民法みんぽうなどの改正かいせい案あんは、離婚りこん後ごに父ちちと母ははのどちらか一方いっぽうが子こどもの親権しんけんを持もつ今いまの「単独たんどく親権しんけん」に加くわえ、父ちちと母はは双方そうほうに親権しんけんを認みとめる「共同きょうどう親権しんけん」を導入どうにゅうするとしています。

そして父母ちちははの協議きょうぎによって共同きょうどう親権しんけんか単独たんどく親権しんけんかを決きめ、合意ごういできない場合ばあいは家庭かてい裁判所さいばんしょが親子おやこの関係かんけいなどを考慮こうりょして判断はんだんします。

裁判所さいばんしょがDV＝ドメスティック・バイオレンスや子こどもへの虐待ぎゃくたいがあると認みとめた場合ばあいは単独たんどく親権しんけんとなります。

改正かいせい案あんは衆議院しゅうぎいん法務ほうむ委員いいん会かいで、自民じみん・公明こうめい両りょう党とうと立憲りっけん民主党みんしゅとう、日本にっぽん維新いしんの会かいの4党とうにより、▼共同きょうどう親権しんけんを選択せんたくする際さいに父母ちちはは双方そうほうの真意しんいによるものか確認かくにんする措置そちを検討けんとうすることなどを付則ふそくに盛り込もりこむ修正しゅうせいが行おこなわれました。

16日にちの衆議院しゅうぎいん本ほん会議かいぎでは採決さいけつに先立さきだち討論とうろんが行おこなわれました。

立憲りっけん民主みんしゅ党とうの道下みちした大樹だいき議員ぎいんは「意見いけんや価値かち観かんがわかれる非常ひじょうに重おもたい法案ほうあんで、修正しゅうせいして協議きょうぎ離婚りこんにおける共同きょうどう親権しんけんに同意どういした真意しんいを確認かくにんする措置そちを明記めいきできたのは大おおきな成果せいかだ。改正かいせい案あんが少すこしでも良よくなるように尽力じんりょくする」と述のべました。

共産きょうさん党とうの本村もとむら伸子のぶこ議員ぎいんは「共同きょうどう親権しんけんの導入どうにゅうで虐待ぎゃくたいから逃のがれられなくなるなど重大じゅうだいな懸念けねんに応こたえておらず改正かいせい案あんに反対はんたいする。裁判所さいばんしょによって不ふ本意ほんいな共同きょうどう親権しんけんが強制きょうせいされ、親おやや子こどもの利益りえきが害がいされる懸念けねんがある」と述のべました。

このあと採決さいけつが行おこなわれ、改正かいせい案あんは自民じみん・公明こうめい両りょう党とうと立憲りっけん民主党みんしゅとう、日本にっぽん維新いしんの会かい、国民こくみん民主党みんしゅとう、教育きょういく無償むしょう化かを実現じつげんする会かいなどの賛成さんせい多数たすうで可決かけつされ参議院さんぎいんに送おくられました。

共産党きょうさんとうとれいわ新選しんせん組ぐみは反対はんたいしました。

また自民党じみんとうの野田のだ・元もと総務そうむ大臣だいじんが反対はんたいしました。

改正かいせい案あんは今いまの国会こっかいで成立せいりつする見通みとおしです。

付則ふそくと付帯ふたい決議けつぎの内容ないようは？

民法みんぽうなどの改正かいせい案あんは、野党やとう側がわから、離婚りこんする際さいに、父ちちと母ははがDVなどを理由りゆうに対等たいとうな立場たちばで協議きょうぎできず、共同きょうどう親権しんけんを強制きょうせいさせられる恐おそれがないか懸念けねんが出でたことなどを受うけて、自民じみん・公明こうめい両りょう党とうと立憲りっけん民主党みんしゅとう、日本にっぽん維新いしんの会かいの4党とうによる修正しゅうせい協議きょうぎが行おこなわれました。

その結果けっか、衆議院しゅうぎいん法務ほうむ委員いいん会かいで改正かいせい案あんの付則ふそくを修正しゅうせいし、

▼共同きょうどう親権しんけんを選択せんたくする際さいに父母ちちはは双方そうほうの真意しんいによるものか確認かくにんする措置そちを検討けんとうすることや

▼「共同きょうどう親権しんけん」のもとでも一方いっぽうの親おやのみで判断はんだんできる「急迫きゅうはくの事情じじょう」がある場合ばあいや「日常にちじょうの行為こうい」とはどのようなものか政府せいふが周知しゅうちすること、それに

▼法律ほうりつの施行しこう後ご、5年ねんをメドに見直みなおしを検討けんとうすることなどが盛り込もりこまれました。

また付帯ふたい決議けつぎもつけられ、

▼「急迫きゅうはくの事情じじょう」や「日常にちじょうの行為こうい」を具体ぐたい的てきに示しめすガイドラインを制定せいていすることや

▼家庭かてい裁判所さいばんしょの増員ぞういんなど体制たいせいを拡充かくじゅうすることなどを求もとめるとしています。

「共同きょうどう親権しんけん」導入どうにゅうめぐり さまざまな声こえ

「共同きょうどう親権しんけん」の導入どうにゅうをめぐっては、さまざまな声こえが上あがっています。

【賛成さんせい】“離婚りこん後ごも子こどもと関かかわることができる社会しゃかいに”

導入どうにゅうに賛成さんせいの立場たちばを取とる「親子おやこの面会めんかい交流こうりゅうを実現じつげんする全国ぜんこくネットワーク」代表だいひょうの武田たけだ典のり久ひささんは、「離婚りこんしたあとも子こどもと関かかわりたいと思おもっている人ひとたちが養育よういくに責任せきにんを持もつことができる制度せいどで、与野党よやとうの賛成さんせい多数たすうにより衆議しゅうぎ院いんで可決かけつされたことは喜よろこばしい」と評価ひょうかしました。

武田たけださんの団体だんたいには、「配偶はいぐう者しゃに無断むだんで子こどもを連れ去つれさられ、そのまま離婚りこん協議きょうぎに移うつって親権しんけんを取とられた」などという相談そうだんが寄よせられているといいます。

武田たけださんは、「共同きょうどう親権しんけんの導入どうにゅうや面会めんかい交流こうりゅうなどが適切てきせつに実施じっしされることで子こどもの連れ去つれさりの一定いっていの抑止よくしにつながり、離婚りこんしたあとも子こどもと関かかわることができる社会しゃかいになると期待きたいしている」と話はなしています。

【反対はんたい】“DVのおそれあるケースに対処たいしょできるか”

一方いっぽう、導入どうにゅうに反対はんたいの立場たちばを取とる「『離婚りこん後ご共同きょうどう親権しんけん』から子こどもを守まもる実行じっこう委員いいん会かい」の代表だいひょう世話人せわにんで和光わこう大学だいがくの熊くま上じょう崇たかし教授きょうじゅは、DV＝ドメスティック・バイオレンスのおそれがあるケースに対処たいしょできるか、疑問ぎもん視ししています。

法案ほうあんでは、DVや子こどもへの虐待ぎゃくたいのおそれがある場合ばあい、家庭かてい裁判所さいばんしょが判断はんだんして単独たんどく親権しんけんにしなければならないとされていますが、熊くま上じょう教授きょうじゅは「精神せいしん的てき・経済けいざい的てきなDVや物的ぶってき証拠しょうこがない場合ばあいは、裁判所さいばんしょが適切てきせつに判断はんだんせず、共同きょうどう親権しんけんになるおそれがある」と述のべています。

また、「離婚りこん後ごも、差し迫さしせまった場合ばあいを除のぞいて子こどもの進学しんがくや医療いりょう、転居てんきょなどには双方そうほうの親権しんけん者しゃの合意ごういが必要ひつようになる。このため合意ごういを盾たてに、子こどもと同居どうきょする親おやが別居べっきょしているもう一方いっぽうの親おやに支配しはいされるおそれがある」と主張しゅちょうしています。

盛もり山文やまぶん科か相しょう ”就学しゅうがく支援しえん金きん 個別こべつケースごと対応たいおう”

盛もり山文やまぶん部ぶ科学かがく大臣だいじんは閣議かくぎの後のちの記者きしゃ会見かいけんで、共同きょうどう親権しんけんと、高校こうこうの授業じゅぎょう料りょう負担ふたんを軽減けいげんする就学しゅうがく支援しえん金きんとの関係かんけいについて「保護ほご者しゃなどの収入しゅうにゅうに基もとづいて受給じゅきゅう資格しかくの認定にんていをするということなので、共同きょうどう親権しんけんであれば、親権しんけん者しゃ2人にん分ぶんの収入しゅうにゅうに基もとづいて判定はんていを行おこなうことに当然とうぜんなる」と述のべました。

その上うえで「何なんらかのトラブルがあって、もう1人にんの親権しんけん者しゃと連絡れんらくが取とれないということなどになった場合ばあいは、個別こべつのケースごとに法務省ほうむしょうなどと相談そうだんしながら対応たいおうしていく」と述のべました。

林はやし官房かんぼう長官ちょうかん「子この利益りえきを確保かくほすることにつながる」

林はやし官房かんぼう長官ちょうかんは午後ごごの記者きしゃ会見かいけんで「父母ちちははが離婚りこん後ごも適切てきせつな形かたちで子この養育よういくに関かかわり、責任せきにんを果はたすことが重要じゅうようで、法案ほうあんは、父母ちちははの離婚りこんに直面ちょくめんする子この利益りえきを確保かくほすることにつながるものだ。引き続ひきつづき、国会こっかい審議しんぎなどを通をつうじて改正かいせい内容ないようを丁寧ていねいに周知しゅうちしていく」と述のべました。