おととし9月5日、牧之原市にある認定こども園「川崎幼稚園」の駐車場に止められた通園バスの車内に、園に通っていた河本千奈ちゃん(当時3)がおよそ5時間にわたって置き去りにされ、重度の熱中症で亡くなりました。
当時バスを運転していた元園長の増田立義 被告(74)は、園児らが降りる際に車内の確認を怠ったとして、また、クラスの元担任の西原亜子 被告(48)は、欠席したと思い込み保護者への確認を怠ったとしていずれも業務上過失致死の罪に問われています。
13日、静岡地方裁判所で開かれた3回目の審理では、千奈ちゃんの両親が「被害者参加制度」を利用して意見陳述を行いました。
母親は「事件以降とてつもない喪失感と絶望感に襲われています。生きていくことがつらく、未来も希望も失いました。『千奈を返してほしい』と毎日、毎日思います。たった3年11か月しか生きさせてあげられなくてごめんなさい」と涙ぐみながら述べました。
続いて父親は「千奈の命を奪った2人を私は許しません。『パパに会いたい』『パパ大好き』と生前の千奈が言っている動画を見て、私は謝ることしかできません。過去の判例よりも重い実刑判決が2人に下されることを望みます」とことばを詰まらせながら述べました。
検察は論告で「千奈ちゃんはしゃく熱のバスの中に長時間にわたり1人で取り残され、懸命に生きようとしたにもかかわらず亡くなった。その肉体的苦痛や絶望感は想像を絶するものだ」などと主張して、元園長に禁錮2年6か月、元担任に禁錮1年を求刑しました。
一方、2人の弁護側は「当初から責任を認め、真摯(しんし)に反省している」などとして、執行猶予を求めました。
最後に元園長は証言台の前に立ち、遺族に向かって一礼したうえで「一生償っていきたいという気持ちでいっぱいです」と述べました。
また、元担任は「私の責任で取り返しのつかない重大なことを引き起こしてしまい、千奈ちゃんとご遺族に謝罪の気持ちでいっぱいです。本当に申し訳ございません」と謝罪しました。
判決は7月4日に言い渡されます。
両親の意見陳述 詳しい内容
13日の審理で千奈ちゃんの両親が行った意見陳述の詳しい内容です。
母親の意見陳述
母親は冒頭に「事件以降とてつもない喪失感と絶望感に襲われています。生きていくことがつらく、未来も希望も失いました。『千奈を返してほしい』と毎日、毎日思います」と述べました。
今の生活については「千奈がいなくなり情緒が不安定になりました。家の中で千奈を探し回り、夜中、外に千奈がいるのではないかと思い、外に出てしまいます」と説明しました。
さらに起訴された2人に対し「増田被告はなぜ安全に対する意識を持って業務を行えなかったのか、西原被告はなぜ違和感に気付いていながら行動しなかったのか、理解に苦しみます」と話しました。
そのうえで「事件から1年9か月がたった現在でも涙を流さない日はありません。たった3年11か月しか生きることができなくて、生きさせてあげられなくてごめんなさい」と涙ぐみながら話しました。
そして最後に「もう何をしても私たちの大切な千奈は戻ってきません。実刑を望みます」と訴えました。
父親の意見陳述
父親は冒頭に「千奈は私たち家族の主役であり、それは事件後も変わりません」と述べました。
続いて元担任に対し「千奈の所在確認を怠り勝手に休みと判断し、結果として千奈を見殺しにした行為は、子どもの命を預かる保育士としてあるまじき行為です」と話しました。
元園長に対しては「無責任さと反省のなさは許されるものではありません。あなたの行動がどれほどの深刻な結果をもたらしたか、そして、私たち遺族にどれほどの苦しみを与えたかということを理解しているのでしょうか」と訴えました。
そのうえで「千奈の命を奪った2人を私は許しません。『パパに会いたい』『パパ大好き』と生前の千奈が言っている動画を見て、私は謝ることしかできません」と涙ぐみながら話しました。
そして最後に「2021年に福岡の保育園でバス置き去り事件が発生し、国や県、市から注意喚起の通達がありました。しかし、そのわずか1年後に、ずさんな管理体制によって同様の事件を起こした罪は重大です。過去の判例よりも重い実刑判決が2人に下されることを望みます」と述べました。
13日の審理では、傍聴席から両親が見えないようについたてが設けられ、2人は時折、ことばを詰まらせながら思いを訴えていました。