FRBは31日までの2日間、金融政策を決める会合を開きました。
インフレ率が依然として目標の2%を上回っていることなどから政策金利を現在の5.25%から5.5%の幅に据え置くことを決定しました。FRBが金利を据え置くのは8会合連続です。
一方、声明では、インフレについて、前回の「依然として高い」から「いくぶん高い」に表現を弱め、雇用の伸びについては「強い」から「緩やかになっている」と表現を変えました。インフレと、物価上昇の要因となってきた労働市場のひっ迫が改善してきたという認識を示した形です。
パウエル議長は会合後の記者会見で利下げの方針を巡って「今後の会合については何も決定していない。これには次回・9月の会合も含まれる」と述べた一方で、「経済は政策金利の引き下げが適切となる時期に近づいている。利下げは早ければ9月の会合で決定される可能性がある」と述べました。
FRBは記録的なインフレを抑え込むために2年余りにわたって金融引き締めを続けてきましたが、金融政策の転換点が近づいていることが示されました。
【更新中】パウエル議長 会合後の記者会見 発言は
「確信が得られるまで適切でない」
FRBのパウエル議長は、会合後の記者会見で「インフレ率は過去2年で著しく低下したが、物価目標の2%に対してはいくぶん上回ったままである」と述べました。
その上で「労働市場が落ち着きインフレ率は低下した。よりよいバランスに移行しているが、われわれはインフレ率が2%に向かっているという確信が得られるまで、利下げすることは適切ではないと考える」と述べました。
「利下げ適切時期近づいている」
利下げの時期について「今後の会合について何も決定していない。これには次回・9月の会合も含まれる」と述べた一方、「会合メンバーのおおまかな感覚では経済は政策金利の引き下げが適切となる時期に近づいている」と述べました。
「早ければ9月会合で決定の可能性」
利下げの判断について「1つや2つの経済指標で対応するという問題ではない。経済指標や経済見通し、リスクのバランスが確信の高まりと堅調な労働市場の維持と一致するかどうかが重要だ。このテストに合格すれば、利下げは早ければ9月の会合で決定される可能性がある」と述べました。
「労働市場の冷え込み望まない」
雇用情勢について「2019年の(コロナ禍前の)状況に近づいている。当時はインフレ経済ではなかった。私は今の労働市場が大幅なインフレ圧力につながるとは考えていない。労働市場がこれ以上、冷え込むことは望んでいない」と述べて雇用情勢が正常化しつつあるとともに、失業率の上昇など雇用の冷え込みは望まないとの認識を示しました。
「政治に関与することは一切望まない」
FRBのパウエル議長は、会合後の記者会見で記者からトランプ前大統領が秋の大統領選挙の前に利下げをするべきではないとの認識を示しているが、9月に利下げするかどうかの判断は政治とは切り離すつもりかと問われたのに対して「間違いなくそうする」と述べ、中央銀行の独立性を強調しました。
パウエル議長は「われわれは、政党や政治家、それに何らかの政治的な結果を支持したり反対したりするために政策を使うことはない。選挙の前後や最中にかかわらず、経済指標や経済見通し、リスクバランス以外の何にも基づくことはない」と強調しました。
さらに、ハリス氏とトランプ氏の全く異なる経済政策に対応するかを問われたのに対し「われわれは非政治的な機関であり、政治に関与することは一切望まない」と明確に否定しました。
会見受け 一時1ドル=149円台半ばに値上がり
31日のニューヨーク外国為替市場は、FRBのパウエル議長がこの日の記者会見で「利下げは早ければ9月の会合で決定される可能性がある」などと発言したことから、次回・9月の会合で利下げに踏み切るとの観測が改めて広がりました。
このため、日米の金利差の縮小が意識されて円を買ってドルを売る動きが強まり、FRBの声明の発表前には1ドル=150円台後半だった円相場は一時、1ドル=149円61銭と、およそ4か月半ぶりの円高水準まで値上がりしました。
市場関係者は「パウエル議長の発言は驚くような内容ではなかったがインフレの収束に向けて自信を見せたことで9月に利下げに踏み切る可能性は高いとの受け止めも出た。日本時間の31日、日銀が利上げを決めたことや植田総裁の記者会見の発言を受けて日米の金利差の縮小が意識されやすくなっており、円がじりじりと買われた」と話しています。
株価も値上がり
31日のニューヨーク株式市場は、FRBのパウエル議長による記者会見の内容を受けて、次回・9月の会合でFRBが利下げに踏み切るとの観測が改めて広がりました。
このため、高い金利水準が続くことによる景気の先行きへの懸念が和らいでIT関連銘柄を中心に買い注文が増え、ハイテク関連銘柄の多いナスダックの株価指数の終値は前日と比べて2.6%の大幅な上昇となりました。
また、ダウ平均株価も値上がりし、終値は前日に比べて99ドル46セント高い4万842ドル79セントでした。
FRBの金利政策のこれまでは
FRBが利上げを開始したのはおととし(2022)3月。
それまでのします。金融引き締めによって景気を冷やすことでインフレを抑えこむねらいでした。
しかし、その後もインフレに収束の兆しは見えず、おととし6月の消費者物価指数は前の年の同じ月と比べ9.1%の上昇と、およそ40年ぶりの記録的な水準となりました。
このためFRBは、おととし6月から11月の会合までに踏み切りました。
こうした中、急速な利上げの影響を受けて去年3月から5月にかけては3つの銀行が経営破綻しました。
それでもFRBはを示し、去年3月と5月にそれぞれ0.25%の利上げを決定しました。 続く6月の会合では、それまでの金融政策の影響を評価するためなどとしておととし3月以降、初めて利上げを見送りましたが、去年7月の会合では、インフレの要因である人手不足が続いていることなどから0.25%の利上げを決定。 これで政策金利は5.25%から5.5%の幅と、となりました。FRBの利上げはこれでおととし3月以降、あわせて11回に及びました。 去年9月以降の会合では、物価の上昇が落ち着き、インフレの要因となっていた人手不足に改善の兆しが見られたことなどから、6会合連続で利上げを見送りFRBがとなっていました。 ただ、ことし1月から3月にかけて、インフレの根強さや経済の堅調さを裏付ける経済指標が相次ぎ、市場ではFRBのが広がりました。 その後は、消費者物価指数の上昇率が4月から3か月連続で前の月を下回るなどインフレ率の低下傾向が続いています。 また、FRBの最新の経済報告でもほぼすべての地区で、小売店の値下げや価格に敏感な消費者が購入を必需品に絞るといった傾向が見られると指摘されるなど、が見られています。 こうしたことから市場では、が強まっていました。