一方、国連はガザ地区に搬入される人道支援物資がまったく足りていないとして、現在、搬入口となっているエジプト側との境界の検問所だけでなく、イスラエル側との境界にある検問所も使うべきだと訴えました。
※31日(日本時間)のイスラエルやパレスチナに関する動きを随時更新でお伝えします。
一連の衝突でガザ地区では3000人以上の子どもを含む8306人が死亡したほか、イスラエル側ではこれまでに少なくとも1400人が死亡しています。
イスラエル軍 ガザ地区を南北に分断し作戦進める狙いか
イスラエル軍は30日も、ガザ地区への激しい空爆を続けるとともに、地上での軍事行動を拡大させています。
複数の現地メディアはガザ地区を南北に貫く幹線道路「サラハディン通り」に一時、イスラエル軍の地上部隊が到達したと伝え、地元のカメラマンはイスラエル軍の戦車とみられる車両を撮影した映像を公開しました。
イギリスのBBCがこの映像を分析したところ、撮影されたのは、人口が最も多いガザ市の南側で、ガザ地区の南北を分けるワディ・ガザと呼ばれる川から2キロほどの地点だとしています。
イスラエル軍はガザ地区を南北に分断して作戦を進めていく狙いもあるとみられています。
ジャーナリスト 少なくとも31人死亡
ニューヨークに本部があり、報道の自由を守る活動をしている国際的なNPO「CPJ=ジャーナリスト保護委員会」によりますと、今月7日からのイスラム組織ハマスとイスラエル軍との一連の衝突で、30日までに少なくとも31人のジャーナリストが死亡したということです。
31人のうち、
▼26人がパレスチナ人、
▼4人がイスラエル人、
▼1人がレバノン人で、
この中には、ガザ地区の地元メディアのジャーナリストや、レバノン南部の国境付近で取材中だったロイター通信のカメラマンなどが含まれるということです。
また、▼8人のジャーナリストが負傷しているほか、▼9人が行方不明または拘束されているという報告を受けているとしています。
CPJは、このほかにもジャーナリストが死亡したり拘束されたりするなどの被害にあったという多数の未確認情報があるため調査を行っているとしています。
国連”イスラエル側の検問所からも物資搬入を”
OCHA=国連人道問題調整事務所で物資の運搬などを担当するドーテン局長は安保理の緊急会合に出席し、ガザ地区へ人道支援物資を運び込むルートについて「ガザ地区への入り口は1つだけではないはずだ。イスラエルとガザ地区の間にあるケレム・シャローム検問所は、十分な数のトラックが迅速に通過できる唯一の検問所だ」と述べました。
エジプト側との境界にあるラファ検問所だけでなく、イスラエル側との境界にあるケレム・シャローム検問所を通じても物資を運び込み搬入量を増やすべきだと訴えたかたちです。
米国務省 通信手段の復旧を要請
アメリカ国務省のミラー報道官は30日、記者会見で、アメリカがイスラエルに対し、電話やインターネットの通信サービスの復旧を要請していたことを明らかにした上で「イスラエルが復旧に向けた措置をとったことを歓迎する」と述べました。
また、ミラー報道官は「通信サービスを確保することは、重要な情報を伝達し、人道支援を継続させ、家族が連絡を取り合うために重要だ」と述べ、人道支援の観点から、復旧を要請したと説明しました。
ガザ地区ではイスラエル軍が地上での軍事行動を拡大させた今月27日から通信が遮断され電話やインターネットがほぼつながらない状態になっていましたが、29日になって徐々に復旧していました。
WHO ガザ地区の医療施設で491人死亡
WHO=世界保健機関は30日、今月7日に一連の衝突が始まってから30日までに、ガザ地区の医療施設などが82回の攻撃を受け、491人の死亡が確認されたと発表しました。
このうち16人は勤務中の医療従事者だったということです。
また、372人がけがをしたほか、28台の救急車が損傷、36の医療施設が被害を受けたとしています。
米戦略広報調整官「停戦で利益得るのはハマスだけ支持せず」
アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は30日、記者会見でイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦について「今、停戦をして利益を得るのはハマスだけだ。われわれは停戦を支持していない」と述べました。
またカービー調整官はイスラエルのネタニヤフ首相が29日、バイデン大統領との電話会談で、ガザ地区への人道支援物資の搬入を大幅に増加させるために努力する考えを示したと強調しました。
国連安保理で緊急会合
30日に開かれた安保理の緊急会合では、10月27日に国連総会で人道目的での休戦などを求める決議が採択されたことを受けて、各国からイスラエルに対し、ガザ地区の住民の保護を求める意見が相次ぎました。
このうち、ガボンのビアン国連大使は「イスラエルの激しい空爆と地上作戦がこの戦争の死傷者を悲劇的に増加させている」と述べ、総会決議が求めた休戦に応じるよう訴えました。
こうした中、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は「イスラエルにはテロから自国を守る権利はあるが、国際人道法を順守しなければならない」と述べる一方、先の国連総会の決議については「ハマスの行動が非難されていないのは不合理だ」として、改めてイスラエルを擁護する姿勢を示しました。
これに対してロシアのネベンジャ国連大使は、総会決議の翌日にイスラエル軍が地上作戦を拡大したと非難したうえで「アメリカはイスラエルによる大規模な報復を支持しているのか」と詰め寄りアメリカも非難しました。
安保理では10月16日以降、戦闘の一時停止などを求める決議案がアメリカやロシアなどの常任理事国の対立から4回否決されてきたことから、日本も含む非常任理事国10か国が新たな決議案の準備を進めていますが、採択にいたるかどうかはなお不透明です。
ハマス 人質だとする女性3人の映像を投稿
イスラム組織ハマスは現地時間30日の午後3時過ぎ、人質として拘束しているイスラエル人の女性たちだとする映像をSNSに投稿しました。
映像は1分あまりの長さで、3人の女性が白い壁の前でいすに座り、このうち中央に座る女性がヘブライ語でネタニヤフ首相に対し、自分たち人質の解放と引き換えにハマス側が要求する停戦や、パレスチナ人の囚人の釈放に応じるよう求めていて、時折、激しい口調で話していました。
イスラエルのメディアによりますと、3人は家族ではないと見られていますが、互いに相づちを打つようなしぐさを見せていました。
映像は最後に中央に座る女性が「今すぐ、人質全員を解放して」と大声で連呼し、終わっています。
女性たちはハマスの管理下にあり、発言した内容はハマスが用意したものか、ハマスが了承した内容を述べたものと見られます。
このため、今回の映像の公開はハマスがネタニヤフ首相に対し、人質解放の交渉に応じるよう圧力をかける狙いがあるとみられています。
ガザ地区 支援物資26台分が到着
パレスチナの赤新月社は30日、ガザ地区とエジプトとの境界にあるラファ検問所から食料や医療機器などを積んだ26台のトラックが、ガザ地区に到着したと明らかにしました。
10月21日に支援物資の搬入が始まってからガザ地区に入った人道支援のトラックは、144台になったとしています。一方で燃料の搬入は、依然として認められていないとしています。
ガザ地区保健当局 “トルコ・パレスチナ友好病院に攻撃で被害”
ガザ地区の保健当局は30日、北部にあるトルコ・パレスチナ友好病院が攻撃を受け、深刻な被害が出たとSNSで明らかにしました。
この中で「患者と医療従事者の命が危険にさらされた」として、イスラエル軍による医療機関への攻撃が繰り返されていると訴えました。
あわせて投稿された病院の内部とみられる写真には、エレベーターホールに並べられたベッドや不安そうな表情を浮かべる人々が写っています。
この病院の設立に携わったトルコの外務省も声明を発表し、「ここはガザ地区における唯一のがん治療のための病院だ。病院の位置情報をイスラエル当局に事前に提供したにもかかわらず、攻撃があったことは説明がつかない」としてイスラエルを強く非難しました。
そのうえで「ガザ地区の封鎖や、非人道的な攻撃は明らかに国際法に違反している」として、攻撃の即時停止を求めました。
トルコとイスラエルは、ことし9月にエルドアン大統領とネタニヤフ首相が初めて対面で会談するなど、関係の改善を進めてきましたが、今回の衝突を受けてエルドアン大統領がイスラエルを激しく非難したのに対して、イスラエル側はトルコに駐在する自国の外交官に帰国を指示するなど、両国の関係は急速に悪化しています。
米CNN “イスラエル軍 新たなビラ投下し南部への退避通告”
アメリカのCNNはイスラエル軍が「ガザ地区は戦場と化した」と書かれた新たなビラを上空から投下し、改めてガザ地区南部への退避を通告していると伝えています。
ビラはアラビア語で書かれていて「ガザ地区は戦場と化した。ハマスはこの地域の避難所や病院、学校を利用している。したがって、これらの場所にいることは安全ではない」と警告しているということです。
その上で「直ちにワディ・ガザの南側に退避せよ」と書かれ、ガザ地区の南北を分けるワディ・ガザと呼ばれる川より南に避難するよう通告しています。
ハマス「イスラエル軍 ガザ地区への侵入は限られた範囲」
イスラム組織ハマスの高官は30日、イスラエルの隣国レバノンの首都ベイルートで記者会見し「イスラエル軍はガザ地区の北や東、それに海上から侵入を試みたが 一部の地域を除いて成功しておらず、ガザ地区への侵入は限られた範囲にとどまっている」と述べました。
一方、ガザ地区全域への空爆などによる攻撃はいまも続いているとした上で、「ガザ地区の人道状況は悲惨で、困難で、厳しい。われわれは、アラブ諸国を含むすべての国に対し、占領軍に圧力をかけるためあらゆる手段を行使するよう求める」と述べ、連帯を呼びかけています。
米有力紙が分析記事 “ハマスの襲撃なぜ予見できなかったか”
アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは29日、イスラエルが10月7日のイスラム組織ハマスによる襲撃をなぜ予見できなかったのかを複数の関係者の話から分析した記事を公開しました。
記事では「イスラエルは過信と、ハマスの脅威は抑え込んでいるという誤った思い込みから、今回の攻撃を過小評価しただけでなく、情報収集に完全に失敗していた」としています。
それによりますと、イスラエルの情報機関はハマスによる無線交信の傍受を時間の無駄だとみなして1年ほど前にやめていて、ハマスの戦闘員はイスラエル側に気づかれることなく大規模な訓練を行っていたほか、イスラエル軍の基地や住民が暮らす集落の場所に関する詳細な情報を持っていたということです。
また「イスラエルでは過去数年にわたる失敗の連鎖があった」とした上で、複数の関係者の話に基づく具体例として、イスラエルの国内政治の混乱が安全保障を弱体化させたこと、ネタニヤフ首相とイスラエルの当局は、イランとイランが支援するイスラム教シーア派組織ヒズボラがイスラエルにとっての最大の脅威と捉え、ハマスへの対応に十分注意を払っていなかったことなどを指摘しています。
さらにイスラエル軍の高官の話として、ガザ地区の境界に設置されたフェンスや壁に加えてカメラやセンサーなど遠隔の監視システムと機関銃システムによって、イスラエル側への侵入はほぼ不可能となり、多数の兵士を基地に常駐させる必要性は減ると考えていたと伝えています。
しかし、ハマスは自爆型の無人機を使ってシステムを破壊し、監視を避けるために携帯電話で活動について話し合わないよう規律を徹底させるなどしたということです。
ハマスの戦闘員は小規模の部隊に分けられ、ほとんどは組織全体の動きは把握せず、特定の目的のためだけに訓練を受けていたとみられるとして、記事ではヒズボラと関係のあるレバノンの当局者の話として、ハマスはこうした作戦の規律をヒズボラから学んだ可能性があると伝えています。
また、アメリカの情報機関もハマスへの情報収集に労力を割かず、アメリカ政府には、ハマスの工作員をさらに優先度の高いほかのテロ組織の情報源として利用するという考えも一部にあったと指摘しています。
エルサレムで人質家族などが早期の解放を呼びかけ
エルサレムでは、ガザ地区でとらわれている人質の数にあわせて「空になったベッド」と称しておよそ230台のベッドが並べられ、人質の家族などが集まって早期の解放を呼びかけました。
広場に並べられたベッドのなかには大人用のものもあれば、子ども用の小さなものもあり、家族らはベッドの脇で抱き合うなどして互いを励まし合っていました。
そして、イスラエル軍によるガザ地区への攻撃が激化する中、集まった人たちは一斉に祈りをささげ、人質の無事を祈っていました。
この日、集まった家族は多くがイスラエル南部の集落ニルオズから連れ去られた人たちの家族で、地元メディアによりますとニルオズでは、住民のおよそ5分の1にあたる80人ほどが人質になったか、行方不明のままだということです。
母親が人質になっている女性は「政府や軍には人質の解放を最も重要な目的として取り組んでもらいたい」と話していました。
また、おじとおばなど親戚4人が人質になっている男性は「彼らは水を飲めているだろうかなどといつも心配です。早く解放されてほしいし、赤十字に一刻も早く人質の安全を確認してほしい」と訴えていました。
集会の最中には、エルサレム中心部でもロケット弾の飛来を知らせる防空サイレンが鳴り、参加していた人たちは急いで地下に避難していました。
UNRWA ガザ地区で死亡した職員あわせて64人に
パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のフィリップ・ラザリーニ事務局長は30日、国連の安全保障理事会の緊急会合でビデオ演説し、ガザ地区で新たに職員1人の死亡が確認されたと明らかにしました。
10月7日以降に確認された死者の数は、あわせて64人にのぼるということです。
また、UNRWAが30日に公表した報告書では、これまでにあわせて44のUNRWAの施設がイスラエル軍の攻撃を受け、避難していた19人が死亡したほか、310人がけがをしたとしています。
さらに、ガザ地区では149のUNRWAの施設にあわせて67万人が避難を余儀なくされていて、1か所あたりの避難者の数は定員の4倍に達しているということです。
ラザリーニ事務局長は「現在行われているガザ地区の封鎖は、パレスチナの人たちへの集団処罰だ」とした上で、水や食料が不足するなか、UNRWAの倉庫に大勢の人が押し入って食料を奪う事態になっていることについて「さらなる秩序の崩壊が起これば、ガザ地区で国連が活動を続けることは不可能ではないにせよ、極めて困難になる」と述べ、強い危機感を示しています。
イスラエル軍とレバノンのシーア派組織ヒズボラ 武力衝突続く
イスラエル軍とイランが支援するレバノンのシーア派組織ヒズボラなどとの間では、散発的な武力衝突が続いています。
イスラエル軍は30日、「イスラエルに対しロケット弾を発射したシリアの地点に対してイスラエル軍の戦闘機が攻撃した。また、レバノンのヒズボラの関連施設も攻撃した」と発表しました。
一方、シリアの国営通信は30日、軍関係者の話として「イスラエルは30日未明、シリア南部ダラア郊外にある軍事施設2か所に空爆を行った。ある程度の物的被害が出ている」と伝えています。
”音楽イベントで連れ去られた女性 死亡確認” イスラエル外務省
イスラエル外務省は10月7日、ガザ地区に近い場所で開かれていた音楽イベントに参加中に、イスラム組織ハマスなどにガザ地区に連れ去られた23歳のドイツ系のイスラエル人女性が、死亡したことを確認したと発表しました。
イスラエル外務省の30日の発表は女性について「ハマスによって音楽イベントから誘拐され、拷問され、見せもののようにガザ地区で連れ回され、計り知れない恐怖を経験させられた」として、その死を悼むコメントをSNSに投稿しました。
ただ、イスラエル外務省は女性の死亡をどのように確認したのかなど、詳細は明らかにしていません。
イスラエル軍 ガザ地区活動をSNSに公開
イスラエル軍は30日、「ガザ地区におけるイスラエル軍の活動」とする映像をSNSに公開しました。
映像ではイスラエル兵が建物のなかで話し合っている様子や、戦車が砂煙をあげて移動する様子などが映っていて、軍事行動が順調に進んでいることを内外にアピールするねらいがあるものと見られます。