一方、政府は、中国側に国民に冷静な行動を呼びかけるなど適切な対応を行うよう強く求めていくとしています。
処理水放出後、相次ぐ迷惑電話をめぐる国内の動きをまとめました。
処理水放出後 迷惑電話が100件以上 暴言も 宮城 白石市
宮城県白石市にある観光施設、「宮城蔵王キツネ村」には、処理水の放出開始後、中国からとみられる迷惑電話が100件以上かかっているということです。
施設によりますと、福島第一原子力発電所にたまる処理水の海への放出が始まった今月24日以降、中国の国番号「86」から始まる国際電話の着信が相次ぎ、電話に出ると一方的に暴言を吐かれることもあったということです。
こうした電話は1分間隔でかかってくる日もあり、今月24日から28日までにかかってきた迷惑電話は少なくとも100件以上にのぼるということです。
この施設は放し飼いにしたキツネと触れ合えることで人気の観光スポットで、28日も多くの人が訪れていましたが、事務所の電話機には中国からとみられる国際電話がかかり、従業員などが対応に苦慮していました。施設では着信を受けた記録とともに警察に被害届を出したということです。
「蔵王キツネ村」の佐藤文子村長は「意味の分からない内容の電話が多すぎて困っています。『バカ』や『死ね』など日本語もありますが、多くは中国語でかかってきます。相手にしないようにするしか対策のしようがありませんが、このようなことをしてもしかたないのでやめてほしいです」と話していました。
中国からとみられる国際電話 各地で相次ぐ 業務支障も
また、青森県大間町にある地元で水揚げされたマグロなどを取り扱う土産店でも25日、中国からとみられる国際電話の着信があったということです。
店によりますと、担当者が電話に応対すると若い女性の声で中国語のような言葉でおよそ10秒間、怒鳴るように一方的に話してきたということです。
この店への着信は1回のみでしたが、店の担当者は、「急にこのような電話が来て一方的に電話を切られて訳が分からなかった。福島では悪質ないたずら電話が相次いでいると聞いていて、今後、しつこくかかるようなら警察に相談しようと思う」と話しています。
中国の国番号から始まる国際電話は、福島県内の自治体や飲食店などにも相次いでいて、業務に支障が出ているという相談が警察に数多く寄せられているほか、東京・江戸川区の公共施設にも業務と直接関係の無い国際電話の着信が、24日から相次いだということです。
中国のSNS 日本非難するよう呼びかける投稿相次ぐ
福島第一原子力発電所にたまる処理水を巡る日本の対応を受け、中国のSNSには、日本を非難するよう呼びかける投稿が相次いでいます。
SNSウェイボーの投稿の中には「『核汚染水』を海に流した日本を非難したい人は、この番号に電話してください」という文言とともに、日本の参議院の電話番号が記載されたものもあります。
また、東京都内の施設に電話をしたとされる動画では、男性が「なぜ『核汚染水』を海に放出するのか」などと一方的に中国語で話す様子がうつされています。
外務次官 中国大使呼び出し抗議 “冷静な行動国民に呼びかけを”
外務省によりますと、中国・北京にある日本大使館などにも同様の電話がかかってきているほか、青島の日本人学校では敷地に石が投げ込まれたということです。
これを受けて、外務省の岡野事務次官は28日午後、中国の呉江浩駐日大使を外務省に呼び出し、「状況の改善がみられず、極めて遺憾で憂慮している」と抗議しました。
その上で、中国政府に対し、
▽冷静な行動を国民に呼びかけるなど適切な対応を早急に行うことや
▽中国に滞在している日本人や大使館の安全確保に万全を期すこと、
▽人々の不安をいたずらに高めないよう、正確な情報を発信することを強く求めました。
“極めて遺憾” 松野官房長官
東京電力福島第一原発にたまる処理水の放出開始後、中国にある日本の関係機関などに嫌がらせが相次いでいることについて、松野官房長官は極めて遺憾だとして、中国政府に対し、冷静な対応を国民に呼びかけるとともに、正確な情報を発信するよう求める考えを示しました。
松野官房長官は記者会見で「こうした事案が生じていることは極めて遺憾であり、憂慮している。政府としては今後とも高い透明性を持って科学的根拠に基づく丁寧な情報提供を続けていくと同時に、邦人保護に万全を期していく」と述べました。
その上で「中国で日本製品の不買運動や日本への旅行のキャンセルなどが起きているとの報道は承知している。中国側には国民に冷静な行動を呼びかけるなど適切な対応を行うとともに、処理水について正確な情報を発信することを引き続き強く求めていく」と述べました。
警察 “身に覚えない番号や非通知の電話出ないで”
相談が多く寄せられていることを受け、福島県警は26日、注意喚起を行いました。
この中では
▽身に覚えのない電話番号や番号非通知の電話には出ないこと、
▽固定電話では、身に覚えのないのにかかってきた電話番号をNTTの「迷惑電話おことわりサービス」に登録すること、
▽携帯電話は、国際電話の受信拒否の設定をすることといった対策をとるよう呼びかけています。
警察は自治体などと連携して、必要な捜査を進めるとしています。