく、その必要ひつよう性せいについてどう考かんがえているかも調査ちょうさしました。

その結果けっか、109の自治体じちたいのうちしました。

一方いっぽう、「ルールは必要ひつようない」とした自治体じちたいもあったほか、統一とういつ的てきなルールは必要ひつようとしながらも、「現場げんばの実情じつじょうを踏ふまえた運用うんよう可能かのうなルールの整備せいびを望のぞむ」といった声こえもありました。

統一とういつルールを求もとめる理由りゆうについては以下いかのような声こえが寄よせられました。

「死亡しぼう人じんの遺品いひん等とうの預あずかりを依頼いらいされても、具体ぐたい的てきにどのように扱あつかうのか、物品ぶっぴんごとの明確めいかくな規定きていが示しめされていないため、扱あつかいに苦慮くりょする場合ばあいがある」（東京とうきょうの自治体じちたい）

「担当たんとう者しゃの事務じむが煩雑はんざつであり、負担ふたんが大おおきいため、職員しょくいんが安心あんしんして事務じむを遂行すいこうするためにも国くにによる統一とういつ的てきなルールの整備せいびが望のぞまれる」（関西かんさいの自治体じちたい）

また関連かんれんする法ほうの整備せいびを求もとめる声こえも複数ふくすうありました。

「引き取り手ひきとりての無ない遺体いたいに行政ぎょうせいが包括ほうかつ的てきに対応たいおうできるような法律ほうりつの整備せいびを行おこなう必要ひつよう性せいがある。対応たいおうする法律ほうりつと所管しょかんする行政ぎょうせい体系たいけいがコンパクトになることで、より迅速じんそくかつ適切てきせつな対応たいおうが実施じっしできるようになると考かんがえます」（名古屋なごや市し）

「既存きそんの法ほう制度せいどは家族かぞく等とうによる葬祭そうさいを前提ぜんていにし、それができない場合ばあいは行政ぎょうせいによる火葬かそうを行おこなう規定きていとなっていますが、社会しゃかい情勢じょうせいの変化へんかに対応たいおうした仕組しくみの検討けんとうがなされることを期待きたいする」（神戸こうべ市し）

終おわり活かつなど“生前せいぜんサポート”制度せいど拡充かくじゅう求もとめる声こえも

このほか、生いきている間まにできる死後しごの手続てつづきについてのルール整備せいびや支援しえん制度せいどの拡充かくじゅうを求もとめる声こえも複数ふくすうありました。

「身寄みよりのない方ほうが今後こんごさらに増加ぞうかしてくると考かんがえられ、死亡しぼう後ごの火葬かそうや遺骨いこつ、財産ざいさん等とうについて生前せいぜんに整理せいりできるルール作づくりの必要ひつよう性せいを感かんじる」（東京とうきょうの自治体じちたい）

「葬儀そうぎや身の回みのまわりの片かたづけについて、市民しみんが生前せいぜんに自身じしんの意思いしで決きめられることが望のぞましい。死後しご事務じむ委任いにん契約けいやく等とうの周知しゅうちや終おわり活かつがより簡易かんいにできるような、制度せいどや法ほう整備せいびが必要ひつよう」（関西かんさいの自治体じちたい）

ここまで見みてきたアンケートの結果けっか。

現場げんばでは何なにが起おきているのか、また背景はいけいにどのような変化へんかがあるのでしょうか。

各地かくちで何なにが？「身寄みよりなし」と火葬かそうし謝罪しゃざいのケースも

アンケートでも明あきらかになったように、実際じっさいには、親族しんぞくがいるのに「身寄みよりがない」として、自治体じちたいによって火葬かそうや納骨のうこつされ、トラブルになるケースがいま各地かくちで発覚はっかくしています。

京都きょうと市し伏見ふしみ区くで1人にん暮くらしをしていた当時とうじ73歳さいの今西いまにし一はじめさんはおととし1月つき、心筋しんきん梗塞こうそくで病院びょういんに運はこばれて亡なくなり、京都きょうと市しは遺体いたいの引き取り手ひきとりてを調しらべた結果けっか「身寄みよりがない」と判断はんだんし、8日にち後ごに火葬かそう、およそ3週間しゅうかん後ごに無縁むえん墓地ぼちに納骨のうこつしました。

ところが、その後そのご、市内しないに弟おとうと夫婦ふうふが住すんでいたことがわかりました。

市しは、ほかの自治体じちたいにある戸籍こせきまでたどれば親族しんぞくがいることを確認かくにんできたものの調査ちょうさが不十分ふじゅうぶんだったとして、ことし3月つき、弟おとうと夫婦ふうふに経緯けいいを説明せつめいした上うえで謝罪しゃざいしました。

京都きょうと市しでは、当時とうじは引き取り手ひきとりてのない遺体いたいについてのマニュアルが無なかったものの、去年きょねん夏なつに作成さくせいし、現在げんざいは法定ほうてい相続そうぞく人じんの範囲はんい内ないで戸籍こせきを調しらべたうえで、原則げんそく、引き取り手ひきとりてがないことを確認かくにんしてから火葬かそうすることにしているということです。

一方いっぽう、弟おとうと夫妻ふさいは京都きょうと市しから請求せいきゅうされた火葬かそうにかかった費用ひようなどおよそ17万まん円えんを市しに納おさめ、改あらためて今西いまにしさんの納骨のうこつを終おえたということです。

今回こんかいのことを受うけ、弟おとうとの今西いまにし恵一けいいちさんは「自分じぶんたちで何なんらかの形かたちで安否あんぴ確認かくにんができていればという後悔こうかいもありますが、近ちかくに親族しんぞくがいながら何なにの連絡れんらくも無なかったという点てんは兄あにの死しによって少すこしでも改善かいぜんできたらいいと思おもいます。兄あににはこれからの市しの対応たいおうを草葉の陰くさばのかげから見守みまもっていてほしい」と話はなしていました。

「国くにによる統一とういつ的てきなルールの整備せいびが必要ひつようだ」

今いまの法律ほうりつでは自治体じちたいが引き取り手ひきとりてのない遺体いたいと判断はんだんする際さいに、親族しんぞくがいないかを調しらべる範囲はんいや火葬かそうまでの期限きげんについての国くにの統一とういつした規定きていはなく、運用うんようはそれぞれの自治体じちたいの判断はんだんに委ゆだねられています。

多おおくの自治体じちたいでは、戸籍こせきなどをたどって親族しんぞくを捜さがしていますが、郵送ゆうそうで連絡れんらくしても返信へんしんがなかったり、引ひき取とりを断ことわられたりすることで調査ちょうさには時間じかんがかかることが指摘してきされています。

親族しんぞくと言いっても、配偶はいぐう者しゃや子こども、親おや、きょうだい、おい・めいなど亡なくなった人ひとのどの範囲はんいまで調しらべればいいか明確めいかくに定さだめられているものはなく引き取ひきとりの意向いこうを確認かくにんするのに数すうか月かげつ以上いじょうかかる場合ばあいもあるということです。

また、その間そのかんは遺体いたいを葬儀そうぎ会社かいしゃの冷蔵庫れいぞうこなどで保管ほかんする必要ひつようがあり、その分ぶん、費用ひようがかさんだり、遺体いたいの状態じょうたいの悪化あっかにつながったりするため、いつまでも保管ほかんはできないという問題もんだいもあります。

何なにもルールがない中なかでは、自治体じちたいは、親族しんぞくをどこまで調しらべ、いつ火葬かそうするかそのつど判断はんだんすることになり、今回こんかいのアンケートではこうした対応たいおうについて、自治体じちたいで独自どくじに定さだめたルールやマニュアルが「ある」と答こたえたのは38自治体じちたいで34％あまりでした。

一方いっぽうで、親族しんぞく調査ちょうさの範囲はんいや火葬かそうの時期じきなどを尋たずねた設問せつもんでは、「病院びょういんや警察けいさつから遺体いたいを引き取ひきとった後のちすぐに火葬かそうする」と回答かいとうした自治体じちたいも少すくなくありませんでした。こうした状況じょうきょうを背景はいけいに、アンケートでは9割わりを超こえる自治体じちたいが「国くにによる統一とういつ的てきなルールの整備せいびが必要ひつようだ」と答こたえています。

“知しらぬ間まに火葬かそう”を防ふせぐため

埼玉さいたま県けん朝霞あさか市しは、市しが火葬かそうを行おこなった後のち、遺体いたいを引き取ひきとることができたという親族しんぞくからの申し出もうしでがあるのを防ふせぐため、県けんが示しめすマニュアルに沿そって、担当たんとうの職員しょくいんが戸籍こせきを3親等しんとうまで調査ちょうさし、遺体いたいの引き取ひきとりや火葬かそうできる親族しんぞくがいないか1件けん1件けん確認かくにんしています。

市しは調査ちょうさを行おこなっている間ま、契約けいやくする葬儀そうぎ業者ぎょうしゃに遺体いたいの安置あんちを依頼いらいしていますが、長ながいケースだと期間きかんが半年はんとしに及およぶこともあるということです。

朝霞あさか市し生活せいかつ援護えんご課かの望月もちづき三枝子みえこ課長かちょうは「引き取り手ひきとりてのない遺体いたいは今後こんごも増ふえると見込みこまれるので統一とういつ的てきなルール作づくりや費用ひよう負担ふたんなどについて、国くにに対応たいおうしてもらいたい」と話はなしていました。

国くにの見解けんかいは

親族しんぞくがいるのに「身寄みよりがない」として火葬かそうされてしまう事態じたいが起おきていることについて、厚生こうせい労働ろうどう省しょうは次つぎのように回答かいとうしました。

厚生こうせい労働ろうどう省しょう

「身元みもとや親族しんぞくの有無うむなどについては一定いっていの確認かくにんを行おこなうことが前提ぜんていで各かく自治体じちたいでは、亡なくなった人ひとの親族しんぞくとの関係かんけい、日常にちじょう生活せいかつにおける友人ゆうじん・知人ちじんや地域ちいき社会しゃかい・職場しょくばとの関係かんけいなどの個別こべつ事案じあんを取り巻とりまくさまざまな状況じょうきょうやそれぞれの自治体じちたいの定さだめる事務じむ手続てつづきなどに応おうじて対応たいおういただいているものと考かんがえている」

また、ルールの策定さくていについては「自治体じちたいにおいて、身寄みよりのない遺体いたいの取り扱とりあつかいに苦慮くりょするケースがあることから実態じったい調査ちょうさを行おこなうこととしており、調査ちょうさ結果けっかも踏ふまえ、対応たいおうを検討けんとうしたい」としています。

増ふえる遺体いたいに警察けいさつでも

一方いっぽう、引き取り手ひきとりてがない遺体いたいの取り扱とりあつかいが増ふえる中なか、警察けいさつも対応たいおうを迫せまられています。

埼玉さいたま県けん警察けいさつ本部ほんぶによりますと病院びょういん以外いがいなどで人ひとが死亡しぼうした場合ばあい事件じけん性せいがないかを確認かくにんする「検視けんし」などの件数けんすうは去年きょねん1年間ねんかんに1万まん1905件けんで、5年ねん前まえ（9847件けん）の1.2倍ばいに増ふえているということです。

このうちおよそ4分ぶんの1にあたる3052件けんは、1人にん暮くらしの高齢こうれい者しゃで、引き取り手ひきとりてを探さがすのに時間じかんがかかり一定いっていの期間きかん、警察けいさつ署しょで安置あんちするケースが増ふえているということです。

このため警察けいさつは今年度こんねんど、遺体いたいを安置あんちする設備せつびを拡充かくじゅうする費用ひようとして12年ねんぶりに400万まん円えんを計上けいじょうするなど、対応たいおうを迫せまられています。

埼玉さいたま県けん警察けいさつ本部ほんぶ捜査そうさ一いち課か検視けんし調査ちょうさ室しつの竹崎たけざき慎吾しんご室長しつちょうは「遺体いたいはこれからも増加ぞうかしていくと思おもうが、事件じけんの見落みおとしを防ふせぎ死者ししゃの尊厳そんげんを守まもるためにも自治体じちたいと連携れんけいしながらできることをしっかりやっていきたい」と話はなしています。

「火葬かそう待まち9日間にちかん」費用ひよう増ぞうも

亡なくなる人ひとの数かずが増加ぞうかする中なかで、家族かぞくなどを火葬かそうするまでの期間きかんがこれまでより長ながくなり、費用ひようがかさむケースも出でています。

千葉ちば県けん流山ながれやま市しに住すむ大塚おおつか信博のぶひろさん（62）は、去年きょねん4月つき、88歳さいの母親ははおやを亡なくしました。

流山ながれやま市しを含ふくむ3つの市しは隣接りんせつする柏かしわ市しに公営こうえいの火葬かそう場じょうを運営うんえいしていて、大塚おおつかさんが葬儀そうぎ会社かいしゃに依頼いらいしたところこの火葬かそう場じょうが混こんでいて最短さいたんで9日にち待まちになると伝つたえられたといいます。

葬儀そうぎまでの間ま、母親ははおやの遺体いたいを自宅じたくに安置あんちすることになり、冷房れいぼうを一いち日にち中ちゅうつけた上うえで、葬儀そうぎ会社かいしゃの職員しょくいんに冷却れいきゃく用ようのドライアイスを毎日まいにち交換こうかんしに来きてもらう対応たいおうを依頼いらいしました。

そのため費用ひようがかさみ、すぐに火葬かそうできる場合ばあいと比くらべると、8万まん円えん以上いじょう多おおくかかったということです。

大塚おおつかさんは「まさか1週間しゅうかん以上いじょうになるとは思おもってもみませんでした。簡単かんたんにどうにかできる問題もんだいではないと思おもいますが、火葬かそうまでが長ながすぎると家族かぞくも落ち着おちつかないところがありますし、本人ほんにんにもかわいそうな気きがしてしまいます」と話はなしていました。

担当たんとうした柏かしわ市しの葬儀そうぎ会社かいしゃによりますと、対応たいおうする遺体いたいの数かずが増ふえる中なかで、「火葬かそう待まち」をするケースが増ふえる傾向けいこうにあるということでことしの1月つきには、最もっとも長ながくて11日間にちかん待まつケースもあったということです。

専門せんもん家か「国くにで議論ぎろんしモデルを示しめして」

葬送そうそうの成り立なりたちに詳くわしい国立こくりつ歴史れきし民俗みんぞく博物館はくぶつかんの山田やまだ慎也しんや教授きょうじゅは次つぎのように指摘してきしています。

国立こくりつ歴史れきし民俗みんぞく博物館はくぶつかん山田やまだ慎也しんや教授きょうじゅ

「どこまで親族しんぞくを捜さがすか現状げんじょうでは一切いっさい規定きていがない中なかで、対応たいおうは自治体じちたいごとに異ことなり、社会しゃかい的てきな合意ごういもできていないため、不幸ふこうな状況じょうきょうが生うまれている。ルールがないままでは、死後しごどう取り扱とりあつかわれるかわからない不安ふあんや、残のこされる人ひとたちが追悼ついとうの機会きかいを失うしなうことにもつながる。故人こじんをきちんと尊厳そんげんをもって送おくるという考かんがえを前提ぜんていに、親族しんぞく調査ちょうさをしてどの段階だんかいであれば火葬かそうしてもいいか国くにレベルで議論ぎろんをしてモデルを示しめすことで、自治体じちたいは対応たいおうが可能かのうになる」

その上うえで、求もとめられる対策たいさくについては、「自治体じちたいによっては、生前せいぜんから終おわり活かつ情報じょうほうや緊急きんきゅう連絡れんらく先さきなどを事前じぜんに登録とうろくする取り組とりくみを進すすめるところがありこうした情報じょうほうを社会しゃかい的てきに共有きょうゆう化かする仕組しくみや、地域ちいきや福祉ふくしの枠組わくぐみの中なかに寺院じいんや葬儀そうぎ業者ぎょうしゃなども加くわえるなどしてスムーズに生前せいぜんから死後しごのプロセスに移行いこうできるような社会しゃかいを作つくっていく必要ひつようがある」と話はなしていました。