物価の
上昇による
実質賃金の
減少が
続く中、「
インフレ手当」として
一時金や
毎月の
手当の
支給を
行った
企業は、
予定を
含めると12%
余りに
上ることが
民間の
信用調査会社の
調査で
分かりました。
「検討中」も含めると全体の4社に1社となっていて、信用調査会社は「手当を支給する動きが広がっている」としています。
民間の信用調査会社「帝国データバンク」は、景況感の聞き取りを定期的に行っている全国の企業を対象に、今月11日から15日にかけてアンケート調査を行い、1248社から回答を得ました。
それによりますと、物価高騰をきっかけに従業員に対して「インフレ手当」を支給したか尋ねたところ、
▽「支給した」が6.6%、
▽「支給を予定している」が5.7%と合わせて12.3%に上りました。
さらに
▽「支給していないが、検討中」は14.1%と、すでに支給を決めた企業と合わせると26.4%となり、全体の4社に1社となっています。
支給の予定や検討中の企業も含めて「インフレ手当」の支給方法を聞いたところ、「一時金」が多く、平均の支給額はおよそ5万3700円でした。
また、期間を限定して毎月の給与に上乗せする「月額手当」の場合は、平均の支給額はおよそ6500円となっています。
支給の理由としては、
「食料品などの値上げラッシュによる実質賃金の減少を補うため」、
「従業員のモチベーション向上や人材の流出を防ぐため」
などという声が聞かれました。
「帝国データバンク」は「インフレ手当を支給する動きが広がっているが、本来であれば物価上昇分は手当ではなく、基本給を引き上げるベースアップとして賃金に反映させるのが望ましいと考える。ただ、物価高による収益の悪化で賃上げや手当の支給ができない企業も多いのが現状だ。企業が販売価格に転嫁しやすい環境の整備や、賃上げを促す支援策の充実が求められる」と話していました。
“インフレ手当”支給の企業は
食料品などの
値上がりが
続く中、
従業員に「インフレ
手当」を
支給する
動きが
広がっています。
愛知県にある自動車部品などの製造会社は今月11日、国内のグループ会社を含めた従業員およそ8800人を対象に、総額でおよそ4億円を一時金として支給しました。
「インフレ手当」の1人当たりの支給額は、正社員は5万円、契約社員やパート社員は2万円で、会社としては初めての取り組みです。
この会社では、円安の影響で海外の売り上げが伸びたことや新車用の部品の販売が好調だったことなどから、今年度上期の売上と営業利益は過去最高を更新しました。
このため、従業員に還元すべきだと考えて「インフレ手当」の支給を決めました。
5
万円の
手当を
受け取った、
正社員として
働く副島綾香さん(35)は、
請求書の
管理など事務の
仕事を
担当しています。
副島さんは、共働きの34歳の夫と13歳から5歳までの娘3人、息子2人の7人家族です。
この物価高で食費の支出が大幅に増え、家計のやりくりに苦労しているといいます。
今回受け取った手当は、食費や光熱費のほか、今月、誕生日を迎える子どものケーキ代などに充てたいと考えています。
副島さんは「食べ盛りの子どもたちがいるので、節約しようにも限界があり今回の支給にすごく助かりました。仕事を頑張ろうという気持ちにもなりました」と話しています。
この会社では物価の上昇が続く中で、毎月の基本給を引き上げるベースアップも検討したいとしています。
日本特殊陶業の
磯部謙二上席執行役員は「
円安によって
会社の
業績は
かなり上振れした
一方、
円安による
物価高で
従業員は
苦しんでいて、
少しでも
還元したいという
思いで
支給を
決定しました。
物価の
上昇を
見極めて
賃上げなどを
検討していきたい」と
話しています。
消費者物価 上昇率 40年前と同水準も異なる賃金状況
「
値上げラッシュ」となった
先月・10
月の
消費者物価指数の
上昇率は、40
年前の1982
年2
月と
同じ水準となりましたが、
賃金をめぐる
状況は
異なっています。
総務省によりますと、1982年当時は第2次オイルショックの影響が続いていて、原油価格の高騰を要因とした光熱費の値上がりなどが続いていました。
ただ、物価が上昇しても、働く人の賃上げの水準はそれを上回っていました。
厚生労働省によりますと、1982年平均の実質賃金は、従業員30人以上の事業所を対象にした調査で、前の年と比べてプラス1.4%となっています。
一方で、ことし9月の実質賃金は、従業員5人以上の事業所が対象と調査の方法は当時と異なりますが、速報値で去年9月を1.3%下回り、6か月連続でマイナスとなっています。
来年の春闘を前に、企業の間では基本給を引き上げる「ベースアップ」を実施したり、一時金を支給したりするなどの動きが相次いでいます。
実質賃金のマイナスが続くと消費マインドが冷え込み、個人消費などへの悪影響が懸念されるだけに、物価の上昇を上回る賃上げを実現して、経済の好循環につなげることができるのかが課題となっています。
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