津波の被災地では住まいやインフラの復興が進んだ一方、地域のにぎわいをどう取り戻すかや原発事故からの復興など長期的な課題が残されたままです。
11年半前の3月11日、東北沖でマグニチュード9.0の巨大地震が発生し高さ10メートルを超える大津波が押し寄せ、東京電力福島第一原子力発電所は3基の原子炉が次々にメルトダウンを起こし、多くの住民が避難を余儀なくされました。
東北地方では宮城、岩手、福島、青森、山形の5県で合わせて1万5838人が亡くなり、2520人の行方が今もわかっていません。
また復興庁によりますと、避難生活による体調の悪化などで亡くなったいわゆる「震災関連死」はことし3月末の時点で、東北地方で合わせて3735人となっています。
「関連死」を含めた死者と行方不明者は少なくとも2万2093人にのぼります。
また福島県では震災と原発事故のあと県内外で避難生活を続けている住民は9日現在で2万9208人となっています。
津波による被害を受けた被災地では住まいの再建や道路や港などのインフラの復旧はほぼ完了していますが、岩手県で区画整理事業として整備された沿岸部の多くの土地が空き地となっているほか、岩手県や宮城県では水産業など経済の再生が道半ばで地域のにぎわいを取り戻し、どう持続させていくかが大きな課題となっています。
また岩手県と宮城県それに福島県では最大クラスの津波が発生した場合の新しい浸水想定がことし発表されました。
このうち岩手県と宮城県の想定では震災を上回る範囲で浸水が予想されていて多くの被災地では震災での被害を基準にまちづくりを進めてきたため、すでに作成した地域の防災計画などの見直しを迫られています。
一方、福島県では立ち入りが厳しく制限される「帰還困難区域」が設定された一部の自治体では先行して除染とインフラ整備を進める「特定復興再生拠点区域」が設けられ、ことし6月以降、住民の帰還が始まり、これまで帰還ができていなかった双葉町では先月30日からようやく始まりました。
ただ県内には帰還困難区域が残されていて、拠点区域の外「拠点外」の地域の復興についてはまだ見通しが立っていません。
また除染で出た土などについても2045年までに県外で最終処分することが法律で決められていますが、その道筋は不透明な状況であるほか来年春ごろには原発の処理水の放出が迫っていて福島の復興は解決が難しい「残された課題」に向き合う新たな段階に入ります。