75
歳以上の
ドライバーが
全国で
最も多い愛知県で、
運転免許を
更新する
際の
検査や
講習が
厳格になったことで、
教習所の
対応が
追いつかず、ことし、
およそ3万人の
高齢者が
手続きを
終えられないまま
免許が
失効するお
それが
あることが、
警察の
試算でわかりました。
専門家は
ほかの
地域でも
起こりうる
問題で、
制度の
見直しを
検討すべきだと
指摘しています。
高齢の
ドライバーの
事故が
相次いだことを
受けて、おととし
3月、
法律が
改正され、75
歳以上のドライバーが
運転免許を
更新する
際、
検査で
認知機能の
低下が
指摘されると、
自動車教習所で
運転の
様子をドライブレコーダーに
記録し、
個別の
指導を
受ける講習が
義務づけられました。
また、これまでは同じ日だった検査と講習を別の日に受けることになったため、教習所の手間が増えて対応が追いつかず、75歳以上のドライバーが全国で最も多い愛知県では、講習の予約が取りづらくなり、免許の更新に平均で5か月以上かかる事態となっています。
一方、県内では70歳以上の講習の対象者が、ことし19万4000人近くに増える見込みで、愛知県警の試算では、およそ3万人が期限までに手続きを終えられないまま、免許が失効するおそれがあるということです。県警は相談があった人には、更新期限を延長する対応を独自にとっています。
愛知県警運転免許課の姫嶋祥光運転者講習センター所長は「県警単独の努力ではどうにもならない部分がある。国にも矛盾を解消するよう努めてほしい」と話しています。
これについて、運転免許制度に詳しい千葉大学の鈴木春男名誉教授は「高齢のドライバーは増える一方、教習所は少子化の影響で減ることが見込まれ、愛知県以外でも同じ問題が増えていくと考えられる。安全性を維持し、高めながら、どうやって検査や講習を簡素化していくか、検討しなければならない」と話しています。
予約でいっぱい 免許が失効した女性
愛知県瀬戸市に住む津田さゑ子さん(81)は、去年12月が免許の更新期限でした。その1か月前の去年11月、認知機能の検査結果が出たあと、近くの自動車教習所で運転の講習を申し込もうとしましたが、すでに予約でいっぱいでした。
ことし2月に名古屋市内の教習所で予約が取れましたが、すでに免許は失効していました。
津田さんは車で保育園や小学校を回り、子どもたちに紙芝居を披露するボランティアをしていましたが、今は思うように行けなくなりました。
津田さんは「車は小回りがきくので、運転できないと不便です。車に乗れなくなるとボランティアもできないし、世間が狭くなる感じがします」と話しています。
法改正で検査と講習が別の日に
高齢のドライバーの事故が相次いだことを受けて、おととし3月、道路交通法が改正され、75歳以上のドライバーが運転免許を更新する際、これまでは自動車教習所で同じ日に受けられた認知機能の検査と運転の講習を別の日に受けることになりました。
検査結果は▽認知症のおそれ、▽認知機能低下のおそれ、▽認知機能低下のおそれなしの3段階で通知され、その後、改めて講習を申し込みます。
認知症のおそれが指摘された場合は、医師の診断が義務づけられ、認知機能の低下が指摘されると、運転の様子をドライブレコーダーに記録して個別の指導を受ける、合計3時間の講習を受けなければなりません。
さらに、免許を更新したあとも信号無視や通行禁止の道路を通行するなどの違反があった場合は、改めて認知機能の検査を受けることになりました。
免許の更新に5か月以上
愛知県では認知機能検査の待ち時間が、去年12月末の時点で、平均でおよそ72日となっています。結果は、およそ2週間後に通知され、その後、運転の講習を申し込みますが、講習の待ち時間は去年12月末の時点で、平均でおよそ92日でした。
このため、免許の更新に5か月以上かかることになり、期限に間に合わず、失効する人も出ています。
愛知県警は来年度以降、運転免許試験場や警察署で認知機能検査を受けられるようにしますが、長い待ち時間を完全に解消するのは難しいとしています。
愛知県内の教習所 平成元年を最後に新設なし
愛知県では51の教習所で、高齢者の認知機能検査と運転の講習を行っていますが、平成元年を最後に新しい教習所はできていません。
教習所で検査や講習を担当できるのは、専門の資格を持つ一部の指導員だけで、対応できる高齢者の数にはかぎりがあるのが実情です。
半田市にある知多自動車学校の柴田実校長は「新しく免許を取得する人の教習と高齢者の講習では、明らかに高齢者の講習のほうが安いため、通常の教習に重点を置くという事情もあるのではないか」と話しています。