一方、イスラエル軍はハマスがガザ地区に構築した地下トンネルに対応するための特殊部隊の映像を公開し、地上侵攻を前にハマスに圧力をかけています。
ガザ地区では26日もイスラエル軍による空爆が続き、地元の保健当局は今月7日からの衝突による死者が7028人に上り、このうち2913人が18歳以下のこどもだと発表しました。
さらにがれきの下敷きになっている人も多く1650人の行方がわかっていないとしています。
ガザ地区ではイスラエルによる封鎖で燃料や食料、それに水などの不足が深刻化していて、26日にはエジプト側からトラック12台分の人道支援物資が入りましたが220万人の住民に対してまったく足りない状況が続いています。
一方、イスラエル側ではこれまでに少なくとも1400人が死亡し、220人以上がガザ地区で人質になっているほかロケット弾による攻撃も続いています。
こうした中、イスラエルのガラント国防相が26日夜、演説し「軍事作戦を続けるための基盤を固めている」と述べ、地上侵攻に向けた準備を進めていると強調しました。
イスラエル軍もハマスの襲撃によって破壊されたガザ地区との境界線の壁やフェンスを修復する様子を公開し、監視カメラなどの情報を収集するシステムはほぼ復旧したと発表しました。
さらにハマスが司令部などを置いているとみられる地下トンネルへの対応を専門とする「ヤハロム」という特殊部隊の映像も公開し、ハマスに圧力をかけています。
地下トンネルは地上侵攻の際、ハマスが中に潜んでゲリラ戦を仕掛けるおそれもあるとしてイスラエル側は警戒しています。
この特殊部隊についてイスラエルの情報機関の元高官はNHKの取材に対し「イスラエル軍のなかでもエリート部隊で、トンネルの中に入り武器を破壊したりトンネルそのものを破壊したりするだろう」と述べました。
またこの元高官は隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが本格的に参戦し、2正面作戦となる事態を避けるため、イスラエル軍による地上侵攻は限定的なものになり、当面は大規模な空爆が続く可能性もあるとの見方を示しました。
イスラエル軍「ハマスの情報部門ナンバー2を空爆で殺害」発表
イスラエル軍は26日、ハマスの情報部門ナンバー2のシャディ・バルード氏を戦闘機による空爆で殺害したと発表しました。
イスラエル軍はバルード氏がガザ地区のハマスのトップ、ヤヒヤ・シンワル氏とともに今月7日のイスラエルへの大規模襲撃の計画に関わったとしています。
イスラエル軍があわせてSNSに投稿した空爆時の映像では複数の炎があがったあと巨大な黒煙とともに高層の建物が崩れていく様子が映り、攻撃の激しさが伝わってきます。
また、ガザ地区で拘束されている人質の人数について合わせて224人が確認されていると発表しています。
ハマス「イスラエル側の空爆で死亡の人質は約50人と推定」投稿
一方で、ハマスの軍事部門カッサム旅団は26日、SNSを通じて「イスラエル側の空爆などの影響でガザ地区で死亡した人質はおよそ50人にのぼると推定される」と投稿しました。
ハマス ガザ地区の人々への連帯呼びかけるデモ呼びかけ
さらに、ガザ地区でラファ検問所を経由した支援物資の搬入が進まず人道危機が深まる中、ハマスはイスラム教の集団礼拝が行われる27日の金曜日と、29日の日曜日にあわせてイスラム諸国や世界各国に対しガザ地区の人々への連帯を呼びかけるデモを呼びかけています。
SNSを通じて「ラファ検問所を開けろ。ガザを破壊しようとする戦争を止めろ」ということばをスローガンに掲げています。
今月7日にイスラエルとハマスの間で大規模な戦闘が始まって以降、イスラム諸国や世界各国の間ではパレスチナとの連帯を掲げてイスラエルへの抗議デモが行われています。
ハマス幹部がモスクワ訪問 中東問題担当の外務次官と会談
ロシア外務省は26日、ハマスの幹部、アブマルズーク氏が率いる代表団がモスクワを訪問し、中東問題を担当するボグダノフ外務次官と会談したと明らかにしました。
会談ではボグダノフ外務次官がハマスに拘束されているロシア人などの人質の解放を求めるとともに、ロシアとしてはイスラエルとパレスチナの共存を求めていく立場に変わりはないと伝えたとしています。
ボグダノフ次官はこれに先立ち、中東のカタールを訪問してハマスの政治部門の指導部と会談したほか、この日、モスクワで、ハマスを支援しているイランのバゲリ外務次官とも会談し、ガザ地区の情勢について協議したとしています。
ロシアは、これまでイスラエルだけでなくハマスを含むパレスチナ側とも一定の関係を築き、仲介役を果たそうとしてきました。
しかし、ウクライナへの軍事侵攻でアメリカとの対立が深まる中、プーチン政権はイスラエルを支援するアメリカへの批判を前面に押し出し、イスラエル軍が続ける攻撃にも懸念を示しています。
一方、ハマスも26日、SNSを通じて、代表団がモスクワを訪問したと発表し、ボグダノフ次官との会談では「イスラエルによるガザ地区への攻撃や、アメリカや西側諸国が支援しているイスラエルの犯罪を阻止するための戦略に焦点が当てられた」としています。
その上で「代表団はプーチン大統領の姿勢を評価し、ロシア外交の積極的な役割を確認した」としています。
これに対し、ボグダノフ次官からはロシアがパレスチナの人々の権利を支持することや、停戦を実現し、ガザ地区への人道支援などを容易にするための努力を行っていることが表明されたということです。
これについてイスラエル外務省の報道官はSNSに投稿し「イスラエルはロシアがハマスの高官をモスクワに招待したことを非難する。これはテロを支援する行為であり、ハマスのテロリストの残虐行為を正当化するものだ。ロシア政府に対しハマスのテロリストを直ちに追放するよう求める」と反発しています。
イラン 米から自制促すメッセージ受け取る 国営通信伝える
イランの国営通信は26日、関係者の話としてイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が始まって以降、イランは複数回にわたってアメリカからメッセージを受け取ったと伝えました。
この中でアメリカは、イランに自制を促し、アメリカも地域に争いが広がることを望んでいないと伝えてきたということです。
また、イランが支援し、イスラエル北部への攻撃を繰り返しているレバノンのシーア派組織ヒズボラも、アメリカやヨーロッパの国々から、同様のメッセージをたびたび受け取っているとしています。
これに対するイラン側の受け止めとして国営通信は「イランはイスラエルの戦争犯罪が地域の国々の怒りを招き、新たな戦端を開くと警告してきた。イラクやシリア、レバノン、イエメンで起きていることがそれを示している。戦争の拡大を望まないというアメリカの主張が本当なら、ガザ地区で人々を殺すのを止めるべきだ」とする関係者のコメントを紹介しています。
イスラエルとハマスの一連の衝突が始まって以降、アメリカ軍が駐留する中東の基地などが、イランの支援を受ける勢力から攻撃を受ける事態がたびたび起きています。
イランは関与を否定していますが、中東全域で緊張が高まることが懸念されます。
米紙 “ハマス戦闘員がイランで訓練” イランメディア「否定」
一方で、アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは25日、関係者の話としてハマスの戦闘員らがイスラエルへの大規模な奇襲攻撃を前にイランで訓練を受けていたと伝えました。
それによりますと、ハマスやハマスと連携する武装組織「イスラム聖戦」の戦闘員およそ500人が、9月、イランで特別な戦闘訓練を受けていたということです。
訓練はイランの最高指導者直轄の精鋭部隊「革命防衛隊」の中でも、主に国外での特殊任務を担う「コッズ部隊」によって行われたとしています。
ただ、イランがこの訓練を今月7日の奇襲攻撃に向けた準備として行ったことを示す情報は、今のところないということです。
これに対し、イランの体制寄りのメディアは「アメリカの新聞の主張を否定する」とした見出しの記事を掲載し「このニュースの目的はイスラエルの取り返しのつかない敗北から目をそらすことだ」と主張しています。
これまでイラン政府は、ハマスによるイスラエルへの攻撃を支持する一方で、自らの関与については一貫して否定しています。
国連総会で緊急特別会合始まる
国連総会の緊急特別会合は26日、ニューヨークの国連本部で始まりました。
会合では、イスラエルとパレスチナの双方の代表が激しく非難しあうなど各国がそれぞれの意見を表明する演説を行っていて会合の最後に即時停戦などを求める決議案の採決が行われます。
パレスチナ情勢をめぐって緊急特別会合が開かれるのは2018年以来、およそ5年ぶりです。
各国の演説でははじめに、パレスチナのマンスール国連大使が、ガザ地区での犠牲者の多くが一般市民だとして「この戦争を擁護できるだろうか。これは犯罪だ」と訴えた上で、「復しゅうは何も生まない。すべての命は平等だ。命を救ってほしい」と述べ、即時停戦を呼びかけました。
これに対してイスラエルのエルダン国連大使は「イスラエルはパレスチナの人たちではなくテロ組織のハマスと戦争をしている。われわれの目標は、ハマスの能力を完全に根絶することであり、そのためにあらゆる手段を使う」と述べ、攻撃を続ける考えを強調しました。
イラン 米を強くけん制 ハマス擁護の姿勢鮮明に
一方でイランは、アブドラヒアン外相が演説し「パレスチナは、武力を含む利用可能なすべての方法で占領に抵抗する権利を持つ。占領者に対する闘争をテロ行為だと非難しても世界を欺くことはできない」と述べ、ハマスを擁護する姿勢を鮮明にしました。
さらに「アメリカは、財政支援や軍事支援でこの戦争に直接的に参加していて、国際法の義務に違反している」と述べてイスラエルとともにアメリカを非難し「ガザ地区での大量虐殺が続くならば、アメリカはこの惨事から免れることはできない」と述べ、イスラエルを擁護するアメリカを強くけん制しました。
あす 即時停戦などの決議案の採決行われる
緊急特別会合は27日も行われ、あわせて100か国以上の代表が演説したあと、ヨルダンが提出した決議案の採決が行われます。
決議案は、▽即時停戦や▽一般市民の保護、それに▽人道支援物資のガザ地区への搬入などを求める一方、▽ハマスによる攻撃を非難する内容は含まれていません。
総会の決議に法的拘束力はありませんが、193すべての国連加盟国が参加できるため、国際社会の総意を示すものとされ、採決の結果が注目されています。
ガザ地区の保健当局が死者約6800人分の名簿公表
ガザ地区の保健当局は26日、これまでにイスラエル軍による空爆などで死亡が確認されたとする人のうちおよそ6800人分の名前や年齢、性別などをまとめた資料を公表しました。
保健当局は今月7日からの衝突による死者が7028人に上り、このうち2913人が18歳以下の子どもだとしていて、今回公表されたのは身元が確認できていない人を除く6747人です。
資料は遺体が病院に到着した際に記録される個人情報などのデータをもとに作成したとしています。
日ごとの死者数をまとめたデータも公表されました。
それによりますと今月7日以降、ガザ地区の死者数は、毎日200人から300人ほどで推移していますが、▽ガザ市の病院で爆発があった今月17日には678人、▽イスラエル軍がガザ地区の400か所以上を空爆したと発表した23日から24日にかけては2日間であわせて1460人と、特に多くの死者数が記録されています。
保健当局は、今もがれきの下に多くの人がいるなどとして、実際の死者数はさらに増えると指摘しています。
バイデン大統領は数字を疑問視
パレスチナ側の犠牲者数についてアメリカのバイデン大統領は25日、記者会見で「本当のことを言っているとは思えない」と述べ、公表される数字を疑問視する姿勢を示しています。
ガザ地区の保健当局は猛反発
これに対してガザ地区の保健当局は26日、「アメリカ政府は何の根拠も無く、保健当局が発表する数の妥当性を疑問視している。そこでわれわれは、イスラエルが行った虐殺の実態を、世界の人々の前で詳細に発表することを決めた。すべての数字の裏には1人1人の物語がある。われわれの市民は無視できる存在ではない」とSNSに投稿して猛反発しました。