この教訓をもとに、国は、危険度や住民が取るべき行動を端的に伝えるため、防災情報を5段階の警戒レベルに分けることにし、気象庁は、29日午後から運用を始めました。
5段階の大雨警戒レベルは、最も低いレベル1が最新情報に注意、レベル2は避難方法を確認する段階です。
警戒レベル3は自治体から避難準備の情報が出され、高齢者や体の不自由な人が避難を始める段階です。気象庁が発表する大雨や洪水の警報はレベル3に相当します。
警戒レベル4は自治体から避難指示や避難勧告が出され、高齢者だけでなく対象地域の全員が避難する段階です。土砂災害警戒情報や氾濫危険情報がレベル4にあたります。
警戒レベルが最も高い5は「災害発生」です。大雨特別警報や川の氾濫発生情報が発表される状況で、少しでも命が助かるような行動をとる必要があります。
気象庁は29日午後から警戒レベルの運用を始め、土砂災害警戒情報や氾濫の危険性に関する情報に相当する警戒レベルを明記するほか、ホームページの表示も順次、改修することにしています。
また、自治体が発表する避難指示や避難勧告などに警戒レベルを付ける運用は、29日から広島県や愛媛県などの自治体で始まったほか、全国のほかの自治体でも準備が整ったところから始まる予定です。
5段階に分けられた大雨警戒レベル。発表される情報や住民が取るべき行動は次のとおりです。
レベル1
警戒レベル1は「最新の情報に注意」する段階です。気象庁のホームページにある「早期注意情報※」を見て、数日先までの間に大雨警報などが発表される可能性を確認してください。(※「警報級の可能性」から名称変更)
レベル2
警戒レベル2は「避難方法を確認」する段階です。大雨・洪水注意報や川の氾濫注意情報が発表されたら、ハザードマップで自分が住んでいる地域の危険性を改めて確認し、避難場所や避難する経路を確認してください。
レベル3
警戒レベル3。キーワードは「高齢者など避難」です。高齢者や体の不自由な人などは避難を始め、そのほかの人も避難の準備を始めてください。大雨・洪水警報や川の氾濫警戒情報が発表され、自治体からは避難準備の情報が出されます。
レベル4
警戒レベル4は「全員避難」。高齢者などに限らず、対象地域の全員が避難する段階です。「土砂災害警戒情報」や「氾濫危険情報」が発表され、自治体からは「避難勧告」や「避難指示」が出されます。このレベル4の段階で避難することが重要です。避難場所に移動するとかえって危険な場合には、近くの安全な場所や、建物内のより高い場所などで身の安全を確保してください。
警戒レベル5
警戒レベル5は氾濫発生情報や大雨特別警報が発表され、すでに災害が発生、または発生している可能性が極めて高い状況です。避難場所への移動は手遅れになっているおそれがあります。少しでも命が助かるような行動を取ってください。
避難のポイント 「レベル5」を待たない!
レベル5になってから避難を始めるのは手遅れになるおそれがあります。「まだレベル5があるから大丈夫」と思わず、追い込まれる前にレベル4の段階で避難を終えてください。
専門家「課題も残る」
避難のタイミングを直感的に伝えようと導入された大雨の警戒レベル。防災心理学の専門家は、わかりやすくなる一方で、課題も残ると指摘しています。
レベル3や4は安心情報!?
兵庫県立大学の木村玲欧 教授が挙げる懸念の1つが、情報が軽視されるいわゆる「オオカミ少年効果」です。
今回、レベル3=「高齢者など避難」、レベル4=「全員避難」というキーワードが打ち出されましたが、大雨のシーズンにはレベル3や4にあたる情報が頻繁に発表されることが予想されます。
避難しても何も起きないということが繰り返されれば、「レベル5まで待とう」という心理になり、レベル3や4が逆に安心情報になってしまうと指摘します。
同じレベル4でも異なる行動
もう1つの懸念が、同じ「レベル4」でも取るべき避難行動が状況に応じて変わることです。
大雨の際の避難には、離れた避難場所などに移動する「水平避難」と、すでに状況が悪化して避難場所などへの移動が難しい場合に、建物の2階以上などより安全な部屋に移動する「垂直避難」があります。
“レベル4=全員避難”と単純でわかりやすくなった一方、状況に応じてとるべき行動が変わることが住民に認識されなければ、避難中にかえって命の危険にさらされる可能性があると言います。
木村教授は「わかりやすくなった一方で、課題も残っている。住民は情報の意味をしっかりと認識する必要があるし、国はレベル化したことで住民の行動がどう変化するか検証して改善していく必要がある」と話しています。