改めて、タキミカさん、生年月日から言ってもらえますか。
(タキミカ)
1931年生まれの90歳です。
(古谷)
それが信じられないんですよね。
(タキミカ)
ああ、そうですか。
(古谷)
東京の品川のお生まれで。
実家がすし店で、少女時代の運動といえば?
(タキミカ)
何もやってませんね、ないんですもん。ただやったのは、戦争で、バケツリレーみたいなことはやりました。
(古谷)
タキミカさんは昭和6年生まれだから、10歳のときに、太平洋戦争が始まりましたよね。
(タキミカ)
はい。ブーンって遠くから敵の飛行機が来ると、「空襲警報!」って言ってね。みんなで防空ごうに行きましたね。
(古谷)
そういうお話を伺ってると、確かにタキミカさん、昭和6年生まれだなっていうのが分かってきます。説得力ありますね。
(タキミカ)
ありがとうございます。
でも、こんなこと説得したってしょうがないじゃない(笑)
(古谷) やりがいもあって仕事をしてきた中、24歳で結婚されたんですよね? (タキミカ) はい、そうです。 (古谷) どうしてまた? (タキミカ) どうしてまたって、もらってくれる人が出てきたから(笑) (古谷) 今の人だったらね、例えば、女性の社会進出だとか、働く女性とか大勢いるじゃないですか。 (タキミカ) だって、みんな友達、結婚しちゃうんですもん。周りの友達がみんな結婚して残されちゃう。ハハハハハ。 (古谷) そういう時代なんですね。 (タキミカ) そういう時代ですね。私は遅いほうだったので、全くためらいなく仕事を辞めました。 (古谷) そして、専業主婦として家事と2人の娘の子育てに専念。すっかり家に入ると。 (タキミカ) はい、入りましたね。子どもができるとどうしても働けなかったんですよ。 おむつも替えなきゃいけない、昼間のうちに風呂へ入れなきゃいけないとかね。でも、子どもたちの手が離れたら、洗濯物はカクっと少なくなる。洗う茶わんも少なくなる。もう時間が余る。だから、やらないといけないことをやった後は、せんべい食べたり、コーヒー飲んだりしてゴロゴロ。ゴロゴロしてるうちに、太ってきちゃったんですよね。ちょっとズボンはくとチャックが上がらない、そのうちに太ももも太くなって、ジーパンが入らなくなりました。あぁ、やっぱり太ったなと。そうして気がついたら15キロ太りました。
(タキミカ) 太ったんですよね。そしたら、お父さん(=夫)がね、ジムを探してきたんですよ。 (古谷) スポーツジムを? (タキミカ) はい。「おまえ、こういうとこあるから、行け」って言うから。それで自転車で行きました。一日体験させていただいたんです。 楽しそうにやってたんですよ。何十人と踊ってるんですよね。それを後ろのほうで見て、すごいなと思いながら。でもみんな楽しそうに踊ってるから、楽しいんだろうなって思って。そのスポーツジムに次の日、行きましたよ。 (古谷) 次の日? (タキミカ) 次の日に。「お父さん、通帳と印鑑貸してちょうだい」って。それを持って自転車で行って、10時と同時にお客さんになりました。入会手続きしました。 インストラクターの先生に「私、痩せるために来た」って話をしたんですね。すると、「痩せるのに2通りあるんです」って。「早く痩せたいか、時間をかけてきれいに痩せたいか。どっちをとりますか?」って。 「それはどういう意味ですか」って聞いたら、「早く痩せると太ったところ、よけいな肉も取れない。ブラブラが残る。じっくり時間をかければ、そういうブラブラもなくなって、ピチっとなりますよ」って。「じゃあ、私は時間をかけるほうで」って。
(古谷) いきなりね、65歳でそういう運動を始めるのはいいですけど、筋肉痛とか、あちこち体の故障とか出なかったですか? (タキミカ) ありましたよ! もちろん、筋肉痛はありましたね。足なんか3日、4日、消えないですよ。痛くて。それが続きますよね。それでも治りますよね、日にちがたてば。で、また運動すると、また痛いですよね。それを繰り返しているうちに、筋肉痛が全くなくなったんです。もう何をやっても痛くない! (古谷) もう大丈夫だなと。 (タキミカ) 大丈夫です。全然痛くないんです。 (古谷) 普通はね、三日坊主とかやっぱりあるじゃないですか。 (タキミカ) でも、私の場合はすごく楽しくって、ハマってしまって、ルンルン。ルンルンってのは、オーバーかもしれないけど。だんだんきれいになっていくじゃないですか。そうすると自分でも楽しくなってきて、やめるっていうことは考えない。もっとすばらしくなりたいという欲が出てくるんですよ。 (古谷) もっと痩せられるんじゃないかって? (タキミカ) きれいになるんじゃないかってね。欲が出てくる。
(古谷) なぜ、87歳でインストラクターになろうと? (タキミカ) なっちゃったんですよ。それまで教えてくれていたインストラクターの先生が、何の前触れもなく「ちょっとちょっと…」って言うから、「はい?」って。そしたら、「きょうここで、インストラクターとしてやってもらいます」って言うから、「ええー!?」って感じで。そんなことやったことないのに、できるわけないじゃないですか。 (古谷) 今まで生徒だったのにね。 (タキミカ) そう。その日も私は生徒だったはずなのに。でも、仕事を持つことは楽しいですよね。人の役に立てるやりがいがうれしいですから。私たちの時代ではあまり考えられなかったけど、今は女性も社会に出て働けて、とてもすばらしいことだと思いますよ。
筑波大学大学院の久野教授は、十分可能だと話しています。高齢者も適度な筋トレを3か月行うことで、筋肉量が10~15%増加するというデータもあります。今、コロナの影響によって、外に出られず、免疫力の低下や基礎疾患の悪化などが懸念されます。久野教授は「高齢者になっても誰でも、適度な筋トレで効果は出るので、スクワットなどで下半身を中心に鍛えてほしい」と話しています。 ただ、トレーニングには注意点があります。国立長寿医療研究センターロコモフレイルセンターの松井康素センター長は、「コロナで陽に当たらない傾向がより増して、ビタミンDの不足欠乏になりやすい。日光浴の意味でも、適度に外に出ることが必要」と指摘したうえで、注意すべきこととして「一般の方は、急に量を増やさずに徐々にトレーニング量を増やすこと、転倒に注意すること」をあげています。また、「やり方によっては、かえって痛みが増してしまうこともあるので、ひざなどに痛みのある場合は、無理に行わず、痛みの出ない方法や回数に抑えてほしい」と松井センター長は話しています。
(古谷) お話を伺っていると、タキミカさんは単に体を動かすだけじゃない、メンタルっていうんですか、心の持ち方からして違うなと思ったんですよね。 (タキミカ) そうですか。今コロナのためにストレスがたまったとか、落ち込んでるとか、暗くなっちゃった方がいっぱいいると思うんですよね。これから先、コロナが落ち着いたら、47都道府県のそういう方を元の明るさに持っていきたいですよね。世の中を明るくしたいですよね。 それから、アメリカのほうはスポーツが盛んでしょ。新しいものが向こうから入ってくるくらいですから。どんなトレーニングなのか、やってみたいなぁと。夢ですけどね。それには、英語もできないといけないってね。だから、英語もちょっと勉強中なんですけども。 (古谷) 勉強してるんですか? よろしかったら、ちょっと今やってみていただけますか? (タキミカ) はい。I was born 1931. I am 90 years old. Age does not matter. Age is just a number. Our credo ”がんばりましょう“(私は1931年に生まれました。90歳です。年齢は重要じゃない。ただの数字です。私たちの信条は、”がんばりましょう“) (古谷) おおー! もうバッチリじゃないですか。 (タキミカ) いやいや、バッチリじゃない。まだまだ勉強中です。 (古谷) タキミカさん、今日は、元気をいただきました。ありがとうございます。 (タキミカ) よかったです。ありがとうございました。ほんとに、元気をいただいたっていうその言葉、うれしいです。ほんと、年齢はただの数字です。絶対に諦めないでくださいね。 (古谷) はい。 (タキミカ) 頑張りましょう! 『インタビューここから 瀧島未香』 放送は、9月20日(月)午前6時30分~(総合テレビ) https://www.nhk.jp/p/a-holiday/ts/M29X69KZ1G/episode/te/1V56GRQN6G/
ゴロゴロしてたら15キロも太った
65歳で運動に出会う
87歳でインストラクターに
高齢になっても筋肉量は増える
90歳 次なる夢は