昔、ある山あいの村に、一人の小汚い旅の坊さんがやってきました。坊さんは、村の化け物が出るという古寺に泊まる事になり、昼のうちに掃除を済ませ就寝しました。
丑三時(うしみつどき)になると、どこからか囃し唄が聞こえてきて、化け物が出てきました。
「古みの、古がさ、古ごとく、あっちゃぶんくら、こっちゃぶんくら♪」
坊さんも囃し唄を歌いながら、古道具の化け物たちと一緒に明け方まで踊り続けました。
「ちゃん、ザルコ、水屋のすみこの味噌ザルコ、ざんざこざんざこ♪」
翌日、托鉢へ来た坊さんを見た村人たちは、化け物寺に泊まって無事でいた事にすっかり感心しました。村人たちは坊さんに沢山のご馳走を用意して敬いました。その夜、坊さんは再び化け物寺に帰り、化け物たちが出てくるのを待ちました。夜も更けた頃、化け物たちは再び現れ、坊さんの「喝!」という気合とともに化け物たちは消えていきました。
翌朝、寺に様子を見に来た村人たちと一緒に、打ち捨てられていた古道具たちを火にくべて念仏を唱えてあげました。無事に古道具たちは成仏し、村人たちも古道具といえども大切に扱うようになりました。