日本相撲協会は27日、大阪市の大阪府立体育会館で次の夏場所に向けた番付編成会議と、臨時の理事会を開き貴景勝の大関昇進を正式に決めました。
貴景勝は平成26年秋場所に前相撲で初土俵を踏んでから28場所での大関昇進です。
年6場所制となった昭和33年以降では6番目のスピード昇進で、師匠だった元横綱 貴乃花の30場所を上回りました。
新大関が誕生するのは、去年の夏場所後に昇進した栃ノ心以来です。
このあと日本相撲協会の使者が、貴景勝と師匠の千賀ノ浦親方が待つ大阪市内のホテルに向かい、大関昇進の伝達式が行われる予定です。
貴景勝がどのようなことばで大関としての決意を述べるのか「口上」が注目されます。
貴景勝とは
大関に昇進した貴景勝は、兵庫県芦屋市出身の22歳。
幕内では最年少です。
身長1メートル75センチで下から突き上げるような鋭い立ち合いと突き押しを得意とし、土俵上でほとんど表情を変えない冷静さも強みです。
小学生で相撲を始め、中学時代には全国大会の決勝で現在、幕内の阿武咲を破り、中学生横綱のタイトルを獲得しました。
高校は多くの関取を輩出した埼玉栄高校に進み、卒業後に貴乃花部屋に入門しました。
平成26年の秋場所の前相撲で初土俵を踏み、順調に番付を上げておととしの初場所、20歳で新入幕を果たし、しこ名をそれまでの「佐藤」から「貴景勝」に改名しました。
しこ名は、当時の貴乃花親方が尊敬しているという戦国時代の武将、上杉謙信のあとを継いだ上杉景勝にちなんでいます。
幕内でも上位をうかがうなど順調に力をつけたものの、去年3月の春場所では右足のけがで、初土俵以来、初めての休場を経験しました。
さらに、去年9月の秋場所後には、貴乃花親方が日本相撲協会を退職し所属していた貴乃花部屋が消滅したため千賀ノ浦部屋に移籍するなど環境に大きな変化がありました。
こうした経験も精神面の成長につなげ、去年11月の九州場所は横綱、大関陣が相次いで休場する中、場所を引っ張る活躍を見せ初優勝を果たしました。
迎えた今月の春場所は、大関昇進の重圧がかかる中で押し相撲を貫いて横綱 鶴竜や大関 高安などの上位陣を破って10勝をあげ安定した実力を示していました。
日本出身力士で最速の大関
貴景勝は、平成26年秋場所に前相撲で初土俵を踏んでから28場所での大関昇進となり、年6場所制となった昭和33年以降では、幕下付け出しなどを除いて6番目のスピード昇進です。
これは、師匠だった元横綱 貴乃花の30場所や横綱 白鵬の31場所を上回っていて、日本出身力士としては最速となります。
また、22歳7か月22日での大関昇進は、昭和33年以降に初土俵を踏んだ力士として9番目の若さとなりました。
大相撲では、個人トレーナーを雇ったり科学的な方法でコンディションを調整したりして以前に比べ、長く現役を続ける力士が増えていて現在の横綱、大関の平均年齢は、31.8歳となり30歳を超えています。
今回、幕内最年少の貴景勝が大関に昇進したことで一気に世代交代が進むのか、それとも先輩力士たちが意地を見せるのかが、新元号で迎える大相撲の焦点となりそうです。
千賀ノ浦親方「大関に満足せず稽古を」
貴景勝の師匠 千賀ノ浦親方は、大関昇進の伝達式後の会見に貴景勝と同席し「プロに入った頃からいずれは、上に上がる力があると思っていたが、こんなに早く昇進するとは思わなかった。本当に感無量でうれしい。やはり力士の基本は稽古なので、大関に満足せず稽古を怠らないで、精神的にも肉体的にも強くなってほしい」と笑顔を見せていました。
八角理事長「今までに見たことがない大関」
日本相撲協会の八角理事長は、「まわしを一切取らずに押していく、今までに見たことがない大関だ。この相撲しかないというのも魅力的、印象的で今後、出るかわからないような大関だ」と突き押しにこだわって大関をつかんだことを高く評価しました。
そのうえで、今後について、「まわしを取らずに離れて相撲を取る人は、非常に難しく、立ち合いが合わないと力が出せない。これをカバーするのは集中力で集中力を維持するには稽古しかない」と一層の努力を求めました。
また22歳という若い大関が誕生したことについては、「自分より年下が大関に上がり自分も頑張らないといけないという刺激になる」とほかの若手力士への相乗効果に期待していました。
審判部長「独特の押し相撲の力士になる」
日本相撲協会審判部の阿武松審判部長は、臨時理事会のあと取材に応じ、「審判部として『昇進』とあげさせていただいた。満場一致で異議はなかった。独特の押し相撲の力士になるのではないか」と話しました。また、22歳7か月22日でのスピード昇進について、「みんなが目標にするからいいのではないか。楽しみですね」と期待を口にしていました。