昔、ある村のお寺の本堂には、あずきとぎのお化けがいるとの噂だった。そしてその村には、ちと頭が足りない兵六(ひょうろく)という若い男がいた。
お化けや幽霊を全く怖がらない兵六は、村の若者と一緒にお寺へ肝試しに行く事になった。他の若者は途中で怖がって逃げ出したが、兵六だけは寺の本堂まであがり込んでいった。本堂には、とても恐ろしいあずきとぎ幽霊の声がする。「ショキショキショキ、小豆とぎましょうか?それとも人間を取って食いましょうか?」
全く怖がらない兵六に、お手上げ状態のあずきとぎ幽霊は、牛ほどもある大きなぼた餅を投げつけた。それを見た兵六は大喜びで、巨大なぼた餅をたいらげた。それからの兵六_は、夜になると寺の本堂に行って美味しいぼた餅をたらふく食べるようになった。しかし、毎晩少しずつぼた餅のサイズも小さくなっていった。
ある日、ぼた餅の話を村の人に話したところ、本当の話かどうか村の若い連中も一緒に本堂に行く事になった。しかし、その日に限って小さなぼた餅すら落ちてこなかった。怒ってどなる兵六の前に、巨大なナスの漬物が落ちてきた。「毎度毎度、ぼた餅は無いわい。たまにはナスの漬物でも食え。これが本当のモテナスじゃ」