「終末しゅうまつの氷河ひょうが」の下したに押おうし寄よせる海水かいすい、海面上昇かいめんじょうしょうを悪化あっかさせる可能性かのうせい　新研究しんけんきゅう

南極西部なんきょくせいぶのスウェイツ氷河ひょうがでは、氷河ひょうがの下したに数すうキロにわたって海水かいすいが押おし寄よせ、これまで考かんがえられていたよりも融解ゆうかいしやすくなっていることが分わかった。宇宙うちゅうからのレーダーデータを使つかってこの氷河ひょうがをＸ線撮影せんさつえいした新あたらしい研究けんきゅうによって明あきらかになった。

米国科学べいこくかがくアカデミー紀要きように２０日はつかに発表はっぴょうされた研究けんきゅうによると、塩分えんぶんを含ふくんだ比較的暖ひかくてきあたたかい海水かいすいが流ながれ込こむことで氷河ひょうがの下したで「活発かっぱつな融解ゆうかい」が起おこっており、地球全体ちきゅうぜんたいの海面上昇かいめんじょうしょうの予測よそくが過小評価かしょうひょうかされている可能性かのうせいがあるという。

スウェイツ氷河ひょうがは、その崩壊ほうかいが壊滅的かいめつてきな海面上昇かいめんじょうしょうを引ひき起おこす可能性かのうせいがあることから「終末しゅうまつの氷河ひょうが」の異名いみょうを持もつ。米べいフロリダ州しゅうに匹敵ひってきする面積めんせきを持もつ世界最大せかいさいだいのこの氷河ひょうがは、南極なんきょくで最もっとも脆弱ぜいじゃく（ぜいじゃく）で不安定ふあんていな氷河ひょうがでもあるとされる。それは主おもに氷河ひょうがのある地形ちけいが下向したむきに傾斜けいしゃしており、海水かいすいが氷こおりをむしばむためだ。

すでに世界せかいの海面上昇かいめんじょうしょうの４％を占しめているスウェイツ氷河ひょうがには、海面かいめんを６０センチ以上上昇いじょうじょうしょうさせるのに十分じゅうぶんな氷こおりがある。さらにこの氷河ひょうがには南極西部なんきょくせいぶの周囲しゅういの氷こおりをせき止とめる天然てんねんのダムの役割やくわりも果はたしているため、科学者かがくしゃたちはスウェイツ氷河ひょうがが完全かんぜんに崩壊ほうかいすれば、最終的さいしゅうてきな海面上昇幅かいめんじょうしょうはばは約やく３メートルに達たっすると見積みつもっている。

米べいカリフォルニア大学だいがくアーバイン校こうの科学者かがくしゃらが率ひきいる氷河学者ひょうががくしゃチームは、昨年さくねん３月がつから６月がつにかけて収集しゅうしゅうされた高解像度こうかいぞうどの衛星えいせいレーダーデータを用もちいて氷河ひょうがのＸ線画像せんがぞうを作成さくせいした。これにより、スウェイツ氷河ひょうがの「接地線せっちせん」（氷河ひょうがが海底かいていから隆起りゅうきし、海うみに浮うかぶ氷棚ひょうほうとなるポイント）の変化へんかを把握はあくすることができた。接地線せっちせんは氷床ひょうしょうの安定あんていに不可欠ふかけつであり、スウェイツ氷河ひょうがの脆弱性ぜいじゃくせいを示しめす重要じゅうようなポイントだが、これまで調査ちょうさは困難こんなんだった。

チームは、海水かいすいが何なんキロにもわたって氷河ひょうがの下したに流ながれ込こみ、潮しおの満みち引ひきに従したがって再ふたたび外そとに流ながれ出でていくのを観察かんさつした。海水かいすいが流ながれ込こむと、氷河ひょうがの表面ひょうめんを何なんセンチも押おし上あげるという。

研究けんきゅうによると、１２時間じかんの潮しおの満みち引ひきのサイクルによって接地線せっちせんは６．４キロ近ちかく移動いどうする可能性かのうせいがあることから、研究者けんきゅうしゃは接地線せっちせんよりも「接地帯せっちたい」という用語ようごのほうが適切てきせつだと示唆しさしている。

短時間たんじかんにかなりの距離きょりを移動いどうする海水かいすいの速度そくどは、氷河ひょうがの融解ゆうかいを促進そくしんする。これは氷こおりが溶よけるとすぐに淡水たんすいが洗あらい流ながされ、より暖あたたかい海水かいすいと入いれ替かわるからだという。

研究者けんきゅうしゃは「広範囲こうはんいに膨大ぼうだいな海水かいすいが入はいり込こむこの過程かていは、南極大陸なんきょくたいりくからの海面上昇かいめんじょうしょうの予測よそくを増大ぞうだいさせるだろう」と語かたる。