「朝あさの小しょう1の壁かべ」で親おやが転職てんしょくも？こども家庭かてい庁ちょうが初はつの全国ぜんこく調査ちょうさへ

こども家庭かてい庁ちょうはこうした家庭かていへの支援しえんを検討けんとうするため全国ぜんこくの自治体じちたいを通をつうじて初はじめて実態じったい調査ちょうさを行おこなう方針ほうしんを固かためました。

「朝あさの小しょう1の壁かべ」は子こどもが小しょう学校がっこうに進学しんがくしたことで登校とうこう時間じかんが保育園ほいくえんの預あづける時間じかんよりも遅おそくなるために親おやの仕事しごとや子こどもの朝あさの居場所いばしょに影響えいきょうが生しょうじる問題もんだいです。

共働ともばたらきや1人にん親おやの家庭かていでは、働はたらき方かたの変更へんこうや転職てんしょくを余儀よぎなくされたり、子こどもが登校とうこう時間じかんまで1人にんで家いえで過すごさなければいけなかったりするほか、親おやの出勤しゅっきん時間じかんに合あわせて子こどもが朝あさ早はやく家いえを出でて校門こうもんの前まえなどで待またなければならないなどの問題もんだいもあると指摘してきされています。

一部いちぶの自治体じちたいでは専用せんようの人員じんいんを配置はいちして登校とうこう時間じかんの前まえに開門かいもんし学校がっこうで預あずかる取り組とりくみなども始はじめていますが、こども家庭かてい庁ちょうは共働ともばたらき世帯せたいの増加ぞうかや教員きょういんの働はたらき方かた改革かいかくが進すすむなかで、対策たいさくを検討けんとうする必要ひつようがあるとして初はじめての実態じったい調査ちょうさに乗り出のりだす方針ほうしんを固かためました。

具体ぐたい的てきには「朝あさの小しょう1の壁かべ」がどの程度ていど、問題もんだいとなっているのか全国ぜんこくの市区しく町村ちょうそんに聞きいたうえで課題かだいや地域ちいき差さを明あきらかにするほか、保護ほご者しゃからどのような支援しえんのニーズがあるのかや、子こどもの朝あさの居場所いばしょを確保かくほするために独自どくじに行いっている取り組とりくみについても調査ちょうさすることにしています。

こども家庭かてい庁ちょうは、この秋あきにも調査ちょうさを実施じっしする予定よていでその結果けっかなどをもとに地域ちいきの実情じつじょうに応おうじた対策たいさくを検討けんとうしていく考かんがえです。

“壁かべ”に直面ちょくめんし転職てんしょくを決断けつだんした人ひとも

子こどもの小学校しょうがっこう進学しんがくに伴ともなって朝あさの時間じかんの“壁かべ”に直面ちょくめんし、転職てんしょくを決断けつだんした人ひともいます。

川崎かわさき市しに住すむ斉藤さいとう淳彦あつひこさんは、ことし、大手おおて通信つうしん会社かいしゃの管理かんり職しょくを辞やめてベンチャー企業きぎょうへと転職てんしょくしました。

この春はる長女ちょうじょが入学にゅうがくした公立こうりつ小学校しょうがっこうは、登校とうこう時間じかんが午前ごぜん8時じ10分ふんで、それまでの働はたらき方かたでは子こどもの登校とうこう時間じかんに対応たいおうできないと考かんがえたからです。

斉藤さいとうさんの以前いぜんの職場しょくばでは所定しょてい勤務きんむが午前ごぜん9時じからとなっていましたが、午前ごぜん8時じごろから会議かいぎが開ひらかれることも定期ていき的てきにあり、朝あさ7時じごろには自宅じたくを出でる生活せいかつを送おくっていました。

また、都内とないの金融きんゆう機関きかんで管理かんり職しょくとして働はたらく妻つまは時短じたん勤務きんむを利用りようしていたものの、通勤つうきんにかかる時間じかんはおよそ1時間じかん。保育ほいく所しょに通かよっていた時ときは受け入うけいれが始はじまる午前ごぜん7時半じはんに子こどもを預あづけて出勤しゅっきんすることでなんとか対応たいおうしていましたが、それよりも出勤しゅっきん時間じかんを遅おくらせることはできず、安全あんぜん面めんや子こどもの気持きもちを考かんがえると自宅じたくに1人にん残のこして出勤しゅっきんすることも難むずかしいと判断はんだんしたといいます。

斉藤さいとうさんは、柔軟じゅうなんな働はたらき方かたができる労働ろうどう環境かんきょうを条件じょうけんに転職てんしょく活動かつどうを行おこない、この春はるからは登校とうこうする長女ちょうじょを見送みおくったあと出社しゅっしゃできるようになったといいます。

「朝あさの小しょう1の壁かべ」について斉藤さいとうさんは、次つぎのように話はなしていました。

斉藤さいとう淳彦あつひこさん

「自分じぶんたちの生活せいかつに大おおきな影響えいきょうを及およぼすなというのはすごく実感じっかんしました。保育園ほいくえんの預あずかり時間じかんと学童がくどうや学校がっこうの預あずかる時間じかんが違ちがうのが当たり前あたりまえです。そこは家庭かていが吸収きゅうしゅうするんですよというように自分じぶんは受け取うけとったので、負担ふたんを強しいられているようにも感かんじています。保育園ほいくえんで預あずかる時間じかんと同おなじくらいの時間じかんを預あづけられるところがある、そして職場しょくばも理解りかいしてサポートしてくれると、保育園ほいくえんから小学校しょうがっこうへの変化へんかはそれほど大おおきなハードルにならないのではないかと思おもいます」

”教員きょういんの負担ふたん増ふやさない” 教育きょういく現場げんばでは模索もさくも

どうすれば教員きょういんの負担ふたんを増ふやさず子こどもの朝あさの居場所いばしょを確保かくほできるのか、教育きょういく現場げんばでは模索もさくも始はじまっています。

大阪おおさか・豊中とよなか市しは、今年度こんねんど、市内しないにある39の公立こうりつ小学校しょうがっこうすべてで、登校とうこう時間じかんよりも1時間じかん早はやい午前ごぜん7時じに校門こうもんを開放かいほうする取り組とりくみを始はじめました。

これまで豊中とよなか市しでは保育ほいく所しょの預あずかり開始かいし時間じかんが午前ごぜん7時じとなっている一方いっぽう、小学校しょうがっこうの登校とうこう時間じかんが原則げんそく午前ごぜん8時じとなっていて、近年きんねんは校門こうもんが開ひらく前まえから登校とうこうする児童じどうが増加ぞうか。多おおいところでは100人にんほどが校門こうもんの周まわりで待機たいきすることもあり、児童じどうの安全あんぜん面めんを心配しんぱいする声こえが上あがっていたといいます。

このため、新あらたな取り組とりくみでは安全あんぜん性せいが確保かくほできるよう学校がっこうの体育館たいいくかんや会議かいぎ室しつなどを活用かつようし、児童じどうは登校とうこう時間じかんまでの間ま自習じしゅうをしたり友達ともだちと遊あそんだりして過すごします。

また、教員きょういんの負担ふたんとならないよう、午前ごぜん7時じから8時じまでの時間じかん帯たいは、市しの教育きょういく委員いいん会かいが安全あんぜん管理かんりなどに責任せきにんを負おうこととし、民間みんかん企業きぎょうに委託いたくして確保かくほした「見守みまもり員いん」をそれぞれの学校がっこうに2人にんずつ配置はいちしました。

今年度こんねんど予算よさんには「見守みまもり員いん」の人件じんけん費ひとして7000万まん円えん余あまりを計上けいじょうしています。

この取り組とりくみは仕事しごとなどを理由りゆうに事業じぎょうの利用りようが必要ひつような家庭かていが対象たいしょうで事前じぜんの登録とうろく者しゃ数すうは先月せんげつ末まつの時点じてんで市内しない全体ぜんたいで825人にん。利用りよう者しゃ数すうは、のべ人数にんずうで4月つきは1005人にん、5月つきは1607人にん、先月せんげつは1888人にんと増加ぞうか傾向けいこうにあるといいます。

豊中とよなか市し教育きょういく委員いいん会かい 学校がっこう施設しせつ管理かんり課か 桑田くわた篤志あつし課長かちょう

「教員きょういんの働はたらき方かた改革かいかくや勤務きんむ時間じかんの問題もんだいもありますので、教員きょういんの負担ふたんを増ふやさないことが前提ぜんていとしてありました。一定いっていの保護ほご者しゃからのニーズもありますのでブラッシュアップして、よりよい制度せいどにつなげていきたいと考かんがえています」

朝あさの時間じかんの“ギャップ”が背景はいけいに

「朝あさの小しょう1の壁かべ」の背景はいけいにあるのが、保育ほいく所しょの預あずかりの開始かいし時間じかんと小学校しょうがっこうの登校とうこう時間じかんとの間まに生しょうじる“ギャップ”です。

保育ほいく所しょの場合ばあい、施設しせつごとの違ちがいはあるものの午前ごぜん7時じから7時半じはんの間まには預あずかりを開始かいしするのが一般いっぱん的てきです。

一方いっぽうで、小学校しょうがっこうの登校とうこう時間じかんはそれよりも遅おそく、NHKが東京とうきょう23区くに取材しゅざいしたところ、区立くりつ小学校しょうがっこうの登校とうこう時間じかんはおおむね午前ごぜん8時じから　8時じ25分ぶんの間かんで学校がっこうごとに10分ふんから15分ふんほど設定せっていされていることが多おおいということです。

この朝あさの時間じかんの“ギャップ”が、通勤つうきん時間じかんなどの関係かんけいで保育ほいく所しょに朝あさ早はやくから預あづけて出勤しゅっきんしていた共働ともばたらき世帯せたいなどにとっては進学しんがくに伴ともなう“壁かべ”となり、働はたらき方かたの見直みなおしや子こどもの朝あさの居場所いばしょをどう確保かくほするかなど、対応たいおうに頭あたまを悩なやませるケースが少すくなくないといいます。

さらに、全国ぜんこく的てきには教員きょういんの働はたらき方かた改革かいかくの一環いっかんで、学校がっこうに対にたいして登校とうこう時間じかんを遅おそくすることを検討けんとうするよう求もとめている自治体じちたいもあり、朝あさの“壁かべ”をめぐる問題もんだいがより取り沙汰とりざたされるようになりました。

一方いっぽう、自治体じちたいからは「登校とうこう時間じかん前まえに学校がっこうに来きた児童じどうの対応たいおうを早はやめに出勤しゅっきんした教員きょういんが勤務きんむ時間じかん外がいに担になわざるをえない状況じょうきょうになっている」といった声こえや、「朝あさの子こどもの居場所いばしょを確保かくほしようと思おもっても、誰だれがどこで担になうべきか、人材じんざいの確保かくほも容易よういではないなかで悩なやましい」といった声こえもあがっていて、学校がっこう現場げんばに負担ふたんを増ふやさない支援しえんのあり方ありかたが課題かだいとなっています。

専門せんもん家か “速すみやかに実態じったい把握はあくを”

「朝あさの小しょう1の壁かべ」をめぐる問題もんだいについて、労働ろうどう経済けいざい学がくが専門せんもんで日本にっぽん女子じょし大学だいがくの大沢おおさわ真知子まちこ名誉めいよ教授きょうじゅは、実態じったい把握はあくが支援しえん策さくを検討けんとうするうえでの一いち歩ほになると指摘してきしています。

大沢おおさわ真知子まちこ名誉めいよ教授きょうじゅ

「速すみやかに実態じったいを把握はあくするとともに、この問題もんだいを社会しゃかいでどう対応たいおうするのかみんなで話し合はなしあう時期じきに来きていると思おもう。行政ぎょうせいが一律いちりつに対応たいおうするのは難むずかしい問題もんだいで、企業きぎょうの働はたらき方かた改革かいかくとの関連かんれんでも議論ぎろんしていくことが必要ひつようだ。子こどもたちを社会しゃかいでどう支ささえていくかという視点してんで考かんがえることが大切たいせつだ。子育こそだてがしやすい社会しゃかいをつくることは少子しょうし化か対策たいさくにもつながっていくので、社会しゃかいの意識いしきを変かえるため国くにのリーダーシップを期待きたいしたい」