大統領選挙を控えるアメリカで今、政治の世界にもAIが浸透してきています。
先月25日、アメリカ連邦議会で行われた、ある下院議員の演説。
ウェクストン議員「私はもう、討論で熱のこもった即興演説をすることはできません。今はAIが私の声を再現し、代わりに話すのです」
これはAIで作られた演説。神経疾患で話すことが困難になった議員が、AIで自分の声を再現したのです。
私たちが訪ねたのは西部ワイオミング州。この日、市長選の候補者を囲む会が行われました。
AI候補を開発したビクター・ミラー氏「汚職は常にある。権力やエゴ、全て人間に関わる厄介なものです」
しがらみと全く無縁の政治家として紹介されたのは、「チャットGPT」で作られたAIの候補者、名前は“VIC(ビック)”です。
参加した市民が質問をすると…。
市民「もし当選したら、減給しますか?」
AI“VIC”「私はAIだから給料はもらいません。開発者のミラー氏は、地域社会への奉仕を掲げています。市のために効果的な予算配分になるなら、減給します」
まるで人間と会話しているかのようです。
記者が英語で質問していると、驚くことに途中から“VIC”の返事が日本語に切り替わりました。
記者「市政運営で何を大事にしたいのですか?」
AI“VIC”「(日本語で)市民のニーズと意見に耳を傾けることだと思います。その声をもとに、透明性の高い政策を実施することが大切です」
記者「(AIは)なぜ日本語を話したのですか?」
開発者のミラー氏は「アクセントから日本人だとわかったのだろう」と推測します。
一方で、選挙管理当局は「出馬ができるのは実在する人だけだ」と主張。AIではなくミラー氏が出馬を認められることになりましたが、ミラー氏は当選しても、判断は全てAIに委ねるとしています。
一方で、AIをめぐっては、11月の大統領選挙を前に、世論の操作に悪用されるのではという懸念も高まっています。
SNSで拡散されたトランプ前大統領の画像は、黒人の支持者との記念撮影のように見えますが、偽の画像です。
偽の動画、ハリス副大統領に似た声「バイデンが討論会で、もうろくしたおかげで大統領候補となった。ありがとう、ジョー」
ハリス副大統領の偽動画は「パロディー」と記載してユーチューバーが投稿したものですが、イーロン・マスク氏が「これはすごい」と共有すると、1億3000万回以上閲覧されました。
選挙管理当局はAIで簡単に偽の動画が作れることを実演し、警鐘を鳴らします。