ピアニストのフジコ・ヘミングさん死去しきょ「奇蹟きせきのカンパネラ」

フジコ・ヘミングさんはスウェーデン人じんの父ちちと日本人にっぽんじんの母ははとの間まに生うまれ、ピアノ教師きょうしの母ははの手てほどきで5歳さいからピアノを始はじめました。

早はやくから才能さいのうを見みせ、17歳さいでピアニストとしてデビュー、東京とうきょう芸術げいじゅつ大学だいがくを卒業そつぎょう後ごは28歳さいでドイツに留学りゅうがくし、ヨーロッパを拠点きょてんに活動かつどうしました。

しかし、自身じしんのキャリアをかけた重要じゅうような演奏えんそう会かいの直前ちょくぜんにかぜをこじらせ、一時いちじ、耳みみが全まったく聞きこえなくなるなど、ピアニストとして不遇ふぐうの時代じだいを過すごしました。

フジコさんの波乱はらんに富とんだ人生じんせいと再起さいきにかける日々ひびを追おった25年ねん前まえ（1999年ねん）のNHKのドキュメンタリーが大おおきな反響はんきょうを呼よび、同おなじ年としに出だしたファーストアルバム『奇蹟きせきのカンパネラ』は200万まん枚まい以上いじょうを売り上うりあげ、クラシック界かいでは異例いれいの大だいヒット。60代だいの遅咲おそざきのピアニストとして「フジコブーム」が起おきました。

フジコさんは、リストとショパンの演奏えんそうで高たかく評価ひょうかされ、世界せかいの著名ちょめいなオーケストラと共演きょうえんするなど各地かくちでコンサートを開ひらき、90歳さいを過すぎても精力せいりょく的てきに演奏えんそう活動かつどうを続つづけていました。

逆境ぎゃっきょうに負まけず強つよく生き抜いきぬいてきた姿すがたと、温あたたかい人柄ひとがらがにじみ出にじみでる豊ゆたかな演奏えんそうは長年ながねん、多おおくの人々ひとびとを魅了みりょうしてきました。

フジコ・ヘミング財団ざいだんによりますと、フジコさんは去年きょねん11月つきに自宅じたくで転倒てんとうしてけがをしたあと、ことし3月つきにはすい臓すいぞうがんと診断しんだんされ療養りょうようしていましたが、先月せんげつ21日にちに92歳さいで亡なくなりました。

『奇蹟きせきのカンパネラ』200万まん枚まいを超こえる

クラシック界かいにフジコブームを巻き起まきおこしたフジコ・ヘミングさん。

広ひろく世よに知しられたのは1999年ねんに放送ほうそうされたNHKのドキュメンタリー番組ばんぐみ「フジコ～あるピアニストの軌跡きせき～」がきっかけでした。

当時とうじ、無名むめいだったフジコさんの波乱はらんに富とんだ人生じんせいとピアニストとして再起さいきにかける日々ひびを追おったこの番組ばんぐみは大おおきな反響はんきょうを呼よび、放送ほうそう後ご、NHKには「もう一度もういちどフジコさんのピアノを聴ききたい」といった手紙てがみや電話でんわが1000件けん以上いじょう寄よせられました。

この番組ばんぐみは何なん度ども再さい放送ほうそうされ、続編ぞくへんも作つくられました。

フジコ・ヘミングさんの歩あゆみ

自身じしんの演奏えんそうについて「少すこし間違まちがってもかまわない。機械きかいじゃあるまいし」とおおらかに語かたったフジコさん。その生き方いきかたは多おおくの人ひとの心こころを捉とらえました。

スウェーデン人じんの父ちちと日本人にっぽんじんの母ははのもとにドイツで生うまれたフジコさん。家族かぞくで日本にっぽんに帰国きこくし、ピアノ教師きょうしの母ははの指導しどうの下した、5歳さいからピアノを学まなび始はじめました。

しかし、父ちちは戦争せんそうが始はじまる直前ちょくぜんにスウェーデンに帰国きこくし、母親ははおやとともに苦くるしい生活せいかつを送おくります。

それでも早はやくから才能さいのうを開花かいかさせ、東京とうきょう芸術げいじゅつ大学だいがくを卒業そつぎょう後ごにドイツへの留学りゅうがくを目指めざしますが、スウェーデンにも日本にっぽんにも国籍こくせきはないとされてパスポートが取得しゅとくできず、「避難ひなん民みん」としてドイツに渡わたったときには、すでに28歳さいとピアニストとしては出遅でおくれていました。

それでも、現地げんちのベルリン音楽おんがく学校がっこうを優秀ゆうしゅうな成績せいせきで卒業そつぎょうし、世界せかい的てき指揮しき者しゃのバーンスタインにも注目ちゅうもくされるなど頭角とうかくを現あらわしました。

しかし、自身じしんのキャリアをかけた大事だいじな演奏えんそう会かいの直前ちょくぜんにかぜをこじらせて聴力ちょうりょくを失うしない、栄光えいこうをつかみ損そこねたフジコさんは次第しだいに音楽おんがく界かいから忘れ去わすれさられました。

失意しついの中なか、ストックホルムに移住いじゅうし耳みみの治療ちりょうをするかたわら、ヨーロッパ各地かくちで演奏えんそう活動かつどうを続つづけていました。

その後そのご、母ははの死しをきっかけに30年ねんほど続つづけた海外かいがい生活せいかつに終止符しゅうしふを打うち、日本にっぽんに帰国きこくしたフジコさんはNHKの番組ばんぐみで大おおきな注目ちゅうもくを浴あび、60代だいの遅咲おそざきのピアニストとして改あらためて評価ひょうかされました。

中なかでもリストとショパンの演奏えんそうは高たかい評価ひょうかを受うけていて、特とくにリストの「ラ・カンパネラ」は複雑ふくざつかつ超絶ちょうぜつ的てきな技巧ぎこうで知しられる難曲なんきょくですが、「自分じぶんのカンパネラが一番いちばん気に入きにいっている」と語かたるフジコさんの演奏えんそうは迫力はくりょくに満みちていました。

さらにショパンの「ノクターン」は、郷愁きょうしゅうを帯おびたゆったりとした演奏えんそうで評判ひょうばんを呼よびました。

ピアニストとしての活動かつどうの一方いっぽうで、保護ほご猫ねこを多数たすう引き取ひきとるなど動物どうぶつ愛護あいごの活動かつどうを実践じっせんしたり、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの際さいにはチャリティーコンサートを開ひらいたりして社会しゃかい活動かつどうにも積極せっきょく的てきで、優やさしく温あたたかい人柄ひとがらで知しられました。

去年きょねん11月つきにけが 治療ちりょうとリハビリに励はげむ

財団ざいだんによりますとフジコさんは去年きょねん11月つきにけがをして以降いこう、一いち日にちも早はやく復帰ふっきしてピアノを弾はじきたいという強つよい意志いしを持もって治療ちりょうとリハビリに励はげんでいて、病室びょうしつでピアノを弾ひいたこともあったということです。

そして、ことし3月つきに予定よていしていたニューヨーク・カーネギーホールでの公演こうえんや日本にっぽんでの公演こうえんを楽たのしみにしていたということです。

フジコさんの財団ざいだんは「奇蹟きせきの『カンパネラ』を再ふたたび弾はじける日ひが来くることをフジコ・ヘミング本人ほんにんともども切せつに祈いのっておりましたが、もう叶かなえることはできません。しかし、これから先さきも、フジコ・ヘミングの魂たましいの演奏えんそうの思い出おもいでが皆みなさまの心こころの中なかで奏かなで続つづけられることを願ねがっております」とするコメントを発表はっぴょうしました。