厚生労働省の
人口動態統計によりますと、
離婚の
件数は
統計を
取り
始めた
昭和22
年には8
万件を
下回っていましたが、
平成に
入って
倍増し、
おととしには
年間およそ20
万件にのぼっています。
こうした中、離婚後の子どもの養育に関して司法の場で争われるケースは大幅に増えています。
司法統計によりますと、おととし裁判所に審判や調停が申し立てられた件数は、
▽養育費に関してが2万727件、
▽子どもと定期的に会う「面会交流」が1万4868件、
▽「子どもの引き渡し」が4040件で、
平成11年と比べるとこの20年余りでそれぞれ
▼1.7倍、
▼6.8倍、
▼7倍に増加しています。
法務省によりますと、調停などで養育費や面会交流に関する取り決めをしても、守られないケースが多くなっているということです。
家族法が
専門で
法制審議会の
部会の
委員を
務める早稲田大学の
棚村政行教授は「
少子化や、
共働きの
増加で
父親も
積極的に
育児に
関わるようになり、
社会や
家族の
在り方が
変わっているのに、
離婚したあとの
子どもの
養育については
ルールが
明確になっておらず、
争いが
起きやすい
状態になっている。いま
一度、
法制度を
見直す必要が
ある」と
指摘します。
そのうえで「離婚後、親どうしは他人になるにしても子どもとの関係は続く。立場の違いで意見の対立がある問題だが、子どもにとって非常に重要なことを決めるので、社会全体で関心を持ってほしい」と話しています。
「共同親権」で何が変わる
民法で
定める親権とは、
子どもの
利益のために
身の回りの
世話や
教育をしたり、
財産を
管理したりする
権限で、
義務でも
あるとされています。
親権を持つ人は子どもに関わる重要な事柄を決める権限があり、例えば、子どもが住む場所を決めたり、子ども名義の財産を管理したりできるほか、進学先や大きな病気やけがをしたときに受けさせる医療行為の選択なども含まれます。
日本では現在、離婚したあとの未成年の子どもの親権は父か母のどちらか一方が持つ「単独親権」を採用していますが、「共同親権」が選べるようになると、子どもを育てるうえで必要な決定に双方の親が関わることができるようになります。
「単独親権」の場合、決定にあたってもう一方の親の同意が必要ないため、スムーズに意思決定できるというメリットがありますが、親権を持たない親が子育てに関わりづらく、子どもとの交流が絶たれたり、親としての責任感が薄くなり養育費の支払いが滞ったりするなどのデメリットも指摘されています。
一方、「共同親権」の場合、離婚したあとも父と母の双方が子どもの成長に関われるというメリットがありますが、合意に時間がかかり子どもが板ばさみになる可能性や、DVや虐待などのおそれがあるケースでは子どもの安全を守れないと懸念する声もあります。
「共同親権」期待する声
法制審議会の
議論について、
離婚したあとも
子どもの
養育に
関わることを
望む人たちからは
法改正に
期待する
声が
上がっています。
部会の委員で、別居や離婚したあとも子どもとの面会が自然にできる社会を目指して活動している「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」代表の武田典久さんは「男性の育児参加は一般的となり、離婚後も子どもの成長に関わりたいと考える親はますます増えると想定される。離婚後も子どもの養育に責任を持つことを明らかにする意味でも、共同親権を認めることが必要だ」と訴えます。
武田さんの団体が子どもと別居状態にある親を対象に先月から行っているアンケートによりますと、これまでに回答した400人余りのうち「面会交流」について調停などで取り決めをしていても「実施されていない」、または「取り決め以下の実施」と答えた人は合わせて35.8%にのぼるということです。
武田さんは取り決めがあっても十分に実施されていない現状がうかがえるとして「法律で責任を明確にすることで養育費の支払いや面会交流の状況も改善していくと思う。『離婚は親子の別れ』ではなく『離婚後も子どもの成長に責任を持つ』という新しい価値観に対応し、子どもの利益につながるような法改正に期待したい」と話していました。
「共同親権」懸念の声
選択的であっても「
共同親権」を
認めることには
慎重な
意見もあります。
ひとり親の支援団体でつくる「シングルマザーサポート団体全国協議会」では先月下旬から今月上旬にかけてひとり親を対象にインターネットでアンケート調査を行いました。
それによりますと、離婚を決断した理由について複数回答で尋ねたところ、2200人余りの回答で最も多かったのが「子どもによくない影響があった」で37.2%でした。
具体的な内容としては「夫婦の口論などを子どもに見せたくなかった」が58.8%で最も多く、次いで「自分への暴力や暴言を子どもが見ていた」が54.9%、「相手が子どもを虐待することがあった」が33.5%などとなっています。
団体では離婚後の共同親権が子どもにとってよいとは言い切れず、虐待やDVなどから逃げた子どもやひとり親が十分守られないおそれがあると懸念しています。
団体の
代表で、
法制審議会の
部会の
委員も
務める赤石千衣子さんは「
子どもの
安心・
安全が
守られていない
状況で、
進路や
医療の
方針などさまざまな
決定を
父親と
母親が
共同で
やることは
不可能だ。
養育費については
子どもの
貧困対策から
早く
議論を
進めるべきだと
思うが、
面会交流や
共同親権についてはより
慎重な
議論が
必要だ」と
話しています。
子ども支援するNPOは
親が
離婚した
子どもたちの
支援などにあたるNPO
法人「ウィーズ」の
理事長で、みずからも
子どものときに
親の
離婚を
経験している
光本歩 理事長は、
中間試案の
たたき台について「『
子どもの
気持ちに
配慮する』という
文言は
盛り込まれているものの、
具体的にどうやって
子どもから
意見を
聞き、どのように
配慮するのかという
議論はされていないので、
もう少し知恵を
出し合う必要が
ある」と
指摘します。
そのうえで、たたき台で示されている共同親権を選択できる案については「子どもがいちばん嫌がり、傷つくのは、父親と母親が争うことだ。子どもの気持ちを考えた時に、選択的共同親権になったら父母の争いが長引かなくて済むのか、逆に争いが長引く火だねになるのかを冷静に見ていく必要がある。ケースによって抱える問題が違うので、それぞれの子どもに合わせた支援やサポートが必要だ」としています。
また、子どもたちの支援を通して感じていることとして「子どもに会おうとしない親や、相手と関わりを持ちたくないと養育費を拒む親も少なからずいる。こうした問題も含めて、子どもを育てるとはどういうことなのか、家族という社会の最小単位がどうあるべきか、日本全体で目を向けるべき問題だと思う」と話しています。
NHKの憲法記念日特集 国会での議論の進め方めぐり論戦
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資源: NHK
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在日シンガポール大使館の55歳の元参事官が、在任中のことし2月、東京都内の銭湯で男子中学生の裸を盗撮した疑いがあるとして、警視庁が出頭を要請する方針を固めたことが、捜査関係者への取材でわかりました。警視庁は児童ポルノ禁止法違反などの疑いで捜査しています。
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