東大とうだいが授業じゅぎょう料りょう引き上ひきあげ検討けんとう きょう学生がくせいと「総長そうちょう対話たいわ」で説明せつめいへ

東京とうきょう大学だいがくは現在げんざい、授業じゅぎょう料りょうの引き上ひきあげを検討けんとうしていて、国くにが定さだめる上限じょうげんまで引き上ひきあげられた場合ばあい、現在げんざいの年間ねんかん53万まん5800円えんから10万まん円えん余あまりの増額ぞうがくとなる可能かのう性せいがあります。

大学だいがくでは今月こんげつ、藤井ふじい輝夫てるお総長そうちょうのコメントを公表こうひょうし、「限かぎられた財源ざいげんで教育きょういく研究けんきゅう環境かんきょうの充実じゅうじつに加くわえ、物価ぶっか上昇じょうしょうや光熱こうねつ費ひ等とうの諸しょ費用ひようの高騰こうとうに対応たいおうしなければならない。もし値上ねあげをする場合ばあいには、授業じゅぎょう料りょう免除めんじょの拡充かくじゅうや奨学しょうがく金きんの充実じゅうじつなどの支援しえん策さくもあわせて実施じっししなければならず、具体ぐたい的てきな仕組しくみも検討けんとうしている」としていました。

こうした中なか、21日にち、藤井ふじい総長そうちょうが在ざい学生がくせいとオンラインで意見いけん交換こうかんする「総長そうちょう対話たいわ」が行おこなわれる予定よていで、現在げんざいの案あんを説明せつめいするとともにそこでの意見いけんを踏ふまえて慎重しんちょうに検討けんとうするとしています。

授業じゅぎょう料りょうの引き上ひきあげ検討けんとうをめぐっては、今月こんげつ大学だいがくで行おこなわれた反対はんたい集会しゅうかいにおよそ400人にんが参加さんかしたほか、学生がくせいらの団体だんたいが相次あいついで集会しゅうかいや会見かいけんを開ひらき、引き上ひきあげ案あんの撤回てっかいや学生がくせいへの情報じょうほう開示かいじを求もとめるなど波紋はもんが広ひろがっていました。

また最近さいきんでは、全国ぜんこく86の国立こくりつ大学だいがくでつくる国立こくりつ大学だいがく協会きょうかいが物価ぶっか高騰こうとうや円えん安やすなどで「もう限界げんかいです」と切迫せっぱくした財務ざいむ状況じょうきょうを訴うったえる緊急きんきゅうの声明せいめいを公表こうひょうし、運営うんえい費ひ交付こうふ金きんの増額ぞうがくなどを求もとめていて、国立こくりつ大学だいがくの財政ざいせい状況じょうきょうや費用ひよう負担ふたんをめぐる動うごきに注目ちゅうもくが集あつまっています。

学生がくせい “地方ちほうから進学しんがく目指めざす人ひとのハードルをあげることに”

東京とうきょう大学だいがくで地方ちほうの高校生こうこうせいの進学しんがく支援しえんなどを行おこなっている学生がくせいは、授業じゅぎょう料りょうの引き上ひきあげは地方ちほうから進学しんがくを目指めざす人ひとのハードルをあげることになると懸念けねんしています。

東京とうきょう大学だいがく3年生ねんせいの増村ますむら莉子りこさんは地方ちほうの高校生こうこうせいの進学しんがくを支援しえんするサークルの代表だいひょうを務つとめていて、自身じしんも石川いしかわ県内けんないの公立こうりつ高校こうこうから進学しんがくしました。

ただ、厳きびしい家計かけいの中なかで塾じゅくに通かよう余裕よゆうはなかったといい、入学にゅうがく後ごも民間みんかん企業きぎょうによる給付きゅうふ型がたの奨学しょうがく金きんを受うけながら、アルバイトを掛け持かけもちして家賃やちんや生活せいかつ費ひにあてていて、最近さいきんでは物価ぶっか高騰こうとうの影響えいきょうも大おおきく、教科書きょうかしょを先輩せんぱいや友人ゆうじんからもらったり借かりたりするなどして工面くめんしながら勉強べんきょうしているということです。

増村ますむらさんは、東京とうきょう大学だいがくで授業じゅぎょう料りょうの引き上ひきあげが検討けんとうされていることについて「地方ちほうの生徒せいとには、首都しゅと圏けんの大学だいがくに進学しんがくするには経済けいざい面めんでのハードルがあるが、引き上ひきあげた場合ばあいはそのハードルがより高たかくなってしまうと思おもう。『大学だいがくは経済けいざい的てきに裕福ゆうふくな人ひとを求もとめていて、私わたしたちは切り捨きりすてられた』と受け止うけとめられてしまうのではないか」と懸念けねんしています。

増村ますむらさん自身じしん、授業じゅぎょう料りょう引き上ひきあげの検討けんとうを知しり、新あらたにホテルのスタッフの仕事しごとを始はじめるなど、3つのアルバイトを掛け持かけもちしていますが、今後こんごは就職しゅうしょく活動かつどうや大学院だいがくいんへの進学しんがくに向むけた勉強べんきょうも必要ひつようとなるため、さらに増ふやすことは難むずかしいと考かんがえています。

増村ますむらさんは「これ以上いじょう新あたらしいバイトを始はじめるとパンクしてしまい、何なにをしに大学だいがくに来きてるのかわからなくなる。授業じゅぎょう料りょうを引き上ひきあげるのならば、奨学しょうがく金きん制度せいどとセットであって欲ほしいし、引き上ひきあげた分ぶんが何なにに使つかわれるのかしっかり説明せつめいして欲ほしいです」と話はなしていました。

先行せんこうして値上ねあげの東京とうきょう工業こうぎょう大学だいがくでは

国立こくりつ大学だいがくが授業じゅぎょう料りょうを標準ひょうじゅん額がくより引き上ひきあげる動うごきはここ数すう年ねんで相次あいつぎ、文部もんぶ科学かがく省しょうによりますと、これまでに7つの大学だいがくが全学ぜんがく的てきな引き上ひきあげを行おこなっています。

このうち東京とうきょう工業こうぎょう大学だいがくは、2019年ねんに53万まん5800円えんから10万まん円えん近ちかく引き上ひきあげ、63万まん5400円えんとしました。

民間みんかん企業きぎょうとの共同きょうどう研究けんきゅうなどによる外部がいぶ資金しきんの獲得かくとくにも取り組とりくんできましたが、教育きょういく環境かんきょうや内容ないようをさらに充実じゅうじつさせるために授業じゅぎょう料りょうを引き上ひきあげたといい、増収ぞうしゅう分ぶんのおよそ9億おく円えんはすべて教育きょういく予算よさんにあてています。

これにより、専門せんもん分野ぶんやの学まなびを社会しゃかい課題かだいの解決かいけつにつなげるため幅広はばひろく教養きょうようを学まなぶ「リベラルアーツ」の強化きょうかの一環いっかんとして、少しょう人数にんずうで議論ぎろんしやすい教室きょうしつを新あらたに整備せいびしました。

また、国際こくさい的てきに活躍かつやくする外国がいこく人じん教員きょういんを2018年ねんの255人にんから2021年ねんには300人にんに増ふやし、老朽ろうきゅう化かした図書館としょかんを改修かいしゅうして自習じしゅう用ようの個室こしつブースも新設しんせつするなどしたといいます。

同時どうじに学生がくせいへの経済けいざい的てき支援しえんも充実じゅうじつさせ、企業きぎょうや個人こじんからの寄付きふをもとに大学だいがく独自どくじの給付きゅうふ型がた奨学しょうがく金きんを受うけられる枠わくを20倍ばい以上いじょうに拡充かくじゅうし、地方ちほう出身しゅっしんの学生がくせいや、親おやが大卒だいそつでない学生がくせい、それに女子じょし学生がくせいの優先ゆうせん枠わくを設もうけているほか、奨学しょうがく金きんなどの相談そうだんに対応たいおうする学生がくせい支援しえんスタッフの体制たいせいも強化きょうかしたということです。

大学だいがく独自どくじの奨学しょうがく金きんも活用かつようして通かよう修士しゅうし1年ねんの男性だんせいからは「物価ぶっかも上あがっているし高価こうかな研究けんきゅう設備せつびも多おおいので、他たの大学だいがくより授業じゅぎょう料りょうが高たかいのは仕方しかたないと思おもう。ただアルバイトをして生活せいかつ費ひなどの足たしにしていて、授業じゅぎょう料りょうがもっと安やすかったら研究けんきゅうに専念せんねんできるとは思おもう」という声こえも聞きかれました。

東京とうきょう工業こうぎょう大学だいがく 益えき一哉かずや学長がくちょう

「授業じゅぎょう料りょうが上あがったから学まなべないということがないよう奨学しょうがく金きんの充実じゅうじつは絶対ぜったいにやらないといけないと考かんがえていた。資金しきんを獲得かくとくするため自己じこ努力どりょくはかなりやってきたが、それでも足たりない部分ぶぶんを授業じゅぎょう料りょうで負担ふたんしてもらいもっといい教育きょういく環境かんきょうをつくることに投資とうしした。理工りこう系けいの専門せんもんを学まなぶだけでなく社会しゃかい課題かだいを発見はっけんして解決かいけつするところまでできる、幅広はばひろい人材じんざいを育そだてる教育きょういくに最もっとも投資とうししたかった」

地方ちほうの国立こくりつ大学だいがく “人口じんこう流出りゅうしゅつの懸念けねん 授業じゅぎょう料りょう上あげられない”

地方ちほうの国立こくりつ大学だいがくからは財政ざいせい状況じょうきょうが厳きびしく収入しゅうにゅうを増ふやしたいものの、県けん外がいへの人口じんこう流出りゅうしゅつへの懸念けねんから授業じゅぎょう料りょうは上あげられないという声こえも聞きかれました。

松山まつやま市しにある愛媛えひめ大学だいがくは、およそ8000人にんが学まなぶ県内けんない唯一ゆいいつの総合そうごう大学だいがくで、入学にゅうがく者しゃの4割わりは県内けんないの出身しゅっしんです。

大学だいがくによりますと、収入しゅうにゅうの半分はんぶんを占しめる運営うんえい費ひ交付こうふ金きんは、今年度こんねんどはおよそ105億おく円えんと20年ねん前まえと比くらべておよそ22億おく円えん、率りつにして17％減へった一方いっぽう、光熱こうねつ費ひや人件じんけん費ひの増加ぞうか、物価ぶっか高だかで厳きびしい財務ざいむ状況じょうきょうにあるといいます。

大学だいがく内ないには節電せつでんを呼よびかけるポスターが貼はられ、エアコンをこまめに消けすなど経費けいひ削減さくげんに取り組とりくんでいますが、昨年度さくねんどの電気でんき代だいは11億おく円えん余あまりと2年ねん前まえから3億おく3千せん万まん円えん余あまり増ふえ1.4倍ばいになりました。

外部がいぶ資金しきんを得えようと独自どくじの取り組とりくみも始はじめ、食堂しょくどうに地元じもと企業きぎょうのポスターを掲載けいさいして広告こうこく料りょうを得えたり、大学だいがく発はつの技術ぎじゅつを活用かつようするベンチャー企業きぎょうから施設しせつの貸出かしだし料りょうを得えたりして、2022年度ねんどには6億おく円えんほどの収入しゅうにゅうを得えたほか、県内けんないの700の企業きぎょうに職員しょくいんが訪問ほうもんして寄付きふを呼よびかけています。

しかし、光熱こうねつ費ひや人件じんけん費ひの増加ぞうか分ぶんをまかない切きれず、老朽ろうきゅう化かした体育館たいいくかんは雨漏あまもりし、テニスコートのフェンスに穴あなが開ひらいた状態じょうたいですが修繕しゅうぜんできずに使つかっています。

愛媛えひめ大学だいがく 仁科にしな弘ひろし重じゅう学長がくちょう

「億おく単位たんいで人件じんけん費ひや電気でんき代だいが上あがり非常ひじょうに苦くるしくなっている。支出ししゅつを抑おさえ収入しゅうにゅうを増ふやす両面りょうめんで取り組とりくんでいるが、大だい企業きぎょうの多おおい東京とうきょうとは規模きぼ感かんが違ちがい、多額たがくの資金しきんを集あつめるのは難むずかしい。新あたらしい研究けんきゅうを始はじめたい人ひとを学内がくないで公募こうぼして予算よさんをつけてきたが、そこに回まわすお金おかねが億おく単位たんいで減へっている。かなりぎちぎちの状況じょうきょうだ」

一方いっぽうで、授業じゅぎょう料りょうを引き上ひきあげれば県けん外がいの大学だいがくに進学しんがくする人ひとが増ふえて人口じんこう流出りゅうしゅつが進すすむ懸念けねんがあり、簡単かんたんに引き上ひきあげることはできないといいます。

実際じっさい、学生がくせいからは「実家じっかから通かよえるので選えらんだが値上ねあげされたら厳きびしい」とか「もし学費がくひが上あがったら関西かんさいや関東かんとうの大学だいがくに行いく人ひとが増ふえると思おもう」という声こえも聞きかれました。

仁科にしな学長がくちょう

「地方ちほうの国立こくりつ大学だいがくの一義いちぎ的てきな役割やくわりは県内けんないの人材じんざい育成いくせいとその人ひとたちが県内けんないで活躍かつやくすることにあると思おもっていて、若わかい世代せだいの人口じんこう流出りゅうしゅつは抑おさえたい。授業じゅぎょう料りょうを値上ねあげすれば県内けんないの高校生こうこうせいが県けん外がいに進学しんがくしてしまうことや大学だいがくの進学しんがくをあきらめてしまうことが懸念けねんされるので、ここ数すう年ねんの間まに授業じゅぎょう料りょうを上あげることは考かんがえていない」

将来しょうらいは“150万まん円えんに上あげるべき”の提言ていげんも

国立こくりつ大学だいがくの授業じゅぎょう料りょうをめぐっては、2040年ねん以降いこうの高等こうとう教育きょういくのあり方ありかたを議論ぎろんしている中教審ちゅうきょうしん＝中央ちゅうおう教育きょういく審議しんぎ会かいの特別とくべつ部会ぶかいで、慶應義塾けいおうぎじゅくの伊藤いとう公平こうへい塾長じゅくちょうが現在げんざいのおよそ3倍ばいにあたる150万まん円えんに引き上ひきあげるべきだと提言ていげんし、議論ぎろんを呼よびました。

伊藤いとう塾長じゅくちょうは、提言ていげんは2040年ねん以降いこうを前提ぜんていとしたものだと強調きょうちょうした上うえで次つぎのように説明せつめいしました。

伊藤いとう塾長じゅくちょう

「2040年ねんには、18歳さい人口じんこうが現在げんざいより20％以上いじょう減へる。教養きょうようや議論ぎろん力りょく、AIを使つかいこなすようなIT、世界せかいとわたりあえる語学ごがく力りょく、それらをつける教育きょういくを施ほどこさなければ少数しょうすう精鋭せいえいで戦たたかっていけない。新あたらしい高等こうとう教育きょういくを実施じっししていかないと日本にっぽんの国力こくりょくはどんどん落おちていってしまうというのが私わたしの危機きき感かんだ。そのような教育きょういくをするには大学だいがくが変かわらなければいけないし、それだけの費用ひようがかかるということだ」

「150万まん円えん」の根拠こんきょ 支援しえん策さくとの両立りょうりつを

「150万まん円えん」とした根拠こんきょについては、現在げんざい、国立こくりつ大学だいがくで学生がくせい1人にんあたりにかかる年間ねんかんの教育きょういくコストの平均へいきんがおよそ280万まん円えんで、このうち学生がくせいの負担ふたんは平均へいきんで54万まん円えんだとした上うえで、次つぎのように話はなしました。

伊藤いとう塾長じゅくちょう

「280万まん円えんというのは全すべての国立こくりつ大学だいがくの平均へいきんで、もっとかけている国立こくりつ大学だいがくもあれば、ずっと少すくない予算よさんで行おこなっている国立こくりつ大学だいがくもある。全すべての大学だいがくで最低さいていでも1人にんあたり300万まん円えんは使つかえるようにして、しっかりとした教育きょういくを用意よういしていくことを提言ていげんしている。その半分はんぶんの150万まん円えんを自己じこ負担ふたんの目安めやすとし、払はらえる人ひとには負担ふたんしてもらい、少すこしでも払はらえない人ひとには給付きゅうふ型がたの奨学しょうがく金きんを用意よういして徹底的てっていてきにカバーすべきだ。地方ちほうの大学だいがくを選えらぶ人ひとにはさらに奨学しょうがく金きんを多おおくするとか、優遇ゆうぐう措置そちをつけることで、地方ちほうの空洞くうどう化かを避さけることもできる」

“国立こくりつ大だいと私立しりつ大だいの健全けんぜんな競争きょうそう環境かんきょうにも”

あわせて、国立こくりつ大学だいがくと私立しりつ大学だいがくの健全けんぜんな競争きょうそう環境かんきょうにもつながると話はなしています。そして、引き上ひきあげに当にあたっては国くにの財源ざいげんが必要ひつようだとしています。

伊藤いとう塾長じゅくちょう

「いま800近ちかくの大学だいがくがあるが2040年ねんに向むけて当然とうぜん700、600と減へっていく。本当ほんとうによい教育きょういくをしている大学だいがくが選えらばれていくには、自己じこ負担ふたん額がくは私立しりつも公立こうりつも国立こくりつも同おなじにしておいて、健全けんぜんな競争きょうそうの中なかで生き残いきのこりが決きまっていくのがふさわしい」

「奨学しょうがく金きんを用意よういし、国立こくりつ・公立大こうりつだい学がくにもしっかり公費こうひを入いれていく。それだけ財源ざいげんが必要ひつようになるが、国くにが何なにについて優先ゆうせん度どをあげていくかと言いったときに、教育きょういくが一番いちばん大切たいせつだというのが私わたしの考かんがえだ。これから人ひとが減へっていく日本にっぽんにおいて大切たいせつなポイントだと思おもっている」

国立こくりつ大学だいがくの交付こうふ金きんや授業じゅぎょう料りょうは

国くにから国立こくりつ大学だいがくに基盤きばん的てきな経費けいひとして配分はいぶんされる運営うんえい費ひ交付こうふ金きんは、2004年度ねんどには全体ぜんたいで1兆ちょう2400億おく円えん余あまりでしたが今年度こんねんどは1兆ちょう700億おく円えん余あまりと、20年ねん前まえからおよそ1600億おく円えん、率りつにして13％減少げんしょうしています。

一方いっぽう、文部もんぶ科学かがく省しょうの調査ちょうさでは、私立しりつ大学だいがくの年間ねんかん授業じゅぎょう料りょうの平均へいきんは2005年度ねんどにはおよそ83万まん円えんだったのが、昨年度さくねんどは95万まん9205円えんと13万まん円えん近ちかく増ふえていますが、国立こくりつ大学だいがくでは2005年度ねんどに国くにが定さだめる「標準ひょうじゅん額がく」が年間ねんかん53万まん5800円えんとなってから、20年ねん近ちかく据え置すえおかれています。

各かく大学だいがくは、特別とくべつな事情じじょうがあるときは標準ひょうじゅん額がくの120％までを上限じょうげんに授業じゅぎょう料りょうを引き上ひきあげることができると定さだめられていて、文部もんぶ科学かがく省しょうによりますと、2019年度ねんどに初はじめて東京とうきょう工業こうぎょう大学だいがくや東京とうきょう藝げい術じゅつ大学だいがくが引き上ひきあげて以降いこう、一いち橋きょう大学だいがくや東京とうきょう医科いか歯科しか大学だいがくなどこれまでに7つの大学だいがくが全学ぜんがく的てきな引き上ひきあげを行おこなっています。

日本にっぽんの国公立こっこうりつ大だい 公的こうてき負担ふたん割合わりあいは3番目ばんめの低ひくさ OECD報告ほうこく書しょ

OECD＝経済けいざい協力きょうりょく開発かいはつ機構きこうのまとめた報告ほうこく書しょでは、日本にっぽんの国公立こっこうりつ大学だいがくの授業じゅぎょう料りょうは5番目ばんめに高たかい一方いっぽうで、公的こうてき負担ふたんの割合わりあいは3番目ばんめの低ひくさとなっています。

国公立こっこうりつ大だいの年間ねんかん授業じゅぎょう料りょう OECD加盟かめい35か国かこく中ちゅう5番目ばんめの高たかさ

OECDが2019年ねんのデータをもとにまとめた報告ほうこく書しょによりますと、国公立こっこうりつ大学だいがくの学士がくし課程かていの年間ねんかん授業じゅぎょう料りょうの平均へいきんは、日本にっぽんは5144ドルで、当時とうじの加盟かめい国こく35か国かこくの中なかで5番目ばんめに高たかくなっています。

最もっとも高たかかったのはイギリスのイングランドで1万まん2255ドル、アメリカが9212ドル、韓国かんこくが4814ドルとなっているほか、フランスは230ドルで、フィンランドやスウェーデンなど授業じゅぎょう料りょうが無償むしょうとなっている国くにもあります。

※出典しゅってん:OECD「Education at a Glance 2022」

家計かけい負担ふたんの割合わりあい高たかく 公的こうてき支出ししゅつの割合わりあいは低ひくめ

一方いっぽうで、2020年ねんのデータをもとにまとめた報告ほうこく書しょでは、高等こうとう教育きょういくにおける負担ふたんの割合わりあいは日本にっぽんでは家計かけい負担ふたんが51％で、公的こうてき負担ふたんが36％、民間みんかん負担ふたんが13％となっています。

家計かけい負担ふたんの割合わりあいはコロンビアやチリなどに続つづいて5番目ばんめに高たかく、回答かいとうした37か国かこくの平均へいきんの22％を30ポイント近ちかく上回うわまわっています。

公費こうひ負担ふたんの割合わりあいはイギリスやコロンビアに続つづいて3番目ばんめに低ひくく、OECD加盟かめい国こくの平均へいきんの67％を30ポイント余あまり下回したまわっています。

GDP＝国内こくない総そう生産せいさんに占しめる高等こうとう教育きょういくに対にたいする公的こうてき支出ししゅつの割合わりあいも、日本にっぽんは0.5％と38か国かこくのうち3番目ばんめの低ひくさで、G7の中なかでは最もっとも低ひくくなっています。

出典しゅってん:OECD「Education at a Glance 2023」。

「今いまこそ費用ひよう負担ふたんのあり方ありかたから議論ぎろんを」

国立こくりつ大学だいがくの授業じゅぎょう料りょうをめぐる提言ていげんや動うごきが注目ちゅうもくされる中なか、大学だいがく経営けいえいに詳くわしい桜美林おうびりん大学だいがくの小林こばやし雅之まさゆき特とく任にん教授きょうじゅは、今いまこそ大学だいがくの費用ひよう負担ふたんのあり方ありかたから議論ぎろんするべきだと指摘してきしています。

「国立こくりつ大学だいがくの法人ほうじん化かから20年ねんの間まに運営うんえい費ひ交付こうふ金きんを年率ねんりつ1％ずつ減へらされていて、競争きょうそう的てきな資金しきんは入はいっていてもボディーブローのように効きいてきている。それに加くわえ最近さいきんの物価ぶっか高だかで非常ひじょうに苦くるしい状況じょうきょうにある。大だい都市とし圏けんの理系りけい大学だいがくは外部がいぶからの研究けんきゅう資金しきんを集あつめやすいが、地方ちほうの文系ぶんけいの大学だいがくはなかなか外部がいぶ資金しきんが取とれず、より厳きびしい。一方いっぽうで、国立こくりつ大学だいがくの役割やくわりは教育きょういくの機会きかい均等きんとうに寄与きよすることであり、地方ちほうの大学だいがくの中なかには授業じゅぎょう料りょうの引き上ひきあげに抵抗ていこうがある大学だいがくもある」

「大学だいがくが社会しゃかいにどういう貢献こうけんをしているのか明確めいかくに示しめしていかないといけない。所得しょとくの増加ぞうかや経済けいざいへの貢献こうけんだけではなく、例たとえば地方ちほうの国立こくりつ大学だいがくだと地域ちいきの医療いりょうを支ささえるといった貢献こうけんもしているがそれが目立めだつ形かたちで可視かし化かされていない。今回こんかい、国立こくりつ大学だいがくの授業じゅぎょう料りょうに注目ちゅうもくが集あつまっているのは非常ひじょうにいい機会きかいで、現状げんじょうを知しった上うえで大学だいがくの費用ひよう負担ふたんをどう分配ぶんぱいするのか、家計かけいに頼たよるだけでなく、公的こうてき負担ふたんや民間みんかん負担ふたんのあり方ありかたについても議論ぎろんしていく必要ひつようがある」