将棋しょうぎ「王座おうざ戦せん」が開幕かいまく 挑戦ちょうせん者しゃの藤井ふじい七なな冠かん 史上しじょう初はつの八はち冠かんなるか

「王座おうざ戦せん」五ご番ばん勝負しょうぶの第だい1局きょくは、31日にちから神奈川かながわ県けん秦野はだの市しの旅館りょかんで始はじまりました。

先さきに対局たいきょく室しつに入はいった永瀬ながせ王座おうざに続つづいて挑戦ちょうせん者しゃの藤井ふじい七なな冠かんが盤ばんの前まえに座すわり、振ふり駒こまの結果けっか、藤井ふじい七なな冠かんが先手せんてとなりました。

午前ごぜん9時じに対局たいきょく開始かいしが告つげられると、藤井ふじい七なな冠かんはお茶おちゃをひとくち含ふくんでから飛車ひしゃ先さきの歩ふを突つき、後手ごての永瀬ながせ王座おうざも同様どうように歩ふを突ついて応おうじました。

そのあとは、大だい駒こまの「角かく」を交換こうかんして互たがいに駒こま組くみを進すすめ、序盤じょばん戦せんが始はじまりました。

「王座おうざ」は藤井ふじい七なな冠かんが保持ほじしていない唯一ゆいいつのタイトルで、今回こんかいの五ご番ばん勝負しょうぶに勝かつと、史上しじょう初はつの八はち大だいタイトル独占どくせんとなります。

一方いっぽう、「王座おうざ戦せん」4連覇れんぱ中ちゅうの永瀬ながせ王座おうざは、防衛ぼうえいを果はたすとこのタイトルでは3人にん目めとなる永世えいせい称号しょうごう「名誉めいよ王座おうざ」の資格しかくを獲得かくとくします。

2人にんは練習れんしゅう将棋しょうぎを指さす研究けんきゅう仲間なかまとしても知しられ、公式こうしき戦せんの対戦たいせん成績せいせきは藤井ふじい七なな冠かんが11勝しょう、永瀬ながせ王座おうざが5勝しょうです。

「王座おうざ戦せん」五ご番ばん勝負しょうぶはことし10月つきにかけて日程にっていが組くまれ、先さきに3勝しょうした方ほうがタイトルを獲得かくとくします。

第だい1局きょくの勝敗しょうはいは31日にち夜よる決きまる見通みとおしです。

対局たいきょく相手あいては研究けんきゅう仲間なかまとして知しられる永瀬ながせ王座おうざ

藤井ふじい聡さとし太たい七なな冠かんは、2016年ねん、中学ちゅうがく2年ねんのときに史上しじょう最年少さいねんしょうとなる14歳さい2か月かげつでプロ入いりし、デビュー後ごには前人ぜんじん未到みとうの29連勝れんしょうを達成たっせいしました。

そして2020年ねん7月つきにはタイトル獲得かくとくの最年少さいねんしょう記録きろくを30年ねんぶりに更新こうしんする17歳さい11か月かげつで「棋聖きせい」を獲得かくとくし、そのあとも「王位おうい」、「叡あきら王おう」、「竜王りゅうおう」、「王将おうしょう」、「棋王きおう」を次々つぎつぎに奪取だっしゅ。

ことし6月つきには最年少さいねんしょうで「名人めいじん」を獲得かくとくして、現在げんざい、日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめいの会長かいちょうをつとめる羽生はぶ善治よしはる九きゅう段だん以来いらいとなる2人にん目めの「七なな冠かん」となりました。

さらに藤井ふじい七なな冠かんはこれまでに、獲得かくとくしたタイトルを失うしなったことはありません。

連続れんぞくでの獲得かくとく期き数すうは大山おおやま康晴やすはる十じゅう五ご世せい名人めいじんに次つぐ、歴代れきだい2位いの17期きに上のぼります。

その藤井ふじい七なな冠かんが最後さいごに残のこしたタイトル「王座おうざ」獲得かくとくを目指めざして挑戦ちょうせんする相手あいてが永瀬ながせ拓たく矢や王座おうざです。

これまで「王座おうざ戦せん」4連覇れんぱ中ちゅうで、今回こんかいのタイトル戦せんで防衛ぼうえいを果はたすと、このタイトルでは3人にん目めとなる永世えいせい称号しょうごう「名誉めいよ王座おうざ」の資格しかくを獲得かくとくします。

将棋しょうぎに対にたいして、厳きびしく熱心ねっしんな姿勢しせいから「軍曹ぐんそう」の異名いみょうで呼よばれる永瀬ながせ王座おうざは、藤井ふじい七なな冠かんとふだんから練習れんしゅう将棋しょうぎを指さす研究けんきゅう仲間なかまとして知しられ、藤井ふじい七なな冠かんは、挑戦ちょうせん権けんを得えたときの記者きしゃ会見かいけんで「永瀬ながせ王座おうざは私わたしがプロ入いりしたときから将棋しょうぎを教おしえてもらい、自分じぶんを引き上ひきあげていただいた方ほうだと思おもっている。ふだんから指さしているので手の内てのうちを知しられてしまっているところもあり、五ご番ばん勝負しょうぶに向むけてさらに工夫くふうが必要ひつようだと感かんじている」と話はなしていました。

2人にんの公式こうしき戦せんの対戦たいせん成績せいせきはこれまで藤井ふじい七なな冠かんが11勝しょう、永瀬ながせ王座おうざが5勝しょうです。

このうち、去年きょねんの「棋聖きせい戦せん」五ご番ばん勝負しょうぶでは藤井ふじい七なな冠かんが3勝しょう1敗はいでタイトルを防衛ぼうえいしましたが、第だい1局きょくでは、同おなじ局面きょくめんを繰り返くりかえす「千日手せんにちて」が2度ど成立せいりつするという異例いれいの展開てんかいを経へて、「指さし直なおし」の結果けっか永瀬ながせ王座おうざが勝利しょうりするなど、白熱はくねつした対局たいきょくを繰り広くりひろげました。

今回こんかい、藤井ふじい七なな冠かんは最もっとも手てごわい棋士きしの1人にんを相手あいてにタイトル獲得かくとくを目指めざすことになります。

日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい 羽生はぶ会長かいちょう「将棋しょうぎ界かいの歴史れきしに残のこるような将棋しょうぎを」

史上しじょう初はつの八はち大だいタイトル独占どくせんをかけて藤井ふじい聡さとし太たい七なな冠かんが臨のぞむ「王座おうざ戦せん」五ご番ばん勝負しょうぶ。

開幕かいまくを前まえに、27年ねん前まえに当時とうじの七なな大だいタイトルを独占どくせんした日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめいの羽生はぶ善治よしはる会長かいちょうに話はなしを聞ききました。

羽生はぶ会長かいちょうは八はち冠かん制覇せいはの可能かのう性せいについて「藤井ふじいさんの将棋しょうぎを見みていると、自分じぶん自身じしんの形勢けいせいが悪わるくなる瞬間しゅんかんが非常ひじょうに少すくないという特徴とくちょうがある。苦戦くせんするときや負まけてしまうときもあるが、全体ぜんたいから見みるとその確率かくりつが少すくないことが際立きわだっている。大だい舞台ぶたいでもふだんどおりの力ちからを発揮はっきし、悪わるくなっても崩くずれずに逆転ぎゃくてんのチャンスをうかがう総合そうごう的てきな戦たたかい方かたはより洗練せんれんされ、今いまの充実じゅうじつぶりを考かんがえれば、藤井ふじいさんが勝かって八はち冠かんを達成たっせいしてもそんなに驚おどろくことではない」と語かたりました。

羽生はぶ会長かいちょうは1996年ねん2月つき、25歳さいのときに将棋しょうぎ界かいで初はじめて七なな大だいタイトルを独占どくせんしました。

前まえの年としにも七なな冠かんをかけて王将おうしょう戦せんで当時とうじの谷川たにがわ浩司こうじ王将おうしょうに挑いどみましたが、3勝しょう4敗はいで敗やぶれ、そのあとの1年間ねんかんですべての防衛ぼうえい戦せんを制せいした上うえで再ふたたび臨のぞんだ大だい一いち番ばんでした。

羽生はぶ会長かいちょうは当時とうじについて「初はじめて挑戦ちょうせんしたときは阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいがあった年としで記憶きおくに残のこっている。フルセットまでいって負まけてしまい残念ざんねんだった気持きもちはあるが、10日にち後ごくらいには名人めいじん戦せんが始はじまり、次つぎの対局たいきょくに向むかっていくような気持きもちだった。移動いどうが多おおく、間隔かんかくが短みじかい中なかで対局たいきょくしなければならないのは大変たいへんだが、棋士きしにとって宿命しゅくめいみたいなところもある。七なな冠かんを達成たっせいしたときもすごくうれしかったみたいな感情かんじょう的てきなインパクトは残のこっておらず、慌あわただしい時ときがあっという間あっというまに流ながれ去さった感覚かんかくだ」と振り返ふりかえりました。

そのうえで、今回こんかいの「王座おうざ戦せん」について「将棋しょうぎそのものは当時とうじと比くらべて30年ねん弱じゃくたっているので定跡じょうせきや戦術せんじゅつ的てきなものはかなり変かわった。ただお互おたがいに懸命けんめいに研究けんきゅうしたり分析ぶんせきしたりして1局きょく1局きょくに臨のぞんでいく姿勢しせいは変かわっていないと思おもう」と話はなしていました。

ことし行おこなわれた「王将おうしょう戦せん」をはじめ、藤井ふじい七なな冠かんとたびたび対局たいきょくしてきた羽生はぶ会長かいちょうですが、その強つよさについては「1つ2つというような選択せんたく肢しだけを深ふかく読よんでいるのではなく、もう少もうすこし幅広はばひろい選択肢せんたくしを1つ1つの局面きょくめんで読よんでいるのではないかと思おもう。5手てずつ3手先てさきを読よめばもう100手てを超こえるので、言いうのは簡単かんたんだが思考しこうの方法ほうほうとしては負荷ふかがかかる。未知みちな場面ばめんや答こたえが出でない領域りょういきでの選択せんたくや考え方かんがえかたに、何なにかほかの棋士きしとの違ちがいがあるのではないかと思おもう」と語かたりました。

そして永瀬ながせ拓たく矢や王座おうざとの「王座おうざ戦せん」五ご番ばん勝負しょうぶについては「永瀬ながせさんは練習れんしゅう量りょうをこなしていくというところでは棋士きしの中なかでナンバーワンではないかと思おもっている。序盤じょばんのオプションをたくさん持もっているので、藤井ふじいさんといえどもすべて対策たいさくを立たてきるのは難むずかしい。永瀬ながせさんの作戦さくせんに藤井ふじいさんがどう反応はんのうするかが1つの見みどころになる。将棋しょうぎ界かいの歴史れきしに残のこるような将棋しょうぎを指さしてほしい」と期待きたいを寄よせていました。