危険きけん性せい高たかいウイルスの取り扱とりあつかい 住民じゅうみんに伝達でんたつ 国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょ

こうした中なか、来年らいねんの東京とうきょうオリンピック・パラリンピックで、海外かいがいからの渡航とこう者しゃが増ふえるため、さまざまな感染かんせん症しょうへの対策たいさくを強化きょうかしたいとして、国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょは30日にち、地元じもとの住民じゅうみんや自治体じちたいとの協議きょうぎ会かいを開ひらき、エボラ出血熱えぼらしゅっけつねつなど危険きけん性せいが最もっとも高たかいとされる、５ご種類しゅるいのウイルスを海外かいがいから輸入ゆにゅうして保管ほかんし、検査けんさなどに使用しようする計画けいかくを正式せいしきに伝つたえました。

また、今後こんご、厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんが地元じもとに対にたいして説明せつめいに訪おとずれることも明あきらかにしました。

ウイルスを持ち込もちこむ時期じきについては、テロ対策たいさくなどの観点かんてんから公表こうひょうしないとしています。

協議きょうぎ会かいでは、住民じゅうみんの代表だいひょうから不安ふあんは解消かいしょうされていないとする意見いけんなどが出だされ、研究所けんきゅうじょの担当たんとう者しゃは「安全あんぜん対策たいさくのさらなる強化きょうかを検討けんとうするほか、何なにをしているのか積極せっきょく的てきに情報じょうほうを開示かいじして、透明とうめい性せいを高たかめたい」と説明せつめいしていました。

研究所けんきゅうじょ「住民じゅうみんの理解りかい得えるよう努つとめる」

国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょの脇田わきた隆たかし字じ所長しょちょうは「研究所けんきゅうじょとしては、一定いっていの理解りかいをいただいていると考かんがえているが、住民じゅうみんの方々かたがたの不安ふあんが完全かんぜんに解消かいしょうできていないことは十分じゅうぶんに把握はあくしている。今後こんごも可能かのうなかぎり施設しせつの透明とうめい性せいを高たかめて、地元じもとに丁寧ていねいに説明せつめいを尽つくしながら、より一層いっそう、理解りかいが得えられるように努つとめていきたい」と話はなしています。

自治じち会かい代表だいひょう「不安ふあんがあり施設しせつ移転いてんを求もとめる」

地元じもとの自治じち会かいの代表だいひょうとして協議きょうぎ会かいに参加さんかした須藤すとう博ひろしさんは、「危険きけんな病原びょうげん体たいに対応たいおうできるように備そなえることは大事だいじだと思おもうが、住民じゅうみんにはまだ不安ふあんがあり、危険きけんな病原びょうげん体たいを保管ほかんするならば、施設しせつを移転いてんする決定けっていをして、さらにその時期じきも示しめしてもらわなければ納得なっとくはできない。今後こんごも研究所けんきゅうじょや国くにに施設しせつの安全あんぜん性せいの向上こうじょうと移転いてんを、引き続ひきつづき求もとめていきたい」と話はなしていました。

持ち込もちこまれる病原びょうげん体たいと施設しせつ

海外かいがいから輸入ゆにゅうするのはエボラ出血熱えぼらしゅっけつねつ、南米なんべい出血しゅっけつ熱ねつ、ラッサ熱ねつ、クリミア・コンゴ出血しゅっけつ熱ねつ、マールブルグ病びょうの合あわせて５いつつの病気びょうきの原因げんいんとなるウイルスで、いずれも最もっとも危険きけん性せいが高たかい病原びょうげん体たいとされています。

病原びょうげん体たいを扱あつかう施設しせつは、設備せつびに応おうじてＢび-ＳＬえすえる１いちから４よんまでの４よん段階だんかいにわけて、取り扱とりあつかうことができる病原びょうげん体たいの種類しゅるいが定さだめられています。

そのうち、最もっとも危険きけんな病原びょうげん体たいを扱あつかうのはＢび-ＳＬえすえる４よんの施設しせつで、アメリカやイギリス、それにフランスのほか、中国ちゅうごくなど20か国かこく以上いじょうに60近ちかくの施設しせつが運用うんようされています。

国内こくないでは国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょ村山むらやま庁舎ちょうしゃに４よん年ねん前まえに整備せいびされましたが、地元じもとの理解りかいが得えられていないとして最もっとも危険きけん性せいが高たかい病原びょうげん体たいの取り扱とりあつかいはしていませんでした。

そして、この施設しせつでは一いち段階だんかい低ひくいＢび-ＳＬえすえる３さんとしての稼働かどうにとどめ、新型しんがた肺炎はいえんの「ＳＡＲＳ」や鳥とりインフルエンザウイルスの研究けんきゅうや分析ぶんせきを行おこなってきました。

Ｂび-ＳＬえすえる４よんの設備せつびとしては、密閉みっぺいされた「安全あんぜんキャビネット」と呼よばれる作業さぎょうスペースがあり、取り付とりつけられたゴム手袋てぶくろに手てを入いれて検査けんさなどの作業さぎょうを行おこなうことができるようになっています。

この区域くいきは二に重じゅうの扉とびらで区切くぎられているほか、室内しつないの気圧きあつが外そとよりも低ひくく設定せっていされ、排気はいき設備せつびにも特別とくべつなフィルターが取り付とりつけられて、室内しつないのものが外そとに漏もれ出でないようにしているということです。

室内しつないでの作業さぎょうは専門せんもんの訓練くんれんを受うけた職員しょくいんが防護ぼうご服ふくを着用ちゃくようして行おこない、作業さぎょうの様子ようすは監視かんしカメラで記録きろくされていて、実際じっさいのウイルスを使つかった精度せいどの高たかい検査けんさや診断しんだんのための作業さぎょうが行おこなわれます。

エボラ出血熱えぼらしゅっけつねつに感染かんせんしたことが疑うたがわれる患者かんじゃが出でた場合ばあい、患者かんじゃの血液けつえきがこの施設しせつに送おくられてきます。

そして血液けつえきに含ふくまれる抗体こうたいと遺伝子いでんしを調しらべて本当ほんとうにエボラウイルスによる感染かんせんか調しらべることになります。

まず、抗体こうたいの検査けんさでは抗体こうたいがエボラウイルスに本当ほんとうに反応はんのうするか調しらべます。

そのため、本物ほんもののウイルスがないとこの検査けんさを行おこなうことができません。

また、遺伝子いでんしの検査けんさでは、血液けつえきから検出けんしゅつしたウイルスの遺伝子いでんし配列はいれつがエボラウイルスのものか調しらべますが、本物ほんもののウイルスの遺伝子いでんし配列はいれつと比較ひかくすることができれば正確せいかくに分析ぶんせきすることができます。

また、動物どうぶつに感染かんせんさせて経過けいかを観察かんさつすることで、治療ちりょうや診断しんだんの方針ほうしんをたてる基礎きそ的てきなデータも得えることができるとしています。

Ｂび-ＳＬえすえる４よんの施設しせつでは、ほかの施設しせつ以上いじょうに厳格げんかくな運営うんえいが求もとめられることになります。

作業さぎょうは常つねに２に人にん１いち組くみで実施じっしし、作業さぎょう上じょうの危険きけんがないかなど相互そうごに監視かんししてリスクを抑おさえるほか、関係かんけい者しゃに対にたいしてふだんからトレーニングを行おこない、病原びょうげん体たいを施設しせつの外そとに漏もれ出だすことがないよう体制たいせいをとるとしています。

そのほか、テロ対策たいさくも重要じゅうようになります。

施設しせつの人ひとの出入でいりを記録きろくして厳格げんかくに管理かんりするほか、監視かんしカメラで建物たてものの周辺しゅうへんも監視かんしすることになっています。

こうした施設しせつで最もっとも多おおく起おきるとされている事故じこは、作業さぎょう中ちゅうに注射ちゅうしゃ器きの針はりなどで作業さぎょう者しゃが誤あやまって自分じぶんを刺さすことで感染かんせんしてしまう「針刺はりさし事故じこ」です。

こうした場合ばあいには「自己じこ隔離かくり」という緊急きんきゅう対応たいおうの手順てじゅんがあり、感染かんせんしたおそれがある人ひとが施設しせつ内ないにとどまって、熱ねつを測はかったり体調たいちょうの変化へんかを観察かんさつしたりして感染かんせんしているかどうか判断はんだんできるまで自分じぶんで自分じぶんを隔離かくりするという手順てじゅんも定さだめられています。

施設しせつの運用うんようにあたっては、計画けいかくや実績じっせきなどの情報じょうほう公開こうかいを積極せっきょく的てきに行おこなうことや、関係かんけい者しゃへのトレーニングなどを適切てきせつに実施じっしして、不測ふそくの事態じたいを絶対ぜったいに起おこさないことが求もとめられます。