日銀総裁候補の
植田和男氏は71
歳。
マクロ経済学や金融論の分野では日本を代表する経済学者の1人です。
1974年に東京大学理学部を卒業後、経済学部の大学院で研究活動に取り組みます。
アメリカのマサチューセッツ工科大学大学院に留学し博士号を取得。
1993年に東京大学経済学部の教授となります。
そして1998年から7年間日銀の審議委員を務め、「ゼロ金利政策」や「量的緩和政策」の導入を理論面で支えました。
その後、東京大学大学院経済学研究科の教授として大学に戻りました。
2017年からは共立女子大学の教授を務めています。
また、日本政策投資銀行の社外取締役や日銀金融研究所の特別顧問など学外でも幅広く活動しています。
きょうのスケジュール
きょうの
衆議院議院運営委員会のスケジュールです。
所信聴取は午後1時すぎから始まりまず総裁候補の植田氏が所信を述べます。
その後、夕方にかけて各党議員からの質問を受けることになっています。
なお、日銀理事の内田眞一氏と前金融庁長官の氷見野良三氏の2人の副総裁候補への参議院での所信聴取はあす、28日に行われる予定です。
【衆議院 所信聴取での発言 ポイントは?】
先週24
日に
衆議院議院運営委員会で
行われた
植田氏への
所信聴取と
質疑で
どのような
発言があったのか。
主なポイントごとにまとめました。
1:大規模な金融緩和を継続するか
黒田総裁のもとで
続けられている
今の
大規模な
金融緩和。
植田氏はこれを継続し、2%の物価目標の実現を目指す考えを示しました。
「さまざまな
副作用が
生じているが、
経済・
物価情勢を
踏まえると、2%の
物価安定目標の
実現にとって
必要かつ
適切な
手法で
あると
思う。
これまで
日銀が
実施してきた
金融緩和の
成果を
しっかりと
継承し、
積年の
課題であった
物価安定の
達成というミッションの
総仕上げを
行う5
年間としたい」
2:物価の見通しと2%の物価目標の達成時期
2%の
物価安定目標の
実現には
なお時間が
かかるという
考えを
示しました。
「現在、わが国は、内外経済や金融市場をめぐる不確実性が極めて大きい状態だ。消費者物価の上昇率は2023年度半ばにかけて2%を下回る水準に低下していくと考えている」
「目標の2%を持続的に安定的に達成するためにはなお時間を要すると考えている」
3:2%の物価目標を盛り込んだ共同声明を見直すか
2%の
物価安定目標の
早期実現を
目指すとしている
政府・
日銀の
共同声明については、
直ちに見直す
必要はないという
考えを
示しました。
「2013年以降、政府と日本銀行がそれに沿って必要な政策を実施し、わが国経済は着実に改善し、その中で賃金も上昇、物価も持続的に下落するという意味でのデフレではなくなってきている。こういう意味で、政府と日本銀行の政策連携が着実に成果をあげてきたものと見ている。したがって直ちに見直すという必要があるというふうには今のところ考えていない」
4:“イールドカーブコントロール”の修正は
長期金利と
短期金利に
操作目標を
設けて
金融緩和策を
行う今の
枠組み「イールドカーブコントロール」については、
今後、
修正の
可能性もあるという
考えを
示唆しました。
「日銀は去年12月以降、副作用をなるべく緩和する意図のもと、さまざまな措置を採用し、現在はその効果を見守っている段階だと私は考えている。具体的なオプションの是非について申し上げることは、現時点では控えたいが、時間をかけて議論を重ね、望ましい姿を決めていきたい」
5:ETF=上場投資信託をどう扱うか
大規模な
金融緩和策で
大量に
買い入れた
複数の
株式を
集めてつくるETF=
上場投資信託をどう
扱うかという
問題については、
大きな問題だとしながらも
現時点で
具体的な
対応を
示すのは
時期尚早だという
考えを
示しました。
「大量に買ったものを今後どうしていくかは大きな問題で、出口が近づいてくる場合には、具体的に考えないといけない。ただ現在は具体的に言及するのはまだ時期尚早と考えている」と述べるにとどめました。
6:出口戦略の時期や手法は
金融緩和を
縮小する
いわゆる出口戦略について
問われたの
に対しては、
具体的なタイミングや
方法についての
言及を
避けました。
「
基調的なインフレ
率が2%に
達することが
見込まれる
状態になったときには、
現在採用しているさまざまな
強い
金融緩和の
措置を
平時の
姿に
戻していくということに
なる。
それが
具体的に
何を
意味するか、どういう
タイミングで、どういう
順序で
正常化していくかという
点については
現時点では
具体的に
お答えするのを
差し控えさせていただきたい」
7:市場との対話は
金融市場との
対話は
極めて重要だとした
上で
市場にとっての“サプライズ”は
最小限に
抑えたいという
考えを
示しました。
「市場との対話は極めて大事だと考えている。経済、金融情勢に関する中央銀行の見方あるいは政策運営について分かりやすく情報発信をしていくということが極めて重要であると考えている」
「時と場合によってはサプライズ的になることも避けられない面がある。ただその場合でも考え方を平時から平易に説明しておくことでそうしたサプライズは最小限に食い止めることが可能だと思う」
8:理想とする金融政策は
魔法のような
金融政策を
考えるのではなく
経済の
動きにあわせて
適切に
政策判断をしたいという
考えを
示しました。
「私に課せられる使命は魔法のような特別な金融緩和政策を考えて実行するということではない。判断を経済の動きに応じて誤らずにやることが私に課せられる最大の使命だと思う」
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