宝たからのひょうたん

昔むかし、あるところにそれは貧まずしい暮くらしをしている男おとこが一人住ひとりすんでいた。

この男おとこ、働はたらかずに毎晩毎晩近まいばんまいばんちかくの畑はたけから作物さくもつを失敬しっけいしていたが、ある時待ときまち伏ぶせていた畑はたけの持もち主ぬしに見みつかってしまう。しかしその百姓ひゃくしょうは男おとこに自分じぶんの山やまを少すこし譲ゆずり、畑仕事はたしごとをした方ほうがいいと勧すすめる。そして男おとこは畑はたけを耕たがやし、豆まめを作つくることになった。初はじめての畑仕事はたけしごとに最初さいしょは苦労くろうしていたが、自分じぶんの植うえた豆まめが芽めを出だしたので、男おとこは嬉うれしかった。

その内うち、鹿しかやイノシシなどが男おとこの作つくった作物さくもつを荒あらしに来くるようになった。だから男おとこは毎晩畑まいばんはたけに行いっては見張みはりを続つづけていた。

そんなある晩ばんのこと。男おとこがいつものように獣けものたちを追おい払はらった後あとで一息ひといきついていると、向むかいの山やまの一角いっかくがぽおっと光ひかり、賑にぎやかな音おとが聞きこえてきた。こんな夜更よふけに何なんだろうと思おもい男おとこは明あかりの方ほうへ行いってみた。

するとそこでは娘むすめが一人ひとり、山やまの動物どうぶつたちの打うち鳴ならす楽器がっきに合あわせて踊おどっていたのだった。茂しげみに隠かくれてその光景こうけいをしばらく眺ながめていた男おとこは、あまりに楽たのしそうだったのでついつい茂しげみを飛とび出だして娘むすめと踊おどりだした。そしてその晩ばん、男おとこは山やまの中なかで一晩中踊ひとばんじゅおどりり明あかしたそうな。

そのうち朝あさになって、動物どうぶつたちは帰かえって行いった。男おとこも山やまを下おりて家いえに帰かえろうとしたが、先さきほどの娘むすめが男おとこにくっついて一緒いっしょに行いきたいという。男おとこが承諾しょうだくすると、娘むすめは男おとこの背中せなかにおぶさって行いきたいと言いってきたので、男おとこは娘むすめの持もっていたひょうたん二ふたつと娘むすめをおぶって山やまを下おりて行いった。

その娘むすめとひょうたん二ふたつは妙みょうに重おもく、男おとこは少しょうしょう々後悔こうかいしながら山やまを下おりた。そうしたらいつの間まにやら娘むすめとひょうたんは沢山たくさんの黄金おうごんになっていた。

娘むすめとひょうたんが何故黄金なぜおうごんになったのかは結局けっきょくわからずじまいではあったが、男おとこはその黄金おうごんで大金持おおがねもちになることが出来できたという。