国と
東京電力の
福島第一原発の
廃炉に
向けた
中長期ロードマップでは、
廃炉が
終わるまでには
最長40
年かかるとされ、
工程は
以下のように
大きく3つに
分けられています。
▼第1期・使用済み核燃料の取り出し開始までの期間(2年以内)。
▼第2期・燃料デブリ取り出し開始までの期間(2021年12月)。
▼第3期・廃炉措置の終了までの期間(事故の年から30~40年後)。
この計画に基づくと、事故から12年となる2023年3月時点は「燃料デブリ」の取り出しが開始されているという想定でしたが、まだ取り出しは始まってなく、計画より遅れています。
「燃料デブリ」推定880トン
※デブリとみられる
堆積物「燃料デブリ」は、事故で溶け落ちた核燃料が周囲の構造物と混ざり冷えて固まったものです。1号機から3号機までの原子炉や外側の格納容器の下部には、あわせて880トンの燃料デブリがたまっていると推定されています。燃料デブリの取り出しは、廃炉作業における最大の難関とされていますが、強い放射線で人間は近づけず、内部調査に使われるロボットも、事故で壊れた構造物に行く手を阻まれるなどして、調査の段階から作業は難航しています。
※1
号機内部格納容器内部はいまだに全容がつかめない状況ですが、10年以上かけてロボットによる調査を重ねた結果、少しずつ1号機から3号機までの状況が明らかになってきました。
※3
号機 格納容器内部その結果、これまでに1号機から3号機の格納容器の底の付近では、燃料デブリの可能性がある堆積物が見つかっています。こうした成果を踏まえ、国や東京電力は最も内部調査が進んでいる2号機で、2022年内にイギリスで開発されたロボットアームを使い試験的な取り出しに着手する計画でしたが、改良や設計の見直しなどが必要になり、1年から1年半程度、延期することにしました。
これに
伴い、
早ければ2023
年に2
号機で
燃料デブリの
試験的な
取り出しが
始まる可能性があり、ロボットアームの
先端に
取り付けた
金属製のブラシで
堆積物をこすりとり、
数グラム程度を
採取する
計画が
示されています。
この作業が
実現したあと、
国と
東京電力は、
燃料デブリを
取り出す量を
段階的に
増やすとしています。
このため燃料デブリ取り出しの第一歩となる2号機での計画の成否は、廃炉全体の工程にも影響を及ぼす可能性があります
各号機の最新の調査状況
ここからは
各号機の
格納容器内部など最新の
状況を
見ていきます。
1号機 格納容器内部の状況把握進める
1
号機では、2022
年2
月からのロボットによる
格納容器内部の
調査で
堆積物の
塊が
映像などで
確認され、
東京電力は、
この一部が
燃料デブリで
ある可能性があると
発表しました。
また、2022
年5
月には、
格納容器の
底部で、
原子炉を
支える鉄筋コンクリート製の「ペデスタル」という
構造物が
壊れ、
鉄筋が
むき出しになっている
状況が
映像で
確認されました。
ことし1月からは堆積物のサンプリング調査が行われ、国や東京電力は、1年ほどかけて元素の種類などを分析するほか、堆積物の広がりを3Dで再現するなどして、内部の状況を詳しく把握することを目指すとしています。
2号機 調査が最も進展、試験的な取り出し開始目指す
2
号機は、
原子炉建屋が
水素爆発を
起こした1
号機や3
号機と
比べ、
調査を
妨げる構造物が
比較的少なかったため、3つの
号機の
中で
最も
内部調査が
進んでいます。
このうち2018年に行われた調査では、格納容器の底の付近で燃料デブリと見られる厚さ40センチから70センチほどの小石状の堆積物があることが確認され、堆積物の硬さなどの調査も行われました。現在、試験的な取り出し開始に向けた準備が進められています。
3号機 燃料デブリが水没、今後10年程度で取り出し開始目指す
※
水素爆発が
起きて2
日後の3
号機(2011
年3
月16
日撮影)
3号機は、2017年の格納容器の内部調査で、厚さ3メートルほどの燃料デブリとみられる堆積物が確認されました。その多くが水中にあると見られていて、燃料デブリの取り出し方法については、原子炉建屋を巨大な構造物で覆い内部を水で満たして取り出すなど、複数の案が検討されている段階で今後、10年程度かけて取り出し開始を目指すとしています。
4号機 核燃料の取り出し完了済み
※
中央下が4
号機 建物の
上部が
激しく
壊れている(2011
年3
月16
日撮影)
事故当時、定期検査中だった4号機は原子炉に核燃料はなかったものの使用済み燃料プールに1535体の核燃料が入っていました。事故のあと電源が失われ燃料プールの冷却ができなくなった上、原子炉建屋が3号機から流れ込んだ水素の影響で水素爆発を起こして壊れました。燃料プールの水がなくなり、使用済み燃料などの冷却ができなくなると燃料が溶け出すおそれがあるため東京電力や国は燃料プールへの注水への対応に追われました。
その後、東京電力などは代替の冷却装置などでプールへ注水するとともに、2013年11月から使用済み燃料プールからの燃料の取り出しを始め、1年余りあとの2014年12月に取り出しを終えました。
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