気象庁によりますと、台風5号は日本の東の海上を西寄りに進んでいます。
12日午前0時には、宮城県石巻市の東160キロの海上をゆっくりとした速さで西北西へ進んでいるとみられます。
中心の気圧は980ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は25メートル、最大瞬間風速は35メートル、中心の北東側440キロ以内と南西側280キロ以内では風速15メートル以上の強い風が吹いています。
岩手県など東北の太平洋側では沿岸部を中心に雨が降り続いていて、局地的に強まっています。
11日夜11時までの24時間に降った雨の量は、久慈市下戸鎖では262.5ミリに達し平年の8月1か月分を超える大雨となっているほか、岩泉町で141.5ミリ、釜石市と洋野町大野で109ミリ、宮古市で106ミリなどとなっています。
これまでに降った雨で岩手県では土砂災害の危険性が非常に高くなり、土砂災害警戒情報が発表されている地域があります。
東北横断・速度遅く雨量増加
【雨の予想は】
台風は勢力を維持したまま12日の朝から昼前にかけて東北の太平洋側に上陸し、横断する見込みです。
北日本では13日にかけて雷を伴って激しい雨が降る見込みで、12日は、非常に激しい雨となるおそれがあります。
特に、岩手県、宮城県、それに青森県では午前中にかけて線状降水帯が発生し、災害の危険度が急激に高まる可能性があります。
さらに、台風の速度が遅いことから総雨量が増えるおそれがあります。
12日夜遅くまでの24時間に降る雨の量は、東北の多いところで300ミリ、13日の夜遅くまでの24時間には150ミリと予想されています。
その後も雨が続き、14日夜遅くまでの24時間には150ミリの雨が降る見込みです。
東北の太平洋側では警報基準を大きく超えるような記録的な大雨となる見込みで、わずか数日で平年の8月1か月分を大きく超える雨量となる地域がさらに増えるおそれがあります。
先月、記録的な大雨となった東北の日本海側でも長期間にわたって大雨となるほか、新潟県や北海道でも13日にかけてまとまった雨となるおそれがあります。
【風の予想は】
また、北日本を中心に風が強まり、12日は非常に強い風が吹くところがある見込みです。
12日の最大風速は東北で25メートル、北海道で18メートルで、最大瞬間風速は東北で35メートル、北海道で25メートルに達すると予想されています。
【波の予想は】
海上はうねりを伴って波が高く、12日は東北で7メートルと大しけとなり、北海道ではしけが続く見込みです。
【土砂災害や浸水 川の増水や氾濫に厳重警戒を】
気象庁は土砂災害や川の増水、氾濫低い土地の浸水に厳重に警戒するとともに、暴風や高波に警戒するよう呼びかけています。
また、落雷や竜巻などの激しい突風にも注意し、発達した積乱雲が近づく兆しがある場合は頑丈な建物の中に移動するなど安全を確保して下さい。
台風の進路にあたる東北を中心に、雨や風が急激に強まるおそれがあります。
周囲で浸水が始まってからの移動は極めて危険で、過去の水害でも犠牲者が相次いでいます。
自宅周辺のリスクをハザードマップで確認した上で少しでも早く崖や渓流などからは離れ、安全な場所で過ごすようにしてください。
大雨の警戒すべきポイント
大雨で発生の危険性が高まるのは「土砂災害」「川の氾濫」、そして「低い土地の浸水」です。警戒すべきポイントをまとめました。
【土砂災害】
まず、土砂災害です。
2019年の台風19号では、記録的な大雨により宮城県丸森町をはじめ各地で土砂災害が発生し、犠牲となる人が相次ぎました。
短時間に猛烈な雨や非常に激しい雨が降ると、山の斜面などの地中にしみこむ前に地表を雨水が流れ、表面の土を削り取って土石流が発生しやすくなります。
また、激しい雨でなくても、長時間、雨が降り続くと地中に大量の水がしみこみ、崖崩れや地すべりが起きやすくなります。
大雨となったあとは地盤が緩んでいるため、雨が弱まっても土砂災害が発生するおそれがあります。
「土砂災害警戒情報」や自治体の「避難指示」などが発表されていなくても、土砂災害が起きることがあります。
土砂災害が発生する直前には
▽斜面から小石が落ちてくる
▽斜面に亀裂ができる
▽斜面から突然水が湧き出す
▽「山鳴り」や「地響き」などの異常がみられることがあります。
こうした現象に気がついた場合には直ちに安全を確保してください。
斜面や渓流などには近づかず、離れた頑丈な建物の高い場所に早めに避難するのが最も安全です。
ただ、周辺が浸水するなど外への避難がかえって危険な場合は
▽建物の2階以上に避難したり
▽斜面と離れた側の部屋に移動したりするなど
少しでも安全性を高める行動を取るようにしてください。
【川の氾濫】
次に川の氾濫です。
「中小河川」では、短時間の激しい雨でも水位が急激に上昇し、氾濫の危険性が高まることがあります。
2016年の台風10号では、大雨により岩手県岩泉町で小本川の水位が数時間で上昇して氾濫し、高齢者グループホームで入所者9人全員が死亡しました。
一方、「大河川」では、流域の広い範囲で雨が降り続くと、氾濫の危険性が高まります。
2019年の台風19号の際には、福島県を流れる阿武隈川で記録的な大雨が降ったことで堤防が決壊し、大規模な浸水被害につながりました。
いずれの川でも、自分のいる地域で雨が降っていなくても、上流で降った雨によって氾濫が発生することもあります。
気象情報のほか、川の水位の情報や自治体の避難情報を確認し、早めの避難を心がけてください。
すでに氾濫が発生し、安全に避難することが難しくなった時には、近くの頑丈な建物や、自宅の高い場所に移動するなど、少しでも安全性を高める行動を取るようにしてください。
また、大雨となっている中で川の様子を見に行くことも危険なので、控えるようにしてください。
【低い土地の浸水】
低い土地の浸水です。短時間に猛烈な雨や激しい雨が降ると、低い土地では降った雨が排水できなくなり、浸水が発生することがあります。
浸水が始まる前の早めの避難が大切です。
ただ、浸水が始まっている中での移動は危険です。
外に避難するのが難しい場合は、自分のいる建物の高い階に移動するなど身を守る行動を取ってください。
線路や道路などの下を通る「アンダーパス」は大雨で冠水しやすく、気付かずに車が入り込み乗っていた人が死亡する事故もたびたび起きています。
大雨の中で車の運転はなるべく控えてください。