2位の萱和磨選手、それに団体総合での貢献が期待される杉野正尭選手、谷川航選手とともに新たにパリオリンピックの代表に内定しました。
男子は、エースの橋本大輝選手がすでに代表に内定していて、これで代表の5人が出そろいました。
記事後半では代表に内定した5人の特徴などを詳しく紹介しています。
体操のNHK杯は4月の全日本選手権の得点を持ち点に男女ともに2日間の演技で争われました。
このうち男子は
▽すでに内定しているエースの橋本大輝選手を除く個人総合の上位2人と
▽団体総合で得点に貢献できる2人の合わせて4人が、
パリオリンピックの代表に内定します。19日は男子の2日目の競技が行われ、右手の中指を痛めた橋本選手は大会を棄権し、エース不在の争いとなりました。
1日目を終えてトップに立った20歳の岡選手は、落下が続いている2種目目のあん馬でミスが出て12.466と得点を伸ばせませず、2位の萱選手に0.3余りまで迫られました。
それでも、続くつり輪では、力を入れてきた取り組んできた「中水平」を力強くこなすと、着地を完璧に止めて14.366と立て直しました。
5種目目、得意の平行棒ではつま先まで伸びた美しい倒立姿勢を見せるなど、14.466をマークして一度もトップをゆずることく最終種目の鉄棒を迎えました。
鉄棒でもコールマンなどの手放し技を成功させると最後の着地まで完璧に決め、全日本選手権との合計得点を342.727として初優勝を果たし、初めてのオリンピック代表に内定しました。
2位は持ち味の安定感を発揮し、5種目で14点台をマークした萱選手で、岡選手とともにパリオリンピックの代表に内定しました。
このほか、得意のあん馬と鉄棒でともに高得点をマークした杉野正尭選手、得意の跳馬で世界最高難度の大技「リ・セグァン2」を決めて15.433の高得点をマークした谷川航選手が団体総合で貢献が期待されるとして、代表に内定しました。
これで、男子の代表は5人が出そろい、2大会ぶりの団体金メダルの奪還を目指します。
《男子 結果》
▽1.岡 慎之助 342.727 ★内定
▽2.萱 和磨 341.426 ★内定
▽3.土井 陵輔 340.660
▽4.田中 佑典 340.392
▽5.杉野 正尭 339.861 ★内定
▽6.三輪 哲平 339.758
▽7.松見 一希 339.460
▽8.長谷川 毅 338.627
▽9.角皆 友晴 337.726
▽10.谷田 雅治 336.891
▽11.藤巻 竣平 335.726
▽12.谷川 航 335.592 ★内定
▽13.川上 翔平 335.393
▽14.橘 汐芽 333.227
▽15.上山 廉太郎 333.224
《代表内定選手 談話》
岡慎之助「ケガを乗り越えて結果を出せてうれしい」
優勝した岡慎之助選手はおととし、右足の前十字じん帯を断裂したけがを乗り越えて初のオリンピック代表入りを決めました。
岡選手は「目標にしていたパリの代表を勝ち取ることができてほっとしている。ケガをしても『絶対パリに自分が行く』という思いがあったから前を向くことができたし、きついトレーニングばかりだったが、それを乗り越えて結果を出せてうれしい。乗り越えてよかった」と話しました。
オリンピックに向けては「まずはチーム全員で力を合わせて団体の金メダルを絶対に取るということと、個人でも種目別の平行棒で金メダルを取れるように頑張りたい」と意気込んでいました。
萱和磨「団体で金メダルをとることしか考えていない」
2大会連続のオリンピック代表に内定した萱和磨選手は「選考会全体を振り返って4日間を通じて大きなミスなく戦い抜けたことは自分らしい戦い方ができたということだと思う。最後の鉄棒は『ゾーンに入った』というか、指先から足の先まですべてが自分の思うように鮮明に動く感覚だった。本当に練習を積み重ねて来たからこその結果だと思う」と振り返りました。
そして、オリンピックに向けて「団体で金メダルをとることしか考えていない。大会までに5人全員で練習する期間はそんなにないが、代表合宿を大切にしてチーム力を高め、自分自身も現地に入っても変わらない自分を出せるように準備していきたい」と意気込んでいました。
《代表内定選手 紹介》
◇橋本大輝(はしもと・だいき)選手
橋本大輝選手は、千葉県出身の22歳です。6歳の時に2人の兄の影響で体操を始めました。手足の先まで伸びた美しい演技にダイナミックさを兼ね備え、「ゆか」や「跳馬」、それに「鉄棒」を得意としています。
2019年に高校生で史上2人目となる世界選手権代表に選ばれ、日本の団体銅メダル獲得に貢献しました。3年前、NHK杯で初優勝を果たして東京オリンピック出場を決め、を獲得したほか、種目別の鉄棒を制し、を築き上げました。
去年の世界選手権では内村航平さん以来となる史上4人目の個人総合2連覇を果たしたほか、種目別の鉄棒、それに団体で3冠を達成しました。
ことしはパリオリンピックでの2連覇を見据えて苦手種目のつり輪に取り組んできたほか、平行棒でも新しい技を取り入れるなどして4月の全日本選手権に臨み難度の高い演技構成を着実にまとめ、4連覇を果たしました。
◇岡慎之助(おか・しんのすけ)選手
岡慎之助選手は、岡山県出身の20歳。4歳で体操を始め、柔軟性のある美しい体操を持ち味に、です。
中学を卒業したあと、アテネオリンピック男子団体金メダリストの米田功さんが監督を務める「徳洲会体操クラブ」に所属しました。しかし、おととしの全日本選手権で予選3位で決勝に進みましたが、4種目目の跳馬で着地に失敗し、右ひざの前十字じん帯を断裂して全治8か月の大けがをしました。
手術後、リハビリに励みながら苦手な「つり輪」の克服に取り組み、技の難しさを示す「Dスコア」を大きく上げるなど4月の全日本選手権では得意種目の「平行棒」に加え、「つり輪」でも高得点をマークしました。
◇萱和磨(かや・かずま)選手
萱和磨選手は、千葉県出身の27歳。ミスの少ない安定した演技で「あん馬」や「平行棒」などの種目を得意とし、初めて出場した東京オリンピックでは、あん馬で銅メダルを獲得し、しました。
2022年のNHK杯はパリオリンピックに向け、得意の「あん馬」のほか「鉄棒」や「ゆか」の技を大幅に変え、難度の高い演技構成に挑戦しましたが4位に終わり、代表入りを逃しました。その悔しさを胸に、ことしは技の出来栄えを示す「Eスコア」にこだわって“美しく失敗しない体操”を目指したほか、最大の持ち味の安定感にさらに磨きをかけ、4月の全日本選手権で3位に入りました。
◇杉野正尭(すぎの・たかあき)選手
杉野正尭選手は、三重県出身の25歳。6歳で体操を始め、体操の強豪・鯖江高校からアテネオリンピックの団体金メダリスト、米田功さんが監督を務める「徳洲会体操クラブ」でキャプテンを務めています。
1メートル70センチと鉄棒とあん馬を得意種目としています。このうち鉄棒では、日本選手では、ほとんど取り組んでいないF難度の大技「ペガン」など難度の高い技をこなし、2022年の全日本シニア選手権では、個人総合で優勝しました。
4月の全日本選手権でも鉄棒で全体トップ、あん馬で3位に入るなど、スペシャリストとして力を発揮していました。3年前、東京オリンピックの代表入りをあと一歩のところで逃し、初のオリンピック出場を目指していました。
◇谷川航(たにがわ・わたる)選手
谷川航選手は、千葉県出身の27歳。小学1年生の時に体操を始め、としています。高校3年生だった2014年に全日本種目別選手権のゆかで3位に入り、2年後の同じ大会では跳馬で優勝しました。
2017年に初めて世界選手権の代表に選ばれると、その後、3年連続で代表に選ばれました。東京オリンピックの団体では、跳馬で世界最高難度の大技「リ・セグァン2」を決めて15点台の高得点をマークするなど、日本の銀メダル獲得に貢献しました。
おととしの世界選手権では、個人総合の6種目すべてで大きなミスのない安定感のある演技を見せて銅メダルを獲得しました。弟の翔選手とともに出場した去年のアジア大会では、種目別の「跳馬」で日本勢で45年ぶりとなる金メダルを獲得していました。