日本新聞: 新型コロナ追加接種やオミクロン株対応ワクチンどう考える

秋あきにまた、新型しんがたコロナウイルスのワクチン接種せっしゅ？

厚生こうせい労働ろうどう省しょうはオミクロン株かぶに対応たいおうしたワクチンの接種せっしゅを、10月つき中旬ちゅうじゅん以降いこうに開始かいしする方針ほうしんを決きめました。

追加ついかの接種せっしゅはいつ受うけるのか。オミクロン株かぶ対応たいおうのワクチンを待まったほうがいいのか。どう考かんがえればよいのか、専門せんもん家かに聞ききました。

オミクロン株かぶ対応たいおうワクチンが10月つき中旬ちゅうじゅん以降いこうに

オミクロン株かぶに対応たいおうした新あたらしいワクチンの接種せっしゅを10月つき中旬ちゅうじゅん以降いこうに始はじめる。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは8月つき8日にち、このような方針ほうしんを決きめました。

対象たいしょうは、2回かい目めまでの接種せっしゅを終おえたすべての人ひと。

詳くわしく言いうと、新あたらしいワクチンは、ことし初はじめごろからの第だい6波はで広ひろがったオミクロン株かぶの「BA.1」に対応たいおうしたワクチンと、これまで接種せっしゅしてきた元もとの新型しんがたコロナウイルスのワクチンの2種類しゅるいが含ふくまれています。

「2価か（にか）ワクチン」と呼よばれるタイプです。

2回かい目めまでの接種せっしゅを終おえた人ひとは3回かい目めとして、3回かい目めまでの接種せっしゅを終おえた人ひとは4回かい目め、4回かい目めの接種せっしゅを終おえた高齢こうれい者しゃなどにとっては5回かい目めの接種せっしゅになる見込みこみです。

オミクロン株かぶ対応たいおうワクチン効果こうかは

オミクロン株かぶに対応たいおうするワクチンは効果こうかが期待きたいできるのか。

いま使つかわれているmRNAワクチンは、2年ねん前まえに新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいが始はじまった当初とうしょの「野生やせい株かぶ」などと呼よばれるウイルスの遺伝いでん情報じょうほうを使つかって作つくられています。

接種せっしゅすると「スパイクたんぱく質たんぱくしつ」が体内たいないで作つくられ、さらに、これに対応たいおうする形かたちの抗体こうたいができてウイルスを抑おさえます。

ところが新型しんがたコロナウイルスは次々つぎつぎに変異へんいしていて、ことしの初はじめごろからはオミクロン株かぶの「BA.1」や「BA.2」が広ひろがり、今いまは「BA.5」がほぼすべてを占しめています。

抗体こうたいが狙い撃ねらいうちするウイルスの部分ぶぶん「スパイクたんぱく質たんぱくしつ」の形かたちが変かわってしまっていて、これまでのワクチンで感染かんせんや発症はっしょうを防ふせぐ効果こうかは以前いぜんの変異へんいウイルスに対にたいしてよりも下さがっています。

このため、オミクロン株かぶの遺伝いでん情報じょうほうを使つかってワクチンを作り直つくりなおせば効果こうかが高たかまるのではないかと考かんがえられているのです。

国内こくないでは、ファイザーが8月つき8日にち、モデルナが8月つき10日にちに、それぞれ、「BA.1」と従来じゅうらいのウイルスに対応たいおうした「2価かワクチン」の承認しょうにんを厚生こうせい労働ろうどう省しょうに対にたいして申請しんせいしました。

ファイザーの発表はっぴょうによりますと、56歳さい以上いじょうの1200人にん余あまりが参加さんかした臨床りんしょう試験しけんの中なかで、4回かい目めの接種せっしゅとして使つかった場合ばあいの中和ちゅうわ抗体こうたいの値ねが従来じゅうらい型がたのワクチンを使つかった場合ばあいと比くらべて1.56倍ばいに上昇じょうしょうしたということです。

安全あんぜん性せいに問題もんだいはなかったとしています。

モデルナは、第だい三さん者しゃの査読さどくを受うける前まえに公表こうひょうした論文ろんぶんの中なかで、アメリカで行おこなった臨床りんしょう試験しけんの結果けっか、4回かい目めの接種せっしゅとして使つかった場合ばあいの中和ちゅうわ抗体こうたいの値ねが従来じゅうらい型がたのワクチンを使つかった場合ばあいと比くらべて1.75倍ばいに上昇じょうしょうしたとしています。

副ふく反応はんのうは、接種せっしゅした場所ばしょの痛いたみが77％、けん怠けんたい感かんが55％、頭痛ずつうが44％などで、大だい部分ぶぶんは軽度けいどから中なか程度ていどだったとしています。

「オミクロン株かぶ対応たいおうワクチン必要ひつよう従来じゅうらい型がた使つかうよりはいい」

臨床りんしょうウイルス学がくが専門せんもんで、ワクチンに詳くわしい北里きたざと大学だいがくの中山なかやま哲夫てつお特とく任にん教授きょうじゅは「さまざまな変異へんいウイルスが出でてきて、オミクロン株かぶはそれまでの変異へんいウイルスに比くらべてとても多おおくの変異へんいを持もっている。ウイルスの特徴とくちょうがかなり変かわってきているので、従来じゅうらい型がたのワクチンでは対応たいおうしきれない側面そくめんがあり、オミクロン株かぶ対応たいおうのワクチンが必要ひつようになってくると思おもう。従来じゅうらい型がたのワクチンを使つかうよりはいいだろう」と指摘してきしています。

「ワクチンのアップデートは必須ひっす」

数理すうり疫学えきがくが専門せんもんで京都大きょうとだい学がくの西浦にしうら博ひろし教授きょうじゅは、8月つき10日にちの厚生こうせい労働ろうどう省しょうの専門せんもん家か会合かいごうのあと、いま国内こくないでほぼすべてを占しめている「BA.5」は「BA.1」に感染かんせんして得えられる免疫めんえきを回避かいひすることが知しられていると指摘してきしたうえで「新あらたなワクチンは『従来じゅうらい型がたのワクチンよりは効きくだろう』といったことまでは言いえるが、過度かどの期待きたいをしてはならないと考かんがえる。今後こんごも感染かんせんが続つづくと思おもわれる以上いじょうは、高齢こうれい者しゃなど重症じゅうしょう化かリスクの高たかい人ひとに接種せっしゅすることは必要ひつようで、ワクチンのアップデートは必須ひっすのものだ」とコメントしています。

「いままでのワクチンより効果こうかが下さがることはない」

また、免疫めんえき学がくが専門せんもんで大阪おおさか大学だいがく免疫めんえき学がくフロンティア研究けんきゅうセンターの宮坂みやさか昌之まさゆき招しょうへい教授きょうじゅは「当初とうしょはそれぞれの変異へんいウイルスに応おうじたワクチンができればいいと思おもっていたが、オミクロン株かぶの変異へんいはこれまでと大おおきく異ことなっていて、ウイルスはわれわれの免疫めんえきから逃のがれる変異へんいがどんどん蓄積ちくせきされている。これまで以上いじょうに強つよいワクチンができるかというと、大おおきな期待きたいはできないと思おもっている。ただ、いままでのワクチンより効果こうかが下さがることはないと思おもう」と話はなしています。

いま接種せっしゅするかオミクロン株かぶワクチンを待まつか

秋あきに新あたらしいワクチンの接種せっしゅが始はじまることが見みえてきた中なかで、新あたらしいワクチンを待まつべきなのか。

過去かこ最多さいたの感染かんせん者しゃ数すうを更新こうしんする今いまの感染かんせん状況じょうきょうで、3回かい目めや4回かい目めの接種せっしゅがまだな人ひとは、いま接種せっしゅすべきなのかどうか。

首相しゅしょう官邸かんていのウェブサイトによりますと、8月つき12日にちの時点じてんで

▽2回かいの接種せっしゅを終おえた人ひとは人口じんこうの81％にあたるおよそ1億おく256万まん人にん、

▽3回かい目めの接種せっしゅを終おえた人ひとは人口じんこうの63.6％にあたるおよそ8055万まん人にん、

▽高齢こうれい者しゃなどを対象たいしょうに進すすめられている4回かい目めの接種せっしゅを終おえた人ひとはおよそ1778万まん人にんとなっています。

ワクチンの接種せっしゅの際さいには前回ぜんかいの接種せっしゅから一定いっていの期間きかんを空あけることとしていますが、秋あき以降いこうのワクチン接種せっしゅについては、これまでの接種せっしゅからどれくらいの接種せっしゅ間隔かんかくをとるべきかはまだ示しめされていません。

「いま接種せっしゅができるなら早はやめの接種せっしゅ検討けんとうを」

厚生こうせい労働ろうどう省しょうの予防よぼう接種せっしゅ・ワクチン分科ぶんか会かいの分科ぶんか会長かいちょうも務つとめる国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょの脇田わきた隆たかし字じ所長しょちょうは、8月つき10日にちの厚生こうせい労働ろうどう省しょうの専門せんもん家か会合かいごうのあとの記者きしゃ会見かいけんで「オミクロン株かぶ対応たいおうのワクチンが10月つき半なかばから導入どうにゅうされても、接種せっしゅがすぐに十分じゅうぶんになされるのか、まだよく分わからない部分ぶぶんがある。今いまのワクチンでも、オミクロン株かぶに対にたいする重症じゅうしょう化か予防よぼう効果こうかが増加ぞうかされる効果こうかはあるので、いま、3回かい目めや4回かい目めの接種せっしゅができるという状況じょうきょうがあれば、早はやめの接種せっしゅを検討けんとういただくことは必要ひつようなのではないかと思おもう」と指摘してきしました。

「3回かい目め接種せっしゅ済すませていない人ひといま使用しようできるワクチンを」

北里きたざと大学だいがくの中山なかやま特とく任にん教授きょうじゅは「現状げんじょうでこれだけ感染かんせんが広ひろがり、重症じゅうしょう者しゃも増ふえている状況じょうきょうなので、まだ3回かい目めの接種せっしゅを済すませていない人ひとは、オミクロン株かぶ対応たいおうのワクチンを待まつのではなく、いま使用しようできるワクチンを接種せっしゅすることを考かんがえてほしい」と話はなしています。

また、アメリカのFDA＝食品しょくひん医薬品いやくひん局きょくが「BA.4」や「BA.5」に対応たいおうしたワクチンの開発かいはつを勧告かんこくしていることについて「完成かんせいまでに数すうか月かげつはかかるだろう。それを待まつよりも、これから出でてくるワクチンを接種せっしゅしたほうがいい」と述のべました。

「いまあるワクチン接種せっしゅできるときに接種せっしゅするほうがいい」

大阪おおさか大学だいがくの宮坂みやさか招しょうへい教授きょうじゅも「いまあるワクチンを、接種せっしゅできるときに接種せっしゅするほうがいいだろうと考かんがえる。今いまのワクチンはそれなりに回数かいすうを重かさねれば効果こうかが出でるということは分わかっている。変異へんいウイルスに対応たいおうしたワクチン開発かいはつはいたちごっこで、いま接種せっしゅできるものをしっかりと確実かくじつに接種せっしゅすることが大事だいじなんだと考かんがえている」と話はなしています。

4回かい目めワクチンの効果こうかは

実際じっさいに4回かい目めのワクチン接種せっしゅについては、入院にゅういんや死亡しぼうのリスクが下さがる、効果こうかが高たかいといった報告ほうこくが各国かっこくから出だされてきています。

（※図ずは数値すうちが低ひくいほど効果こうかが高たかいことを示しめす）

イスラエルの研究けんきゅうグループは8月つき2日にち、医学いがく雑誌ざっしの「JAMAネットワーク・オープン」で、医療いりょう従事じゅうじ者しゃ2万まん9000人にん余あまりを対象たいしょうに4回かい目めの接種せっしゅの結果けっかを分析ぶんせきした結果けっかを報告ほうこくしました。

それによりますと、ことし1月つき、オミクロン株かぶが急増きゅうぞうしていた時期じきに5300人にん余あまりが4回かい目めの接種せっしゅを受うけ、その後そのご、感染かんせんが確認かくにんされた人ひとが368人にんだったのに対にたいし、3回かい接種せっしゅした2万まん4000人にん余あまりでは4802人にんが感染かんせんしていたということです。

感染かんせんした人ひとの割合わりあいは3回かい接種せっしゅの人ひとでは19.8％だったのに対にたいし、4回かい目めの接種せっしゅを受うけた人ひとでは6.9％と低ひくくなっていたということです。

（※図ずは数値すうちが高たかいほど効果こうかが高たかいことを示しめす）

また、アメリカのCDC＝疾病しっぺい対策たいさくセンターは7月つき、10の州しゅうを対象たいしょうに「BA.2」などが広ひろがっていた時期じきに、mRNAワクチンの接種せっしゅ回数かいすうごとのワクチンの有効ゆうこう性せいを調しらべた結果けっかを報告ほうこくしました。

それによりますと、50歳さい以上いじょうの人ひとで、入院にゅういんを防ふせぐ効果こうかは3回かい目めの接種せっしゅから120日にち以上いじょうたった人ひとで55％、4回かい目めの接種せっしゅから7日にち以上いじょうたった人ひとで80％だったということです。

CDCは「追加ついか接種せっしゅは適切てきせつな時期じきになったらすぐに受うける必要ひつようがある」としています。

日本にっぽん国内こくないでは、4回かい目めの接種せっしゅを受うけた医療いりょう従事じゅうじ者しゃを対象たいしょうに中和ちゅうわ抗体こうたいの値ねを調しらべたデータを7月つき、東京とうきょう都と医学いがく総合そうごう研究所けんきゅうじょが発表はっぴょうしています。

60代だいと70代だいを対象たいしょうに分析ぶんせきすると、3回かい目めの接種せっしゅから4か月かげつの時点じてんでは中和ちゅうわ抗体こうたいの値ねが「855」だったのが、4回かい目めの接種せっしゅのあと「3942」まで上昇じょうしょうしたということです。

3回かい目めの接種せっしゅのあとも平均へいきん的てきには高たかい水準すいじゅんを維持いじしていますが、ばらつきが大おおきく、4回かい目めの接種せっしゅを受うけることで全員ぜんいんが高たかい水準すいじゅんとなったとしています。

大阪おおさか大学だいがくの宮坂みやさか招しょうへい教授きょうじゅは「東京とうきょう都とのデータを見みると、3回かい目めの接種せっしゅを受うけた多おおくの人ひとは抗体こうたいが高たかい状態じょうたいで、その状態じょうたいが何なんか月かげつも続つづいているが、個人こじん差さも非常ひじょうに大おおきい。どの人どのひとが抗体こうたいが高たかく、どの人どのひとが低ひくいのかは検査けんさをしないと分わからない状態じょうたいだ。また、今いまの『BA.5』は抗体こうたい価かが高たかい人ひとでも感染かんせんする可能かのう性せいはある。抗体こうたい価かが低ひくい人ひとは当然とうぜん感染かんせんのリスクはより高たかい。私わたしは4回かい目めの接種せっしゅをするほうがいいだろうと思おもう」と述のべました。

また、新型しんがたコロナウイルス対策たいさくにあたる政府せいふの分科ぶんか会かいのメンバーで、東邦とうほう大学だいがくの舘田たてだ一博かずひろ教授きょうじゅは「次つぎに流行りゅうこうするのはオミクロン株かぶではない可能かのう性せいもある。大事だいじなのは3回かい目めの接種せっしゅをしていない人ひと、あるいは4回かい目めの接種せっしゅ券けんが届とどいた人ひとは、できるだけ早はやく接種せっしゅすることで、今いまの感染かんせん状況じょうきょうを抑おさえる行動こうどうをとっていく必要ひつようがある」と話はなしています。

今いまのワクチンでも回数かいすうを重かさねることで、重症じゅうしょう化かを防ふせぐ効果こうかはあり、一定いってい程度ていど、感染かんせんを防ふせぐ効果こうかはあると考かんがえられています。