日銀の植田総裁はこのあと午後3時半から記者会見を行い今回の決定のねらいについて説明します。記者会見での植田総裁の発言をこちらのタイムラインで速報でお伝えします。
「物価安定目標見通せる状況に至らず 金融緩和継続」
植田総裁は、2%の物価安定目標について「消費者物価の基調的な上昇率は見通し期間の終盤にかけて物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくと見ているが、こうした見通しの不確実性は極めて高く、現時点では物価安定目標の持続的・安定的な実現を十分な確度を持って見通せるような状況にはまだ至っていない。このため長短金利操作=イールドカーブコントロールのもとで粘り強く金融緩和を継続することで経済活動を支え賃金が上昇しやすい環境を整えていく方針だ」と述べました。
「米国の金利上昇が非常に大幅 今回の措置の背景」
植田総裁は、今回の運用の柔軟化は、想定外の金利上昇を受けた追加的な措置なのか、という質問に対し、「私どもの物価見通しが上ぶれてきたこと、それからこちらの方が背景として大きいかもしれないが、米国の金利上昇が非常に大幅で、それが我が国の金利にも及んできたということも今回の措置の背景にある」と述べました。
「物価見通し上ぶれた理由 輸入物価の上昇が国内に」
植田総裁は、今回の展望レポートで物価の見通しが上ぶれた理由について「第1の力は輸入物価の上昇が国内の物価に及んでいることで、第2の力は国内の賃金と物価が好循環で回っていくことを意味する。今回の見通しが上ぶれた主因は第1の力が長引いていることやこのところの原油価格の上昇だと判断している」と述べました。
「長期金利 1%を大幅に上回るとはみていない」
植田総裁は「現状において、原則として連続指値オペを実施し長期金利の上限を厳格に抑えることは強力な効果の反面、副作用も大きくなりうると判断した」と述べました。
そのうえで、「今後は1%の上限金利のめどのもとで大規模な国債買い入れを継続するとともに長期金利の水準や変化のスピード等に応じて機動的にオペで対応していく。買い入れ額の増額や臨時買い入れなどの対応は1%を下回る水準で行うこともあると考えている。また、必要に応じて指値オペも活用し、その利回りは金利の実勢などを踏まえて適宜決定する。長期金利の厳格な上限は設定しないが、こうした運営のもとで、1%を大幅に上回るとはみていない」と述べました。
「金融市場のボラティリティー増大それに伴う副作用防ぐ」
植田総裁は、今回の措置は為替の動向を意識したものなのか、という質問に対し、「為替レートはファンダメンタルズに沿って安定的に動くことが望ましいと考えている。その上で、為替レートの変動が大きくなると、経済・物価に対する大きな影響を及ぼすということはありえるので、まずそこについて政府と緊密に連携しつつ、注視していきたいということと、我々の物価見通し等に大きな影響が出るということであれば、それは政策の変更に結びつきうるということだと思っている」と述べました。
その上で、「今回の柔軟化は、前もって柔軟化しておくことによって、将来あり得るかもしれない金融市場のボラティリティーの増大、あるいはそれに伴う副作用を防ぐという面がある。そのボラティリティーの中に7月と同様、為替のボラティリティーも含めているという面はある」と述べました。
「物価目標 多少前回に比べ前進」
植田総裁は物価の見通しについて「そこそこ見通し期間終盤にかけて第2の力の強さも上がっていくというパスをいっている。ただ、見通しに関する角度などはもう満足したから物価目標達成だというにはまだちょっと距離がある。ただその中でもさまざまなデータをみると多少前回に比べれば前進していると言える」と述べました。
「マイナス金利と長短金利操作 目標達成見通たつまで継続」
植田総裁は、現在の大規模な金融緩和策をいつまで継続するかについて、「物価上昇が賃金の上昇にはねかえるこれが続いていくこと、そして賃金が上がったことが物価、サービス価格を引き上げていくことこの両方が目標の2%に近いところでぐるぐる回り続ける必要がある。今後については来年の春闘が1つの重要なポイントだ」と述べました。
その上で「マイナス金利と長短金利操作=イールドカーブコントロールについては経済金融情勢しだいで決め打ちはしていない。目標の達成の見通しがたつまでは両者とも継続する姿勢だ」と述べました。
「来年の賃金上昇 ある程度期待できる」
植田総裁は、賃金上昇の見通しについて問われると、「労働市場の需給が構造的に引き締まっていることや、企業成績が全体としてはかなり好調であること等を勘案すると、ある程度、来年の賃金は期待できる。さらに、国内の賃金と物価が好循環で回っていくことを意味する『第2の力』の見通しについては、来年の賃金上昇率がそこそこのものになるということは前提として置いている」と述べました。
その上で、「一方で、それらの完全なデータを得るまでには来年も相当先までいかないと入ってこないということがある。その前段階でどれくらい来年の賃金上昇を見通せるかというのは、賃金のデータやヒアリング情報を含め、経済情勢次第だ。賃金だけでは、目標達成の見通しが立つというわけではなく、それと同時に賃金から物価への波及も順調に進んでいるかどうかという点も重要であり、それを含めて総合的に判断する。それがいつ確認できるのかということは、先見的に今この辺だとはなかなか申し上げられない」と述べました。
「個人消費 マインドそんなに悪くない」
植田総裁は、物価の上昇に伴う個人消費への影響について「物価上昇が一部の消費者、サービスに対する姿勢を慎重化させている動きは見えると思う。ただ全体を見ると家計調査は少し弱いがその他の消費に関するデータ・指標はおおむね緩やかに改善していることを示唆しているしいくつかの消費マインドの調査もそんなに悪くないと判断している」と述べました。
その背景として「一時的に控えていた消費が回復する『ペントアップ需要』が続いていることや実質賃金はまだだが名目賃金が春から上昇し始めたことが影響していると思う」と述べました。